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魔獣狩り


俺は早朝、街の掲示板である人物と待っていた。


 昨日は、例の宿(『山羊の尻尾亭』という名前らしい。センスないとかダサいとかそういう感想はおいといておこう)でいろいろな人と交流しながら遅くまで飲んだ。


 いろいろな人というのは魔獣狩りをして生計を立てている人、俺と同じような格好をしている魔法使い見習い、この街で商売をしている人、はるばる遠くから珍しいものを運んでくる旅商人と呼ばれる人など様々だ。

 俺はその場で、取るに足らないようなくだらない話から生きていく上で超重要な話までいろいろな話を聞くことができた。

  

 その話の中で今の俺たちにとって重要だと思ったのは、『カネ』を稼ぐ手段についてだ。



この街にくるまでは俺はカネのことなんて知らなかったし、別になくても生活できると思っていたし、実際生活することはできていた。


だが、俺は知ってしまったのだ。

カネを払うことで得られるサービスというものの素晴らしさを。

祝宴の素晴らしさを。



だから、もう後戻りできない体になってしまった。



どうにかして明日以降も宿に泊まれるだけのカネは手に入れたい、とそう思い、俺はカネを手にいれるための方法を聞いたのだ。



 話を聞いた今となっては当たり前のことだが、『カネ』を手に入れるためには基本的に働かなくてはならない。 

俺はカネを手に入れるために働かないといけないのだ。


働くという行動は自由を奪われるものだと認識していた俺は、その事実を知って、あー、嫌だ嫌だ働きたくないよーと頭を抱えていた。

そんな俺に魔獣狩りで生計を立てているバルドという男がいいことを教えてくれたのだ。

 


 「おまえ、ガイルに攻撃すらしないで倒したんだろ。それならそこらの下級の魔獣を一二匹倒して来りゃあいいじゃねえか。けっこうな金になるぞ 」 


魔獣狩りは、悪魔の俺が行えば仲間内での殺し合いだとイメージするかもしれないが、特にそうは思わない。

魔の存在は、その中の種によって姿も違うし考え方も違って、同族だという意識は個々全くない。

そのうえ、俺は魔の存在に対していい印象を持っていないのだ。

特に魔獣狩りをためらう思いはなかった。

むしろ、自分にぴったりだと思ったから、 是非とも詳しく教えてくれと俺はバルドに頼んだ。

すると、彼は、


「おお、そんなにやる気なら先輩として教えてやるよ 」


と、快く引き受けてくれて、俺により詳しいことを教えたり、実際に狩りに連れて行ったりするために、今日のこの早朝にこの掲示板の前に集合することになったのだ。

 


この掲示板へは俺一人で来た。リーベは酒をちょっと飲んだだけなのに二日酔いで動けないみたいだったし、シュヴァは眠くて動けそうになかったからだ。


まあ、今はもうこの街も安全だろうから、置いていっても問題ないだろうと思って、俺は早朝の街に一人でくりだした。


「おう、べリィ、本当に来たか。 覚悟は出来てるみてえだな 」


眠そうに目をこすりながら、鎧を装備した壮年の男、バルドがこちらにゆっくりと歩いてくる。

そのリラックスっぷりはベテラン感を感じさせた。


彼はまずはこの集合場所について教えてくれた。


この集合場所となった掲示板には様々な依頼の紙が貼り出されている。

個人からの依頼もあれば街からの依頼もあってその依頼内容の種類も多種多様だ。



多すぎて俺が勝手に見てもイマイチよく分からなかったのだが、バルドはとりあえず最も重要な紙として、その内の一枚の張り紙を指し示した。



残念ながら俺はその文字を読むことができず、バルドに口頭で読ませることになってしまったが、

バルドによれば、その紙には大まかには、魔獣の名称とそれを狩ったときに支払われる金額が記されているそうだ。



「この紙は国から下級の魔獣の討伐が依頼されたものだ。 これを受けるのには、特別な資格も必要ねえし、特別な手続きも必要としねえ。

とにかく魔獣を狩ってから、ここに詳しく書いてあるんだが、各種ごとに必要な部位を持ち帰る。

それをあそこのカウンターに提出し認められればここに書いてある通りカネになる。

注意が必要なのは、討伐しても、必要な部位を持ち帰らないと、討伐したことを証明できなくてカネになんねえことだな。

まあ、大雑把にはそんなところか 」



他の貼り出されている紙についてはまだ教えてくれなかった。

彼曰くまだまだ早いということだ。

別に俺自身も興味がなかった。

とりあえず俺は楽に宿代が欲しいだけだ。

下級の魔獣で済むのならそれで十分。

今後もずっと魔獣を狩り続けるとかそんなつもりも別にない。

とりあえず、ここにいる間はそれでカネを稼ごうという、それだけのことである。



俺とバルドは日が昇ってくると同時に、実際に魔獣を狩りに出発した。




「今日は見てるだけにしろよ。目で見て自分で魔獣討伐が務まるのか判断しろ。最初が一番危険なんだからな 」


バルドはそう釘を刺してから、下級の魔獣が増えてくるという、メーカの街の西の一帯に向かう。


バルドは普段は中級の魔獣を別のところで狩っているそうだが、今日は俺のためにこの西に来て下級を討伐してくれるそうだ。

気のいいおっちゃんて感じである。


が、それで逆に今日は暇になりそうだ。

下級なんてたかが知れてる。上級だって多分余裕なのに。 まあ、今日はこの気のいいおっちゃんに従っとくか。


そんな風に気を抜いて、ただ散歩するがごとく歩いているたその時ーー。



「きゃあぁぁーーーー! 」



静かだった一帯に悲鳴が響き渡る。

これは明らかに緊急を要する事態だ。



「べリィ、急ぐぞ。 俺からあんまり離れないようについてこい! 」


バルドもその緊急性を感じとったようで、俺に一言声をかけると走り出す。



叫び声は、俺たちが進もうとしていた先から響いて来た。

それほど遠くないようで、バルドから聞いた話によれば、そこは下級の魔獣の生息地のはずだ。

とすると、相手はそこまで強くないはずで、間に合いさえすれば、助け出すことができる。



バルドの後をついて行くことに焦ったさを感じて、本気で走ろうかと迷っていたその時、狼のような姿の魔獣数体と恐怖の面持ちでそれに対峙する少女の姿が見えた。


ここにいるのは、下級の魔獣のはずだが、 図体がかなり大きい。

これまで体験してきた人間の力量を思い出すと、これが下級だというのは、おかしい気がする。


この巨大な魔獣を目視して、事態を深刻と見たバルドは、俺の方を振り返り叫ぶ。



「べリィ! すぐに街に引き返せ。あれは下級魔獣じゃねえ。俺が時間を稼ぐから、街から俺の仲間を呼んで来てくれ!」


だが、その時にはもう遅い。 左右や背後から同種の魔獣が複数体ずつ現れる。


魔獣は、俺たちの逃げ道を一方向に限定させるようにうまく追いかけてくる。


その方向は少女のいる方向。 このままでは俺とバルドは少女とともにこの魔獣に囲まれてしまう。

そして、3人とも魔獣にやられてしまう。



ーー絶体絶命のピンチ、というやつだ。



やった!来た! こういうシチュエーション!

今、この状況をひっくり返せるのは間違いなく俺しかいない。

たっぷりとためてから俺は、後ろをついてくる魔獣たちに目を向けて、落ち着いた声で、


「魔獣ども、お前らの敗因は俺を敵に回したことだ」



などとかっこよく決め、魔獣をぶっ倒そうと動きだそうとしてーー。


その一瞬。


動き出すまでのその一瞬。


周りを囲む魔獣たちに、同タイミングほぼ一瞬で、どこからともなく凄まじいエネルギーの斬撃がお見舞いされる。


まるで夢でも見ているように、あっさりとさっぱりと、魔獣たちの胴体が、ほぼ同タイミングで、地面と水平にスライスされる。


その斬れ味は、見ている者に、この魔獣が本当はデレンデレンの柔らかい素材で出来ていたのではないかと錯覚させるほどのものだ。


地面にドサっと同時に落ちる魔獣の上半分に、バタッと同時に倒れる魔獣の下半分。


この世のものとは思えない刹那の華麗な斬撃によって、まるで今まで役目を忘れてしまっていたかのように、不自然なくらい遅れて血飛沫が噴き出す。


血の噴水が景色を彩る中、俺たちの前に立っていたのはーー。


龍に二本の剣が突き刺さっている紋章の刻まれた鎧を全身に身につけた、目を見張るほどの美貌の持ち主だった。




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