タコさん、降臨
祭壇には無数の死体。
地面は血の魔法陣を縦横無尽に書き付けられ、
無数の狂信者は呪文を叫び、少女の首を切り裂いて彼らが神に捧げようとした。
が。
幼子に触れるよりも速く、狂信者を何かが貫いた。
それは、金属光沢を放つ、機械にも似た触手。
「……はひ、?なぜ、なぜあなた様に仕えてきた我らを裏切るのですか!我らが神よ!」
祭壇が砕け、地の底から、無数の触手が放たれた。
狂信者の頭を。腹を。心臓を。ありとあらゆる部位を貫かれ、そこに残るは事切れた、ミンチのような死体だけだった。
数秒後、生きていたのは少女だけだった。
辺り一面の人間のミンチに、思わず嘔吐し、生き残ったことに安堵し、涙が止まらなかった。
ただ、先程現れた触手は未だに戻らず、
少女の耳にはズルリ、ビチャリ、と何か這い出る音が聞こえ、あわてて逃げようと、したときだった。
『あー、あー、ただいまマイクのテスト中』
少女の頭に、気の抜けた声が響く。
『あー、あの、聞こえてますかー?』
『元気かネ?元気じゃないノ?』
『どうも目の前の触手でス』
困惑しているかのように触手は体を伸び縮みさせてまごまご。
『あ、ユー、もしかしてミーが怖い?』
『だよネー、ミンチのなかに触手はないよネー』
『ミーだってこうなるなんて知らなかったのヨー』
弁明するかのようにペコペコ触手を振り回してる。
『ミーはタコさんよ、ちょっぴり変わったタコさん。』
『どこぞのいあいあふぁっきんみたいなものヨー』
『ミーは大きいだけのタコゆえ気にせんでぇのー』
少女がすでに気絶していたことなぞ、知らなかったタコさんでした。
『メタルタコさんは流行りじゃなかったのか…』
そんなもの永久に流行りません。
これは少女とタコ?の物語。
ミンチと悲鳴とときどきほんわか。
いあいあ、たこ!
いあいあ たこ!
彼女らの行く先にトラブルあれ!
「トラブルは嫌です…。」
そんな少女の声を無視してタコさんたくさん止まりません。