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SOLID STATE ANGEL  作者: 熊八
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第67話 灰燼の都市

 敵の前線を無事に突破した俺達フェルモ連隊は、そのまま各機にインストールされている地図をウィンドウに表示し、手近な街道を目指す。

 スピードを維持したまま駆け抜け、街道に出ると、そのまままっすぐにチェルヌィフの都市へと進軍を続けた。

 ここからはスピード勝負だ。敵が態勢を立て直し、こちらの妨害を開始する前に都市を一つ灰燼(かいじん)に帰さなければならない。

 そんなことを考えながら街道を疾走し、しばらくすると、目的地であるチェルヌィフの都市が見えてきた。

「手筈通りに散開! 都市を全周包囲せよ!!」

 連隊長の指示を聞くや否や、そのままスピードを落とさずに部隊が二つに分かれ、それぞれ右回りと左回りで都市を素早く包囲する。

 包囲が完了するとすぐに連隊長から作戦開始の信号弾が上がる。それと同時にフェルモ連隊長が外部スピーカーを最大ボリュームにして叫んだ。

「主砲、副砲、レーザー、とにかく全砲門でぶっ放せ!! あの都市をがれきの山に変えろ! 狙いなんざ適当でいいんだよ! 撃って撃って撃ちまくれぇ!!」

 その声を合図に、全機が全砲門を開く。一門の主砲、二門の副砲、六門のレーザーを全て使用し、形あるものを破壊し続ける。

 通常、主砲には対戦車用の(てっ)甲弾(こうだん)が使われるが、この時のために用意した榴弾(りゅうだん)と呼ばれる砲弾も使用し、広範囲を破壊しながら火災も同時に発生させる。

 全機が全力で撃ちまくり、少しでも形のあるものを全て破壊していく。

 時間的な余裕のなさから、この都市に住んでいた人たちが今どこにいるのかまでは不明だ。

 おそらくはどこかの収容所に移送されて、家畜として扱われているのであろうことまでは分かっている。しかし、どこにその収容所があるかまでは、セシルの頭脳にも情報がなかった。

 そのため、俺は思わずつぶやいていた。

「ここに人がいないことを祈るしかないな……」

 そうすると、いつの間にか近距離レーザー通信をつないでいたセシィが、俺の独り言に返答してくれた。

「いたとしても、だ。軍の上層部の判断に変更はなかっただろうさ。いずれにせよ、ジェフが気に病むことじゃないぜ」

 俺と同じ苦悩を抱えているであろうセシィが、努めてなんでもない風を装い、励ましてくれる。

 そんな姿がとてもいとおしくなり、俺は思わず、戦場のど真ん中であることを忘れ、感謝の意を示していた。

「ありがとう、セシィ。愛しているよ」

 そうすると、セシィは顔を真っ赤にし、あたふたしながら叫んだ。

「なっ……! そ、そ、そういうことは、もっと雰囲気のある場所で言ってくれ!!」

 俺はそれにほほえみを返しながら、仕事を続ける。

 しばらくすると、目に見える範囲の構造物はあらかた破壊できた。それでも気を抜かずにさらに念入りに攻撃を加えていると、フェルモ連隊長からの信号弾が上がる。

 内容は、作戦終了、撤退開始。

 連隊長は同時に、外部スピーカーを使って音声でも指示を伝える。

「作戦終了! 野郎ども、撤退だ! おうちに帰るまでが戦争だ! まだ気を抜くなよ!!」

 こうして俺達は今回の作戦を速やかに完了し、帰還を始めた。

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