3話:人はそれを脅迫という
「……は?」
一瞬思考がフリーズする。
だって仕方がないじゃん。期間限定で付き合ってくれませんかって。
そもそも姫宮が俺にそう言うなんて思いもしなかった。
ましてや学校一の美少女ときた。
これこそイタズラの類ではないのかと邪推してしまうくらいには。
だから聞いてみた。
「友達に言われたのか?」
「……はい? なんのことですか?」
理解が出来ない。そういった反応を示す姫宮に、これはイタズラなどではないとわかった。
「いや、すまん。俺は姫宮と接点が全くもって無い。そう思ってな」
「そうですか」
「そもそもだ。どうして俺だ? それに『期間限定』ってどう言う意味だ?」
透き通る綺麗な瞳と俺の目が合う。目が合った瞬間、俺は姫宮の瞳に吸い込まれそうなくらい、綺麗と素直に思った。
容姿端麗でスタイル抜群の彼女が、どういった意味でその言葉を口にしたのか。
その質問に答えるために、彼女の、姫宮の桜色でプリッとした小さな唇が動いた。
「先輩を選んだ理由は親しい友人が少ないからです」
「うぐっ!」
思っていたよりストレートな言葉が、俺の胸へと突き刺さった音が聞こえた。
「し、親しい人くらいは ……いる」
姫宮のジト目が突き刺さる。
「……続けて」
「はい」
心にダメージを追いながらも、重要な『期間限定』の意味という理由を聞くことに。
「期間限定というのは、これから先輩が高校を卒業するまでの間、私と付き合っていただきます」
「……それくらいは理解できる。聞きたいのはそうじゃない。なぜ期間限定なのか、だ」
「簡単ですよ。告白なんてもう聞きたくないからに決まってます。それに外見ばかりで内面を見ようとはしてこない。そんな連中です」
「………………」
姫宮の言葉に俺はなにも言えなかった。
「それでどうですか? 私と付き合ってくれませんか?」
付き合うか付き合わないかと言われれば、全力でお断りしたい。
「拒否権はありませんよ?」
「……え? なんでだよ。どうみても巻き込まれるのは俺だろう!?︎」
「だってこれが先輩にとっての最善策ですからです」
「……どういう意味だ?」
何が俺の最善策だ。今の暮らしに俺は満足しているし、友人関係を除けば充実しているのだ。
姫宮が笑みを浮かべた。笑顔を見せない姫宮が俺へと笑みを浮かべているのを見て、俺は嫌な予感がする。
本当だったら見惚れていただろう。
「断ったら、私が先輩に告白して振られたということを学校中にバラしますから。それに私が先輩に夢中でぞっこんだとも。他の男子には興味がないともね」
――人はそれを脅迫というのである。
次の更新は夕方か夜7時頃を予定しています。
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