表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOLID STATE ANGEL  作者: 熊八
21/74

第21話 中隊長

 戦場の死神討伐に最も功績があったと評価された俺達ダリル大隊は、特別に三日の休暇を与えられ、基地に帰投していた。

 そして、俺は連隊長に呼び出しを受け、連隊長室へと向かっていた。

「ジェフリー・オルグレン小隊長、到着しました」

 俺がドアの前でそう告げると、連隊長の声で応答があった。

「入室を許可する」

「はっ」

 俺は軍人らしい動きで入室し、かかとをそろえて敬礼する。部屋に入ると正面の執務机に連隊長が座っており、その横に置かれた応接セットのソファーの一つにダリル大隊長が座っていた。

 ちなみに、この連隊長の名前はアーロン・ウィルキンソンという。年齢はたしか五十代中盤だったはずだ。

 軍人らしく短めに刈り込んだ髪は真っ白で、そのため実年齢よりは年上に見える。しかし、やや角ばった男らしい顔は整っており、若いころはさぞかしモテたのだろうなと容易に想像できる。いや、今でもロマンスグレーを求める女性にはモテるのだろう。

 しかし、アーロン連隊長は愛妻家として有名で、奥さん一筋だ。幼馴染だった奥さん以外の女性と付き合った経験がないことは、本人にとっては自慢らしく、連隊内では有名な逸話だ。

 その愛妻家の連隊長が、今回の呼び出しの理由について語り始めた。

「ジェフリー小隊長。今回の通称、戦場の死神の撃破において、貴官の功績は極めて大である。よって、貴官をダリル大隊所属の中隊長に任ずる」

「はっ! 拝命いたします!」

 俺は姿勢を正し、その辞令に了承する意思を示す。

 俺のその様子を満足げに眺めていたダリル大隊長が、この人事の裏事情を教えてくれる。

「実はな、ジェフリー小隊長。いや、もう中隊長か。俺はお前の戦いぶりを以前から高く評価していたんだ。なので今回の件がなくても、いずれは中隊長に推薦しようと思っていたんだよ」

 思ってもいなかった高評価に、俺は思わず聞き返していた。

「そうなのでありますか?」

「ああ。仲間が動きやすいようにと、戦場をコントロールしてお膳立てするその戦いぶりは、明らかに指揮官向きだ。それにそう思っていなかったら、いくら緊急事態だったとはいえ、ただの小隊長に中隊の指揮権をポンと与えたりはしないさ」

 そう言って、肩をすくめるダリル大隊長。

「過分な評価に、身が引き締まる思いです」

 そして俺は再び連隊長に向き直り、少し希望を述べてみる。

「アーロン連隊長。少しお願いしたいことがあるのですが、聞いてはいただけないでしょうか?」

「なんだ? 言ってみろ」

「小官の部下にニール・トンプソンというものがいるのですが、彼は仲間のためにと、魔力欠乏症になるのをいとわずに魔法を使ってくれて、今回の作戦のかなめとなる落とし穴を作ってくれました。そんな彼の頑張りにも、何か報いを与えていただきたいのです」

 俺がそう伝えると、連隊長は目線でダリル大隊長にどうなのだと問いかけた。

「ニールはジェフリーとは真逆の戦いぶりで、正直、指揮官には向きません」

 俺はこれではまずいと思い、別の切り口でニールを推薦する。

「では、勲章とか感謝状とか、何か形のあるもので彼の頑張りを評価していただけないでしょうか?」

 俺がそう食い下がると、連隊長は許可を出してくれた。

「よかろう。その方向で検討してみよう。しかし、ダリルの言う通りだな。自分の昇進を喜ぶより先に部下の心配とは、お前は確かに指揮官向きだよ」

 そう言って満足げに頷いた連隊長は、話は終わりだという。

「では、他に何かないか? よろしい。退出を許可する」

「はっ。失礼いたします!」

 俺は軍人らしい動きで(きびす)を返し、部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ