また彼とめぐり合ったなら
【お題】赤帽子・待ち合わせ・実りの秋
お題を出していただき、物語をつくりました。
また実りの秋になったら、待ち合わせて、ここで会いましょう。
その赤帽子かぶってきてくださいね。
そう言って私たちは別れた。
あれからどれくらいの日々がたったのだろう。いくら待っても実りの秋は訪れない。不作の秋ばかりだった。
今年こそ。今年こそ。
そう思って心は焦るばかりだけど、実りの秋は来てはくれない。
彼は今、何をしているのだろう。どの空の下どこでどんな人と、どんな生活を送っているのだろう。
・・・私の事まだ覚えててくれてるだろうか。
私の心も揺れる瞬間がある。素敵な出会いがあった。彼らはとても優しくて、楽しくて。
私は彼らと笑いあう。その瞬間、赤帽子の彼のことを忘れていることに、後で気づき後悔を感じる。罪悪感を感じる。
でも、
きっと赤帽子の彼だって、私の事なんか忘れて楽しく暮らしてるんじゃないか?
だからおあいこだ。実りの秋なんて、もう来なくていい。
そう考えようとするけれど、やっぱりダメ。彼のことを忘れられなかった。
早く実りの秋がくればいい。その時がきたら、いったい何を言おう。何をしよう。
そもそも私たちは出会ってから、何をしていたのだっけ。何が楽しかったのだっけ。
私はそれが思い出せない。
それだけの年月がたってしまっていたのだろうか。でも本当に年月が私の記憶を奪っていったのかな? 赤帽子の彼なんて本当にいたのかな?
それが知りたい。
ああ。早く実りの秋、やってきて。
私の中から彼が完全に消えてしまう前に。
・・・ある日、私はふと気づく。実りの秋がきていることに。
急いで行こう。あの場所へ。
あれ? どこへ? どこだった? 思い出せない。
駆け回る。早く、早くしないと。実りの秋が終わってしまう。その前にあの場所へ。あの人の元へ。
・・・ダメだ。思い出せない。そしてもう足が動かない。私は倒れ込んだ。
「大丈夫ですか?」
声がかかる。顔をあげる。彼がそこにいた。全てが思い出される。
「ええ、大丈夫。お久しぶりですね」
「はい。でも・・・あれからそんなに時間がたっていない気もするのです」
私もそんな気がしていた。
「実はね。僕はずるいのです。あの日から、ずっとここで待ち続けていたのです。だからでしょうか、あなたを1日も忘れることはありませんでした」
「ごめんなさい。告白します。私はあなたのことを忘れる事がありました。それどころか、あなたが本当にいたのかどうかもわからなくなる事がありました」
「そうか! だから僕は僕が何者かわからなくなることがあったのか」
なるほど。私たちは二人で一つのものなのだろう。お互いが、お互いを思いあわなければ、相手が消えてしまう。そんな在り方。
「これからはずっと一緒にいましょう」
それは、実りの秋の2度目の約束。
※物語と関係ありませんが、ペンネームを変えようと考えています。鳥公方で覚えてくださった方にはご迷惑をおかけします。