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魔力測定勝負!

 

 虹色に自然発光する魔石、改め魔力測定器を掌に乗せながら、幽霊おじいさんが説明を始めた。


「さっきも言ったが、この装置は最高級じゃ。何せ国王から直々に頂いたものじゃからな。

 測定の仕方は、まずこの石を掌の上に乗せ、そして出来る限り強い圧力を魔力によって与えるのじゃ。

 そうすれば、後は石が勝手に測定してくれる。

 優れものじゃろう!」


 とても嬉しそうだ。

 大事なものなのだろう。

 俺は一応危惧していることを聞いた。


「加えた圧力が強すぎたりしたら、この装置は壊れたりはしねえのか? もし壊しちまったら笑えないだろ」


「ハハハッ! 面白いことを聞くのう、貴様は。

 しかしそれは無駄な心配じゃぞ。これは、割れたりせぬようダイヤモンドの数十倍の硬度を持っておるのじゃ。これまでも様々な魔法使いの測定に使われてきたが誰も壊したことはないそうじゃ」


 幽霊おじいさんがそう説明してくれた。

 でもそれは人間の尺度だから、安心してばかりもいられない。

(ベリアル様、手加減するワン! 壊してしまったら、注目されて面倒臭くなるかもしれないワン!)

(ああ、分かってるぜシュヴァ。俺もそこまでガキじゃない)

 俺がシュヴァと念話していると。


 周りにいた魔法使い見習いたちが、俺を見て嘲け笑った。


「そんな心配よりも、恥ずかしい数値が出ないか心配した方がいいと思うぜ」


 そのうちの一人が挑発紛いなことを言ってくる。


 ムカっ! ピキッ!

 ちょっとイラついた。

 勢いに任せて、そいつに暴言を吐く。


「うるせえよ、どこにでもいそうなモブ魔法使い見習いが。お前みたいのは、黙ってモブやってろ」


「ああ? 一番モブみたいな見た目のてめえが何言ってるんだ? 今すぐ自分の姿を鏡で見てきた方がいいぜっ」


 周りもその言葉に賛同して笑った。

 俺って、そんなにモブみたいな顔か?

 俺は、自分を省みる。


 俺は大悪魔ベリアル様だ。

 モブみたいなはずが……。

 いや、そう、だった、今の俺は雑魚そうなモブ野郎みたいな見た目なんだった。

 もはやリーベを睨む気にもなれない……。


 避けがたい事実に俺はこうべを垂れた。

 それを見て、モブ魔法使い見習いが笑った。


「自分の見た目を思い出して、勝手に凹んだか!!

 ふざけた野郎だ。

 てか、爺さん、なんでこんな奴に魔力測定させるんだ? うちにはこんな奴いらないだろ」


 幽霊おじいさんが、顎に手を当てながら答える。


「わしは、なぜか分からんが、この男に可能性を感じるのじゃ。この男はわしらの研究に大いに貢献してくれるじゃろうとそんな気がするのじゃよ」


「爺さん、それは確かか? こんな見るからに雑魚そうな奴に可能性を感じたって?

 俺は認めたくねえな、こんな奴」


 モブ魔法使い見習いは不機嫌そうにそう言うと、俺に指を突き立てて続けた。


「おいお前よく聞け、魔力測定値で俺の5分の1に満たなかったら、この魔術師団には入らせねえからな。

 爺さん、それでいいよな?」


「まあ、それくらいならばよかろう」


 モブ魔法使い見習いと幽霊爺さんが勝手に話を進めるから、言ってやった。


「おい、勝手に話を進めんな! 俺は、あんたらみたいな辛気臭い奴らと研究だろうが、何だろうがする気はねえよっ!」


 すると、モブ魔法使い見習いが、俺が大っ嫌いなあの顔を向けてきた。


「へえ、急に怖気付いちゃったのかな? まあ、態度でけえ割に、しょぼいってことバレたら恥ずかしいもんなっ!」


 モブ魔法使い見習いに同調して周りにいるモブも笑う。


 ムカっ! ピキッ!


 さすがに本格的に腹が立ってきた。


「分かった。魔力測定勝負しようじゃねえか」


「お、急に威勢が良くなったな。

 後で悲しくなるだけだけどな、ドンマイ」


 モブ魔法使い見習いは、澄ました顔だ。

 勝てるとか思い込んでいるのだろう。


「お前がさきに雑魚い結果出して、盛り下がるのも残念だし、俺が先に測定してやるよ」


 モブ魔法使い見習いはそう言うと、幽霊爺さんから虹色に光る石、魔力測定器を受け取って掌に乗せる。


 そして、魔力によって最大限の圧力を加える。

 どうやら瞬間的虹色に強い圧力を加える必要があるみたいだ。


 石の表面に正五角形の紋章が浮かび上がる。

 そして、その頂点と中心に0という数値が浮かび上がった。

 その後すぐに測定し始めて、数字がピピピピ言いながら上昇していく。


 ピピピピピピ、ピッ!



「総合点550だ」


 おおーっ!

 周りの魔法使い見習いたちが歓声を上げる。

 恐らくこいつらの中ではすごい数値なんだろうな。


「さすがダリュースだな」

「これって、総合点勝負だよな? それなら110点取れるかどうかってことか」

「あの感じじゃ厳しいだろうな。 顔真っ青だし」


 は? 110点? 馬鹿じゃねえのかこいつらは。

 は? 顔真っ青? どこ見て言ってんだ?


 俺は怒りつつ、石をモブ魔法使い見習いから受け取る。


「頑張ってくださいベリィ!」


「ああ、もちろんだぜ」


 俺はリーベの応援にこたえる。

 よし、やってやるか。


(ダメだワン! 面倒ごとになるワン!)


(シュヴァ。男には引けねえときが、あるんだよ。

 今がその時だ、止めてくれるな)


 シュヴァの念話にそう答えて、後はこちらから遮断した。もうあちらからは念話してこれない。


「精々頑張れよ。まあ、110点はさすがに厳しいと思うけどな」


 目の前に立つモブ魔法使い見習いが、余裕の笑みを浮かび上がらせながら言った。

 周りの奴らも笑う準備をしているようだ。

 けっ! どうなっても知らねえぞ!


 俺は一息深呼吸すると。


 普段、体の中にしまってある魔力を放出。

 漆黒の魔力が体の周りを蠢き始める。


「なんて量の魔力じゃ」

「どうせ見せかけだ!」

「そうだ、あんな雑魚そうなんだから!」


 周りが少し騒がしいが気にしない。

 今は、一点に膨大な圧力をかけるのみ。


 瞬間的に膨大な魔力によって石に圧力をかけていく。

 石に五角形の紋章が浮かび上がる。

 そして、数字がまず0を示して……。


 ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピッ!


 数字はありえないくらいのスピードで上昇していく。


「おい、こりゃあ一体どういうことだ? 故障か?」

「素晴らしいぞっ!わしの見込み通りじゃっ!」


 モブと幽霊が驚きながら会話しているが、そんなことはどうでもいい。

 数字は、未だ物凄いスピードで上昇していく。

 それはとどまることを知らず、大きくなるにつれどんどん増え幅が大きくなっていく。

 周囲の空気の流れが変わり、圧力のかかっている点に吹き込み始めたと思われた時だった。


 ある一定の値に達して数値が止まり……。


 虹色に光る石が、盛大な音を立てて砕けた。


 あ! やっちまった。


「えええーー!?」

「は?」

「嘘だろ!?」

「嘘じゃろ」


 俺はすぐに圧力をかけるのをやめ、周囲を見回す。


 見守っていた魔法使い見習いは、皆腰を抜かしていた。

 そして相当、間抜けな面になっている。

 笑えるぜっ!


 モブ魔法使い見習いはどこだ?

 今から散々馬鹿にしてやる。奴の泣き顔が楽しみだ。


 と、モブ魔法使い見習いが、腰を抜かしながらもこちらにやってきた。

 なぜか腰が低い。さっきと態度が違うような。


「先ほどは申し訳ございませんでした、偉大なるお方。是非、私を貴方の弟子にしてください!」


 すごい手のひらクルーだ!

 これは、中々面白い。

 今なら何でも命令を聞きそうだ。


「本当にダメな奴だお前はっ! 今から街の周りを20週全力で走ってこい!話はそれからだっ!」


 さっきだったら、何か言い返してきただろうが、今は何もいってこない。

 というか、完全に尊敬の眼差しで俺を見てきていた。

「はい!」

 とか勢いよく言って、全力で走っていっった。


 俺はそんなモブ魔法使い見習いを無視して、幽霊おじいさんを探す。

 さっき周りを見渡した時に目に入らなかったのだ。

 どこいっちまったんだ?


「わしの魔力測定装置があー。どうしてこうなったのじゃ。わしの何がいけなかったのじゃ」


 と、下から消え入りそうな声が聞こえてきたので下を見ると、俺の足元に何かが這いつくばっていた!


「おい! ゾンビ! どうしちまったんだよ?」


「誰がゾンビじゃよー」


 先ほどのキレがない。相当心を病んでいるようだ。

 おじいさんは、俺の足元に落ちている魔石の破片を必死に集めている。

 集めたところで、とても元どおりにならないだろうほどの破壊っぷりだ。


「ああ、わしが国王から授かった宝物がっ!」


 そういった後、恨みの募った怨霊のような顔でこっちを睨んできた。


「わしの宝を破壊しておいて、ただで逃げれると思うでないぞっ!お主は、わしの元で研究に励むのじゃっ! 功績をあげる助けをするのじゃっ!」


「いや、待てよ幽霊爺さん。 俺は、壊れたらどうするって聞いたよな? 壊れるわけないって笑ったのはじじいだろうがっ! それに俺は研究なんてちまちましたことをするつもりはねえんだよっ!」


 そう言うと、幽霊おじいさんは、大号泣し始めた。

 通りの人々がどうしたものかと注目する。

 恥ずかしくないのか、この爺さん。


「可哀想に見えてきました、ベリィ」

(そうだワン! 手加減しなかったベリアル様が悪いワン!)


 おじいさんを哀れむリーベに、俺にちょっと怒ってる様子のシュヴァ。

 確かに爺さんの大号泣ぶりを見ていたら、少しは落とし前をつけなければいけない気がしてきた。

 仕方ない、か。


「わかったぜ、爺さん。少しだけなら手伝ってやろう」


 俺は這いつくばる爺さんに手を差し伸べた。



 こうして面倒ごとにまた首を突っ込むことになる。


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