表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOLID STATE ANGEL  作者: 熊八
20/74

第20話 死神殺し

 俺は預けられた中隊で近距離レーザー通信網を構築し、移動しながら作戦の説明を行った。

 やがて作戦予定地に到着した俺は、そこに転がっていたブリキ野郎の剣を一本拾い上げ、地面に深々と突き刺した。

「ニール。あれが目印だ。手筈通りに頼む。……スマンな。無茶をさせることになってしまって」

「お前が何を気にする必要がある? これはエリートである俺にしかできないことだ。それにあれを止めなければ、戦友達が次々にやられてしまうからな」

 本当にニールはイイヤツだ。下準備として魔法を使ってもらうのだが、範囲が広すぎてほぼ間違いなく魔力欠乏症で気絶してしまうはずだ。

 それなのに、嫌な顔一つせずに多脚戦車を降りて作業を開始してくれた。

「ウォルター。ニールのそばにいてやってくれ。地面に倒れこむ前に支えてやってほしい。そして、そのまま後方へ送り届けてくれ」

「ああ。任せてくれ」

 やがて準備を完了したニールが崩れ落ち、それをウォルターがそっと支える。

 魔力欠乏症による気絶は、場合によってはそのまま命を落とすこともあり得るぐらい危険なものだ。

 そんな無茶を大切な仲間にさせざるを得ないことに忸怩(じくじ)たる思いがあるが、今はそんなことを言っている場合ではない。

 死力を尽くしてくれたニールの思いにこたえるためにも、俺は預けられた中隊の配置を完了し、信号弾が上がるのを待つ。ちなみに、俺の小隊は予備兵力として、少し後ろに配置している。

 しばらくするとニールを送り届けてくれたウォルターも帰還し、配置についてくれる。

「ニールだが、命に別状はないってよ」

 その報告にほっと胸をなでおろしていたとき、ヒゲの大隊長からの数発の信号弾が上がった。

 内容は、ジェフリー小隊、報告せよ。

 俺は操縦席のボタンを操作し、機体後部の射出口からこちらも信号弾を上げる。

 内容は、ジェフリー小隊、準備完了。

 それからしばらくすると、後方の前線司令部あたりから信号弾が上がる。

 内容は、作戦開始。

 それとともに、友軍からの一斉砲撃が開始された。フレンドリーファイアもいとわない苛烈な砲撃だが、それでも素早い戦場の死神には当たらない。

 しかし、これでいい。これを当てる必要はない。

 やがて砲撃によって回避先を誘導された戦場の死神が、ニールの作成した渾身の罠へと足を踏み入れる。

 その瞬間、足をとられて斜めに沈み込みながらもがきだす戦場の死神。

 そう。ニールが作った罠は、まず水魔法と土魔法の複合魔法で泥沼を作り、その上に薄く土魔法でふたをして偽装した、一種の落とし穴だ。

 俺は待機していた中隊に、素早く指示を出す。

「今だ! 一斉砲撃開始!!」

 一個中隊、計十二機が落とし穴の周りにあらかじめ半包囲するように陣取っており、その集中砲火が連続して戦場の死神へと殺到する。

 しばらく念入りに砲撃を加え続けると、やがて死神の操縦席が爆発し、炎上を始める。

「戦場の死神をしとめたぞ!!」

 この場にいるすべての仲間に聞こえるように、俺は多脚戦車の外部スピーカーを使い、大音量で報告する。

「「「おおおおおおおおおお!!」」」

 その直後、仲間達からの勝鬨(かちどき)が上がる。

 そしてこれが、戦友達から死神殺しと俺が呼ばれるようになった出来事の瞬間となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ