13話:おばあちゃんの味
――お昼。
何故か今日のクラスは平穏であった。
恐らくだが、雪葉が言った一言が原因だろうと予想した。
桃花はいつも通りであったが。
「お待たせ」
「……遅い。何分待たせたと思ってるのですか?」
「2分くらい?」
「2分15秒です!」
「……15秒くらい誤差だろ?」
「だとしても、2分も遅れたんです。何か言うことはありませんか?」
雪葉さんは謝罪を要求しているようだ。
まあ遅れたのも事実だ。ここは素直に謝るとしよう。
「すまん。俺が悪かった。気を付けるよ」
「……許します」
どうやらお許しを頂けたようだ。
「ではお昼にしましょうか」
「だな」
「では宗助にはこれを」
籠に入っている雑草の山。
そして一瞬の静寂。
「……冗談だよね?」
「……冗談よ」
その間は何なのだと言いたいが、それを言っては本当に俺の昼食が雑草になりかねないので、何も言わないでおく。
「こちらです」
「そう言って広げられる弁当」
「お、おぉ……」
思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
「どうしたのですか?」
「いや、その、昨日よりも気合が入ってないか?」
おかずには唐揚げや定番の卵焼き、タコさんウィンナーまで。
「唐揚げは昨日の夕飯の残り。もしかして期待していたのですか?」
していないとは言えなかった。だって本当に期待していたのだから。
「本当は期待していた。俺の為に頑張って料理して作ってくれるのではと」
「……え?」
何言ってるのコイツ? 的な目をして俺を見る雪葉。
やべぇ……調子に乗った。
「すみません調子に乗りました」
即答で頭を下げる俺。
「まあそれはいいですけど、残念でしたね?」
「残念なものか」
「はい?」
「手作りだろ?」
「それはそうですけど」
「なら期待している」
「……ではどうぞ」
そう言って唐揚げを箸で掴み俺に食べさせようと口まで運ぼうとする雪葉。
「じ、自分で食えるから」
「……私ではダメ、ですか……?」
上目遣いは反則だろ!?
可愛いだけに、俺の心へと深々と突き刺さる。
「ダメ、じゃないです……」
「ではどうぞ。はい、あ~ん」
「あ~んっ」
唐揚げをパクリ。
こ、これは……
「う、美味いぞ……! 冷えているのにこの美味しさ。出来立てならなおのこと美味いはずだ。正直言って店が開けるレベルだろう」
「そ、そう。その、喜んでもらえて良かったわ」
俺のレビューに、雪葉は少し恥ずかしそうにそう言った。
「ああ。今度は是非出来立てを食べてみたい」
「……機会があれば作りに行きますよ」
「ほ、本当か!?」
「そ、そんなにですか?」
「ああ。これは俺が食べた唐揚げ史の中で1位2位を争うレベルだ」
「因みに1位は?」
「勿論母さんだ」
「あ、うん。そうですよね」
そりゃあそうだ、と言わんばかりの表情をする雪葉。
それから卵焼き、ウィンナーと食べていく。
お惣菜も味付けが完璧だ。
そう。これはまるで――
「おばあちゃんの味だ」
「誰がおばあちゃんよ!」
雪葉から初めてのツッコミを頂くのであった。
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