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『禁忌』の影

 

 メーカの街、領主ファイニールの城の一室に『龍殺し』の主要メンバーが集められていた。

 団長の爺さんに、金髪美少女のエルゼ、フルプレートメイルの男に、奇妙な仮面をつけた全身黒ローブの男。(アレクシスは未だに心の傷が癒えていません。)


 ヒョロヒョロの悪人面の男、ファイニールは、全員揃ったかと確認すると、口を開いた。


「お前たちももう知っているとは思うが、ガイルがやられた。で、そのやった相手について話しておきたいことがある」


 やった相手の話とは予想していなかった爺さんが訝しげに尋ねる。


「やった相手とは、それは『禁忌』の連中ではないのですかじゃ?」


「その可能性も勿論ある。だが、色々とおかしな点があるのだ」

 

「おかしな点ですと? それは一体……?」


「お前らへの依頼の一つ目は、ガイルを倒して例の物を先に回収しろということだった。俺は、たとえ『龍殺し』ほどの実力者でも、ガイルとは激戦になると踏んでいた。街に被害が出るのも覚悟していたのだ。

 なのに、蓋を開けてみたら、これだ。

 被害も何もなしに、いつの間にかあのガイルがいなくなっていた。ガイルが簡単に街から出ていくはずがない」


「『禁忌』の連中の戦力は、我々と大差がそれほどないはず。

 確かに『禁忌』がガイルを倒したのならば、被害が出るはずじゃ。

 つまり、圧倒的な力を持つ第三勢力が出現した可能性があるということですかじゃ?」


 ハァイニールは一旦溜めてから答えた。


「ああ、そういうことだ。

 そして、それはそこまで飛躍した論理でもない。

 実は、お前らもこの街の誰もまだ知らないだろうが、ほんの少し前、隣町で管轄のエルニーニョが何者かに殺された。恐らく一方的にな」


「それは、事実ですかじゃ? 領主にして稀代の魔法使いのあのエルニーニョ=マークスが一方的に?」


「ああ、俺も見に行ったが、ひどい有様だった。

 街が破壊されたりしていなかったから、恐らくエルニーニョは抵抗できなかったのだろうな。エルニーニョは、頭をぶっ潰されて殺されていた」


「それをやった方がここに来て、ガイルをやったということですね」

「なるほどな、相当ヤバい奴だなそりゃ。何をしようとしてるのかわかったもんじゃねえ」


 エルゼもフルプレートメイルの男も納得して頷く。


「でだ。そいつを警戒することと、そして見つけたら報告しろ。

 捕まえたりできるとは思えんが。

 街の人の情報では、その者は恐らく、見た目普通の魔法使い見習いで妖精と犬を一匹ずつ連れていたらしい。街にも張り紙を出す予定だ」


「妖精と犬を連れているって、かなり特徴的ですね……」


 と、エルゼ。

 それにファイニールが真剣に答えた。


「その特徴的な感じも吹き飛ばすくらい、魔法使い見習い本人が、地味らしい。いかにも雑魚って感じらしい」


「それって、普通に失礼じゃないですか」


 深刻な雰囲気から、室内が一気に笑いに包まれる。

 今は緩んでもいい時だ。

 しばらく笑いで満たされた後、行動方針が固まる。


「では、その妖精と犬を連れた男を見つけたら報告しろ。まあ、今の所はついでだがな。

 それで、主の目的は、『禁忌』の連中をとっ捕まえることだ。奴らは恐らくガイルの持っていた例の物を手に入れたが、またここを離れる気がないらしい。

 今がチャンスだ」


 * * * * * * * * * *




「で、幽霊爺さん、お前らは何を研究してるんだ?」


「幽霊おじいさんと呼ぶのをやめんか!」


「じゃあなんて呼べばいいんだ?」


「普通に爺さんでいいわい!」


 結局、俺はこの怪しい魔術師団に少しばかり協力することになった。

 面倒だが、まあどうせ金に困ってないから魔獣狩りに行く必要もないし、どうせ暇だから良しとしよう。


「わしらは、不死になる方法を研究しておるのじゃ。

 国王からの命令でな。ふふふ、いかにも怪しい研究じゃろう」


 俺はそれをまたもスルー。案内された魔法使い見習いが沢山いる室内を見渡した。

 やはり、辛気臭い奴らが多い。


「いつからこの研究をしてるんだ、爺さん?」


「わし自体はかなり昔からじゃよ。わし自身が自ら実験台となって様々な研究をして来た。あまりうまくいかなくてのお、数年前、高性能魔力測定器を国王様から授かり、若き才能を求めてこの街にやって来たのじゃ」


「なるほど。で、こんなに魔法使い見習いを沢山集めたってわけか。

 でも、俺はよくこんなことを言われるぞ。魔法使い見習いは、無職のくせしてそれを誤魔化してるやつばっかりだってな。つまり、魔法が一般人とあまり変わらんレベルでしか使えないやつばっかだってな」


 これは、事実だ。確かガイルもそんなようなことを言っていたような気がする。


「まあ、確かに一般的に言ってそうじゃ。じゃが、この街は特別だと聞いてな。そして、実際にここに来てみれば、優秀な魔法使い見習いが本当に多かったのじゃ」

 

 その後も一通り話を聞いた。

 また、ガイルの話がでてきた。

 爺さんは数年前、ここに来たはいいがその時にはこの街はガイルによって支配されていた。

 とても歯向かえないと悟った爺さんは、元からいた優秀な魔法使い見習いと細々と研究を続けたそうだ。


 時に、うっかりこの街に入ってしまってガイルの支配下となり、行き場のなかったものを吸収したりして、どんどん大きな魔術師団になったらしい。

 そして、ガイルがいなくなったということで、本格的に研究できる、という喜ばしい状況だという。


「帰ってきました!! 貴方の弟子にしてください!!」


 と、突然大声。

 見れば、モブ見習い魔法使いが汗だくになって立っていた。


「こいつは、ダリュースじゃ。ちょっと調子にのるアホなところがあるがいい奴じゃし、魔法使い見習いとして優秀じゃ。いずれはきっといい魔法使いになる」


 爺さんがモブの説明をした。ダリュースというらしい。

 しかし、本当に街の周り20周走ってきたようだ。

 人間にとっては相当辛いはずなのだが……。

 恐らく無鉄砲でアホなところがあるのだろう。


「まあ、考えておいてやるよ、ダリュース」


「師匠!!」


「まだ、師匠じゃねえ!」


 ダリュースは、名前を呼ばれて大感激しているようだった。

 第一印象ほど悪いやつではなさそうだ。


 だが、そんなダリュースを見ながらふと思う。

 ダリュースや爺さんや他数人とそれ以外の大勢との間にかなりの温度差がある気がした。


 最初に感じた辛気臭いというイメージは、この魔術師団のその他大勢の奴らの雰囲気。

 お前ら生きてんのか? と尋ねたくなるほどだ。


「ベリィ、何か嫌な雰囲気がありますね」


(僕もそう思うワン! 何かありそうな気がするワン!)


「やっぱり、そうだよな」


 満場一致で、この魔術師団が怪しいという結論に至る。

 どうしてこんな風なのか、これから研究を手伝ったら嫌でも分かるだろうな。




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