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脳筋ネタキャラ女騎士(防御力9999)!  作者: 虎馬チキン


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33/49

33 『氷結紳士』

「改めて、本当に申し訳なかった」

「いやいや、謝らねばならないのは私の方だとも」


 あの後、駆けつけた衛兵に事情聴取され、関係者は全員が兵舎に連れていかれた。

 加害者はあの幼女だが、変態紳士改め、ただの紳士の『バロン』も町中で魔法を使ったってことで、軽い罰金を取られてしまった。

 その原因になった俺は、あの状況じゃ当然の行動だったということでお咎め無しだったので、なんか心苦しい。


 せめて、お詫びにご飯くらいは奢らせてほしい。

 ということで、俺は一緒に兵舎から解放されたバロンに声をかけて、そこらへんの飲食店に入ったというわけだ。

 ちなみに、一応は被害者ってことで気絶したまま兵舎に運ばれた変な男は、俺達の証言によって迷惑行為の加害者となったため、そのまま兵舎に勾留された。


「思い返してみると、確かにあの時の私は殴られても仕方がないほどに冷静さを失っていた。言葉遣いも酷く乱れていたし、常にクールに、エレガントに、エクセレントに、スタイリッシュにあらねばならぬ紳士として実に恥かしいところを見せてしまった」


 あー、うん。

 確かにあれはクールでも、エレガントでも、エクセレントでも、スタイリッシュでもなかったな。

 クソガキィ! とか叫んでたし、幼児わいせつ罪だったし。

 忘れてあげるが世の情けか。


「おまけに女性をステッキで殴りまくるなど、本当に謝罪の言葉もない。できうる限りの償いはしよう。とりあえず、ここの支払いは私に持たせてくれ」


 バロンはそう言って頭を下げる。

 奢るつもりで入った店で、逆に奢られそうになっている件。


「すみませーん。特上海鮮盛り合わせシーフードパスタくださーい」

 

 そして、一瞬でこの店で一番高い料理を注文するミーシャ。

 バロンはそんなミーシャを慈しむような目で見た後、メニューに書かれた値段と財布の中身を確認し始めた。

 足りるか不安になってきたらしい。

 まあ、ただでさえ罰金取られてるもんな。


「いや、私にも落ち度はあったのだから、せめて半分はこちらが支払……」

「よしたまえ。男に花を持たせるのも、良い女性の条件だよ」

「しかし……」

「いいから!!」


 必死であった。

 紳士っぽさなど、欠片も取り繕えていなかった。

 そんな彼のプライドをこれ以上傷つけるわけにもいかず、俺とラウンは顔を見合わせて苦笑するしかない。


「そ、それにしても、あんなに怒るなんて、盗まれたのはよっぽど大切なものだったんですね」


 微妙な感じになった空気を払拭するためか、ラウンがそんな話題を出す。

 バロンは、その話題にピクリと反応し、


「うむ! よく聞いてくれた、少年!」


 突如、彼の雰囲気が変わった。

 さっきまでの必死な様子はどこへやら。

 妙にキザったらしい仕草で、バッと懐から何かを取り出して見せつけてくる。


「へー、珍しいわね。懐中時計?」

「その通りさ、小さなレディ! メサイヤ神聖国の貴族御用達の大商会『アーディスト商会』にて買った一品! これを買うために、随分と努力を重ねたものさ!」


 バロンは実に楽しそうな顔で喋り出した。

 少年のように無邪気な笑顔で、宝物を自慢するように。

 そんなバロンを見て、俺は思った。

 この人、紳士キャラ向いてないんじゃね? と。


「私は元々、大陸南部『紛争地帯』の農村出身でね。国と国が不毛な争いを繰り返し、民は搾取されて餓えるしかない、酷い場所だった」


 遠い目をしてそう語るバロン。

 大陸南部の紛争地帯。

 千年くらい前の先代魔王との戦争によって更地にされ、復興を担当した人達が次々に「この土地は俺のもんだ!」と主張して独立国家を作り上げ、現在でも無数の国々が争い続けているという場所。

 そんなところの出身ということにも驚いたが、それ以上に納得してしまった。

 過酷な環境で育ったから、キレると言葉遣いが荒くなるのかと。


「ある時、私はついに耐えられなくなって故郷を飛び出した。身一つで走って、走って、走って、奇跡的に私は辿り着いたのだよ。大陸南部と中央部の国境。メサイヤ神聖国『サウスロール辺境伯領』にね」

「サウスロール辺境伯領ですか」


 覚えのある場所だったのか、ラウンもまた遠い目になった。


「良いところですよね。昔の仲間達と一緒に見て回ったことがありますけど、多くの人が笑顔でした」

「そう! そうなのだよ! あそこの領主『サウスロール辺境伯』は、まさに傑物だ! 彼の治世は多くの民を幸せにした!」


 バロンはバッと手を広げ、舞台俳優のような芝居がかった仕草で、キラキラと目を輝かせながら話を続けた。

 そのタイミングで特上海鮮盛り合わせシーフードパスタが運ばれてきて、ミーシャは目を輝かせるながら、それに食いついた。

 いいなー。俺も一口欲しいなー。

 とか思ってたら、ミーシャは若干躊躇ってから、フォークとスプーンですく取った分を、あーんの体勢で俺に差し出してくれた。

 ミ、ミーシャ……!

 こんな良い子に育って……!


「かのお方は、私のような身元の知れない子供にも優しかった! 亡命を受け入れ、孤児院に入れてもらえた! 孤児院での暮らしは、故郷の地獄とは比べものにならないほどに幸せだった! だから私は彼に憧れ、彼のようになりたいと思ったのさ!」


 バロンの語りをBGMに、俺は久しぶりの海鮮料理に舌鼓を打つ。

 美味し。

 内なるユリアの服が弾け飛んで「お粗末!」状態になるほど美味し。

 さすが店で一番高い料理。

 母さんのチープな家庭料理パスタとは大違いだ。


 あれはあれで恋しいが、それはともかくとして、これは我慢ならん。俺も頼もう。

 ラウンも物欲しそうな顔してるし、遠慮がちなこいつだけ仲間外れにするのは可哀想だと思って、ラウンの分も頼んだ。

 すまぬ、バロン。


「初めて直接お目にかかれた時、彼が使っていたのがこの時計でね! 憧れの人の真似をしたくて、どうしてもこれが欲しくなった私は、上手くすれば一攫千金を狙える冒険者になったのだよ! そして、Aランクになった頃にようやく買えたんだ!」


 気持ち良く喋ってるところ、ホントにすまぬ。

 もし足りなかったら、ちゃんと払うから安心してくれ。

 その場合、紳士のプライドはズタズタかもしれないが……。


「この時計はまさしく、Sランク冒険者『氷結紳士』バロン・バロメッツの人生に大きな影響を与えたキーアイテムなのだ!

 この時計にあの方の面影を見出して全力で追いかけたからこそ、メサイヤ神聖国お抱えの冒険者にまでなれた今の私がいる!

 それを盗まれてしまったものだから、少々冷静さを失ってしまってね……」

「なるほど。そういう事情であれば致し方ないな」


 英雄と呼ばれるSランク冒険者。

 しかも、世界最大の国であるメサイヤ神聖国のお抱え。

 超がつく大物だ。

 兵舎に連れていかれる前の自己紹介で告げられた時は驚いたなぁ。

 そんな人が幼女の体をまさぐってたとは思わなかった。

 いや、それは盗られた懐中時計を取り戻すためだったんだけど。


「あの少女の事情も聞かせてもらった。ストリートチルドレンの仲間達を養うために金がいる。だから盗みで稼ぐ。手段はともかく、志は立派なものだ」

「……そうだな」


 話が懐中時計から盗人幼女に移った瞬間、「お粗末!」状態だった内なるユリアが服を着直して、バロンの話に集中した。

 脳裏にメモリーとして流れてくるのは、故郷であるリベリオール王国で見た貧民達の姿。

 国の救いがどうしても行き届かない、社会の歪みの中で苦しむ人々の姿。

 おまけに、そんな人達をめんどくさいから、金や労力がもったいないからという理由で救わず、その金で贅沢三昧をする一部の貴族達の姿。

 うへぇ、トラウマメモリーほどじゃないが、飯が不味くなりそうな嫌な記憶だ。


「あの子に関しては、今回の仕事が終わった後、私のツテでどうにかしてみようと思うが…………所詮は片手間に手が届く範囲しか救わない『偽善』だ。辺境伯のようなエレガントなお方にはほど遠い」

「いや、充分に立派だと思う。世の中には、片手間に救える相手すら救わない輩がはびこっているからな」

「ハハッ。そう言ってもらえると助かるね」


 バロンはあまり自分を肯定できてない感じで苦笑したが、俺は本当に立派な人だと思った。

 少なくとも、元の世界の俺は、誰も救わないし救えないタイプの人間だ。

 積極的に誰かを虐げたりはしないが、イジメがあったら自分も巻き込まれないように見てみぬふりするし、目の前で困ってる人がいても、めんどくせぇって思ってスルーする。

 そんな、どこにでもいる冷淡な現代人。

 だから、バロンやユリアのような誰かのために動ける人は、ちょっと眩しく見える。


「そういえば、仕事と言っていたが、バロン殿はどんな用でこの町に来たのだ?」


 飯時にこれ以上重い話をするのもどうかと思って、話題を変えようと試みる。


「もちろん、言えないことは言わなくて構わないが」

「いや、確かに私はメサイヤ神聖国からの依頼を受けてきたが、多少の情報開示くらいは構わないよ。元々、情報収集のために聞き込みをする必要もあったからね」

「なんか面倒そうな事情抱えてそうねぇ」

「責務を負うのは力ある者の宿命さ、小さなレディ。その責務に真摯に取り組むのが紳士たる者の務め。しんしだけにね」

「うわ、寒っ」

「さすがに、その親父ギャグはちょっと……」

「うっ!?」


 ミーシャの白けた目と、ラウンの困ったような目のコンボにやられて、バロンが苦しそうにうめいた。

 ちょいちょい自爆するな、この人。

 個人的には親しみが湧いて好きだが。


「オ、オホン。話を戻そう。君達は『地神教』という存在を知っているかね?」


 バロンは咳払いをして、そんな話を始めた。

 そのタイミングで特上海鮮盛り合わせシーフードパスタがニ人前運ばれてきて、彼は冷や汗を流した。

 すまぬ。

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[一言] 氷結紳士の氷結ってそういうあれ?w
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