美人像
2話 美人像
「何を言ってるんだあんた。オレのお宝を横取りする気か」
「そんなつもりはない」
「そこの怪物ども狙ってるのか……。それなりのお宝だからだろう」
「違う。それにグールどもには価値などわからない」
「グール……食屍鬼なのかこいつら」
死んでる一匹を足でこついだ。
「まあ、助けてもらったのは、ありがとう。礼は言っとく」
この像のコトはナニも言わない……。多分なんか知ってるのだろうが。
女に礼も言った。とりあえず家に帰った。
村の住人は、だいたい「宝探師」だ、少ないが他の職も居る。ウチの隣がその一軒だ。
遺跡からの帰りに会ったのが隣の住人だ。
「あら、ロラン。また墓荒らしの盗っ人」
「墓なんて行ってない」
「それじゃ廃品回収かしら」
「違う!」
こいつは隣のルルレット・アポ。
相棒アニタの姉だ。歳はオレと同じ。幼なじみというやつだ。
こいつも両親を亡くし妹と二人で住んでる。
「アニタ、あんたマジで盗っ人になる気」
「盗っ人じゃないもん宝探師だもん!」
「お前なぁ妹にまで盗っ人とか言うなよ」
「皆、宝探師なんて言わないわよ」
「おまえの親だって元々は宝探師だろ。踊り子やってるおまえが変だ。アニタの方が普通だ」
「踊り子とか、言わないでよダンサーなんだから」
ルルは、ここから少し離れた町の食堂で踊り子をしている。
店ではショーも見せている。
大道芸を小屋の中でしてるだけだが。それを見ながら食事が出来る店だ。
まあそこそこ繁盛してるので給金も良いらしい。
「アニタもあたしと一緒に働かない」
「アニタ、歌とか、踊り苦手。ソレにパパやママの仕事を継ぐ」
「アニタを見習えルル」
「あんたみたいな生活はゴメンよ。アニタ、帰ろう」
「あ、ロラン。燭台やスプーンは……」
「明日、古道具屋に行こう。綺麗に磨いておけよ、値が上がるぞ」
オレはウチに帰り、見つけた彫像を洗った。コケや泥で、大分汚れてた。
「宝探師」が代々使っている洗剤も使った。
洗剤は、各師によって秘伝だ。
銀のスプーンだってたちまち銀ピカになるものもある。
アニタのトコは元宝探師だから、あるだろう。
像は石ではない。だが、金属やブロンズでもなさそうだ。大きさのわりに軽い。ほぼ実物大と思われる胸像だ。
洗剤が効いてる、顔がキレイになった。
髪は長い。目鼻立ちが良く、コレはかなりの美人像だ。
モデルがいたんだろうか? いたのなら会ってみたい。が、コレが作られたのは数千年前だろうから生きてはいないだろう。
それにしても美人だ。瞳かないのに見つめられているような。なんかポオっとしてきた。
オレはその晩その像を抱いて寝た。
夢を見た。天国にでも行ったのか雲の中にオレは居た。
オレに会いに来たのが、人になった美人像だ。
目には碧い瞳。髪はキラキラと輝く金髪だ。
オレは女神が現れたと思った。その瞬間、彼女の背に大きなな白い翼が。
やはり女神だ!
目の前に来た彼女とキスしようとした瞬間、女神の顔があの白いフードの魔女に。
つづく