大魔神、フェリーニ、永井豪:「大魔神逆襲」1966年 森一生 監督
シネマヴェーラ 「大魔神逆襲」1966年 森一生 監督。
大映の「大魔神」シリーズ三作目にして最終作。恥ずかしながら、むかしTV放映で断片的に他のシリーズ作品を観た記憶はあるが、映画館で通しでまともに観たのは今回が初めてだった。
途中までかなりゆるい展開で、いかにも子供向けの時代劇という感じなのだが、大魔神が出現してからの演出がすごい。
かなり凝った特撮を行っているようで、演出も自然で巨大である感じがうまく出ている。おおもとは「ゴジラ」のフォロワーとして企画されていたのだろうか。
大魔神は「ゴジラ」その他の怪獣と同じように、台風や大雪・洪水・噴火など自然災害になぞらえた存在として描かれている。大魔神による破壊の描写は戦争のイメージにもかさなるのだろう。音楽も伊福部昭である。
特撮はフェリーニの「アントニオ博士の誘惑」(’62)に登場する巨女を思い出させる。どちらも巧みなカメラワークで巨大さを自然にみせている。あの巨女が甲冑を着てパワーアップしてゴジラのごとく建築物を破壊してゆくと「こうなる」だろう。
それにしても後年のいろんな作品に影響を与えているようだ。とくに永井豪「バイオレンスジャック」(’73〜90)を強烈に想起させる。大魔神と同じ「荒ぶる神」であるジャック、その分身として黄金に輝く鷹が現れるのだが、その理由が本作を観たら腑に落ちる。少年たちの受難や、奴隷労働などのモチーフも共通している。
そうすると、甲冑を着た巨人の姿は、ひょっとしたら「マジンガーZ」(’72〜)の巨大ロボットイメージの元型なのかもしれない。とすると、大魔神は巨大ロボットもののルーツの一つということになる。このあたりは既に指摘がありそうだが、どうだろう。大魔神の大きさは約5メートルとのことで、意外なことにマジンガーZやイェーガー(「パシフィック・リム」)よりもかなり小さい。レイバー(「機動警察パトレイバー」)よりはやや大きいだろう。
その他、悪役が地下道から逃げて外に出てきたら、そこに逃げてきた筈の大魔神が立ってるというシーンは、TVアニメタイムボカンシリーズ「ヤットデタマン」でさんざんパロディ化されている。
2017/09/09