10話:許された?
昼食を食べ終えて少し。俺は思ったことがあり雪葉に尋ねた。
「なあ雪葉」
「なんですか?」
「朝のあのメッセージの事だが」
そう。あの『宗助、大好きだよ』の事である。
思い出したのか、雪葉は「あ~、アレですか」と言ってから口を開いた。
「友達が「好きなら送れるでしょ~?」とか言ってきましてね」
「そうか。こっちはそれをクラスのやつらに見られて死ぬかと思ったんだぞ?」
「それはドンマイですね。さて、そろそろお昼休みも終わりますから戻りますね。また」
「っておい……」
去って行く雪葉。
俺はただ一人、ベンチに座りながら雪葉の背を見つめるのであった。
それから教室に戻った俺へと、お昼休みの時間がもう少ないというのに桃花が近づいてきた。
そしてそのまま俺が座る席まで来ると、ドンッと勢いよくテーブルを叩いた。
「な、何でございましょうか? 桃花さん?」
「……本当に姫宮さんとは付き合っているの?」
その言葉はこの場の誰もが確かめたい言葉のようだ。
クラスメイトの視線が俺へと突き刺さる。
嘘を言っても仕方がない。
「ああ、その通りだ。本当に付き合っている」
「いつから?」
「つい先日だ。正しくは昨日の夕方からだ」
俺は桃花の質問へと答えていく。
「朝一緒に登校していたことに付いては?」
恐らく誰かから聞いたのだろう。
てか噂になっているのだから耳に入って当然か。
「昨日の夜にどこに住んでいるか答えたら、朝家に来たからそのまま登校しただけだ」
桃花は確かめるように俺の目を見つめる。
「じゃあ最後の質問」
「ああ」
「そ、その、もう……たの?」
言葉が良く聞き取れず、俺は聞き返した。
「え? 何て言った?」
「だから、き、キスはもう、したのかってことよ!」
顔を真っ赤にしながらそう尋ねてくる桃花。
気が付けば教室は、シーンと静まり返っていた。
誰もが気になっているようだ。
だがこれだけは言わせてもらいたい。
付き合った翌日にキスをしてくる人はいるのだろうか、と。
もしキスをしたのなら、それは相当にその人の事が好きな人に決まっているからだ。
そもそも俺と雪葉の関係は、雪葉がこれ以上面倒臭い告白を回避するためのものであって、本気なわけがない。
だからこれからもその先も、キスをするといった事が無いわけである。
「あるわけがないだろ。そもそも付き合ったのはつい昨日の事だぞ」
「そ、そうよね。あるわけないわよね。ならいいわ」
はぁ~、と安堵する桃花。
何がいいのだろうか?
それと俺は何に許されたのだろうか?
そして聞こえてくる安堵の息の数々。
こうして午後のチャイムが鳴り響くのであった。
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