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怪しい魔術師団

 

 鳥の囀りが聞こえてくる、新しい朝だっ!

 窓からさす太陽もまた、この天国のような朝を演出している。

 薄目を開けて、自らが泊まっている部屋を見回す。

 すると、部屋の中には天使がいた。

 って、まじかよ!


 俺は驚いて体を起き上がらせる。

 そして目をこすって部屋をもう一度見回した。


「あ、天使なんかじゃねえ、ただのアホ妖精だ」


 アホ妖精リーベは空中に飛びながら眠っている。

 器用なことをするものだ。


 まあ、でもそんことはどうでもいい。

 昨日は、龍殺しから譲り受けた魔物討伐でかなり稼いだ。しばらく金には困っていないのだ。

 ならば、惰眠を貪らせてもらおうではないか。


 そんなことを考えつつ、俺は二度寝に入ろうとしてーー。


 そんな至福の時を邪魔する声があった。

 ガラガラ声のおっさんの声だ。

 または気のいいおっさんの声。


「おい! ベリィ! 起きてくれよ!」


 突然、部屋の扉が開け放たれて一人の男が入ってくる。

 こいつは、バルドだ。


「おい! ベリアル! 今な、街が大騒ぎだぞ!」


 バルドは、俺のベットのところまで来て、俺の顔の近くで大声を出してくる。


「おい!分かったから! 汚ねえ! めっちゃ唾飛んで来てるぞ!」


 天国からおっさんに唾をかけられる世界に一気に急降下だ。すごい落差だ。

 俺は、眠い目をこすりながら、だるそうにバルドを見返す。


「そんなの興味ねえよ。てか、それでどうして俺のところに来たんだよ。後、どうやって入って来たんだ?」


「女主人に頼んだらすぐに通してくれたぞ。

 もう昼過ぎなんだから、さっさと起こせってな」


 あのババアなら言いそうである。

 まあ、本人の前でババアとか絶対に言えないけどね。


「で? なんで俺のところに来たんだ?」


「今、街中でガイルとかその下っぱの奴らがいなくなってるって話で大騒ぎなんだよっ!

 龍殺しが来たのとタイミングが被ってるから、皆んな龍殺しのおかげだって喜んでるんだけどよぉ。

 俺は違うと思ってな。なあ、お前がガイルをやったんだろ? 嘘だと思ってたけど、あれマジだったんだろ?」


 ガイルというと。二日前この街に来た時に倒した奴だ。

 倒したっていうより、俺はただ立ってただけで相手が勝手にビビったっていう方が正しいが。


「俺的には、今更って感じなんだけど。ガイル、そんな奴いたな。完全にヤラレ役みたいな奴だったけどな」


「ヤラレ役って! 本当にお前はぶっとんでんな!

 でもそうか。やっぱりか。昨日のアレクシスとの一戦を見て、本当かもって昨日の夜ふと思ったら、今日この話題が飛び込んで来たんだぜ、マジで、おったまげたぜ」


 昨日には既に、その消失に気づいていた者はいたらしいが、声を大にして言える話題でもないらしく、今日やっとその話が広まったらしい。


 俺は知らなかったんだが、ガイルとその一味は、裏でこの街を支配してるような奴で、もう長い事、衛兵も誰も手が出せなかったという。


「そうか、ここじゃあいつが強いのか。

 みんな苦労して生きてんだな」


 ふとそんな発言をすれば、バルドが笑っていた。

 なんで笑ったのかはよく分からないが。


 それは、ともかく俺は外に出てみる事にした。

 空を飛びながら眠る妖精も未だ眠るシュヴァも叩き起こす。

 こいつらも俺と同じような性分のようだ。

 その後すぐに、お祭り騒ぎのようになっている街に繰り出した。


  * * * * * * * * * *


「ベリィ! あそこになんかすごいのがあります!」


 騒がしい街の中、妖精のリーベが陽気な声を出した。

 今、俺たちは大通りを歩いている。

 リーベは人混みの中、すぐにそのすごいものに向かって飛んで行こうとする。

 はぐれたら面倒くさいんだから勘弁してくれよ。


「おい、リーベ。あんまり動き回るんじゃねえ。

 お前は、どチビなんだから見失いやすいんだ、気をつけやがれ」


「どチビですって!!」


 リーベはその言葉に過剰に反応して、怒ったようで頰を膨らませる。

 妖精なんだから別にいいじゃないか。

 この妖精の考え方の基準みたいなものは未だに謎だ。

 

(そうだワン!リーベは見失いやすいワン!)


「シュヴァもそう言ってるぞ」


 シュヴァのそうだワンは見失いやすいということにかかっているのだが、面倒臭いからどチビにかかっているってことでいいや。


「シュヴァちゃんまで私がどチビだなんて思ってるんですかー。ひどいです。私傷つきました」


 そんなことを言って泣き真似するリーベをすぐさまとっ捕まえる。


「で、そのすごいのってのは、どこだ? 俺ごといくから教えろ」


 俺に腕を掴まれて逃れることの出来ないリーベは観念して、ある方向を指差す。


「あっちです。あの魔法使い見習いが沢山いるところに強い魔力を含んだ最高級の宝石があるみたいなんですよ」


「なんだ、あれ。辛気臭いのがたくさんいるな。

 あいつらちゃんと生きてんだよな?」


 魔法使い見習いは通りに数人固まっていて、さらにボロボロ目の屋内にもっと沢山いるようだった。

 ちょっと気味が悪いので、近づきすぎず、観察していると。


 魔法使い見習いの固まっているところから、ローブに身を纏ったおじいさんが笑顔で近寄ってきた。

 不気味な雰囲気だ。


「おい、リーベ! なんか気味の悪い幽霊みたいなじじいが近づいてきやがったぞ。逃げていいか?」


「はい、逃げましょう。あの人幽霊みたいで怖いので宝石を見るのは諦めまーす」


「おい! 誰が幽霊じゃ! 初対面でそれは失礼にもほどがあるじゃろが!」


 チッ!、幽霊おじいさんに聞かれてしまったようだ。

 無視してその場を離れようとすると、幽霊おじいさんが俺の腕を掴んだ。

 そして、おじいさんはさらに続ける。


「まあ、それは水に流してやるとして。

  ところで、さっきからわしらの方を見ていただろう?

 何か用があったか? 魔法使い見習い。

 まさか貴様もわしの怪しい研究に参加したいのか?」


 おじいさんは薄気味悪い笑顔を浮かべる。


「いや、なんかこいつが、すごい魔力を発する最高級の宝石の存在をお前らから感じたらしい。

 で、見せてもらいにきたんだ」


「って、わしの怪しい研究スルー!? 怪しい研究というワードか聞こえなかったのじゃろうか?」

 幽霊おじいさんは、ボソボソと俺にはよく聞こえない声で言った。


 そしてその後、表情を変えて、ローブの幽霊おじさんは、嬉しそうに微笑む。


「まあ、それはそうとして、ほう妖精中々わかっておるではないか。

  あれはな、ダイヤモンドよりも数十倍の硬度を持つ宝石でな、実力のある魔法使いや魔法使い見習いを集めるための魔力測定に使われる最高級の魔石なんじゃ」


「なんで、じいさんがそんなの持ってるんだ?

 もしかして盗んできたのか?」


「おい! 貴様、本当に失礼じゃな!

 あれはな、ちゃんと国王から直々に承ったものなのじゃ。ふふふ、わしの怪しい研究のためにな」


 幽霊おじいさんは、再び悪そうに微笑む。

 また怪しい研究というワードが出て来た。

 なんか研究について聞いて欲しそうな目をしているが、まあどうでもいいや。


「その魔石とやらが見たいだけなんだが。

 見せてくれるのは可能なのか、じいさん」


「おいいいいい!! 貴様、わざとスルーしているのか? わしの怪しい研究が気にならないのか!?」


 幽霊おじいさんが、何やら発狂する。

 俺は思った通りに答えた。


「すまないが、興味ねえな」


 おじいさんは、死刑宣告でもされたかのようにその場に崩れ落ちた。

 研究について興味を持ってもらえなくて相当落ち込んでいるようだ。

 しばらく放置していると、よりげっそりとした表情でこちらを向いた。


「はあ。よし、分かった。魔石を見せてやろうではないか。ついてくるのじゃ」


 そう言うと幽霊おじいさんは、俺たちを魔法使い見習いのたくさんいるところに案内する。

 そして、俺たちの前に魔石とやらを持って来させた。

 それは、虹色に自然発光している宝石だ。

 確かに神秘的な何かを感じる。


 リーベも喜んでいるようだった。


 それを掌の上に乗せて、幽霊おじいさんが言った。


「おい、魔法使い見習い、魔力測定をして見るのじゃ。貴様、さっきの態度中々の大物になるだろうとわしに思わせた。その隠された才をわしが見つけてやろう」




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