プロローグ
むかしむかし、『緋色』がおりました。『緋色』は忌み嫌われていました。
しかしそんな『緋色』に手を差しのべた存在がいました。
だいじょうぶ。一人じゃない。そばにいるから。
『緋色』は独りぼっちではなくなりました。『翠色』がいてくれたから。
しかしある日からまた、独りぼっちになりました。
『翠色』は人々から忌み嫌われるようになりました。
****
「このいろはとてもきれい」
あどけない顔をした少女は翠色をした一つの宝石を見ながら言う。
「せんせいもそうおもう?」
せんせい、と呼ばれた相手は少し悩む素振りをみせた。
「そうだなぁ。嫌、ではないかな」
「こんなきれいないろ、いやっていう人がいるの?」
不思議そうな顔をする少女をクスッと微笑んでせんせいは頭を撫でた。
「そうだよ。この色は…この色は嫌われているんだ。だから他の人の前では綺麗なんて言っちゃいけないよ。」
「ほかってせんせい以外の人?」
「そう。もっと広いところにいって、僕以外の人と会うんだ。そういう時に、ね。君は見聞を広めるといいよ。かしこい子だから」
少女はコテン、と首を傾げる。
「あははっ。そうかそうだね。まだわからないだろう、けどいつかわかるよ」