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街の裏の帝王


俺は1人の男に対峙していた。


数分前、ある集団に絡まれた後、俺はリーベとシュヴァの元へと急いだ。

目的地までには、その集団の仲間とみられるものが沢山いた。

が、そいつらは完全無視。俺は先へと突き進む。

その時にちょっと驚いたことがあった。

それは人間には見ることのできないはずの超スピードで移動する俺を、この集団の奴らは目で追っていたのだ。

もちろん、体はついてきていなかったけど。

でも、この街の一般人ならば俺の姿を目で追うことさえできない。


この集団がこの街を支配しているというのはどうやら本当なのかもしれない。

普通の人間よりも特殊な人間の集団のようだと思った。


しかし、ここに高らかに宣言しよう。

俺の前でその差は毛が生えた程度いや正確にはうぶ毛が生えた程度と言えるだろう。

こいつらのボスがどんな野郎かはまだわからないけど。


そんなことを考えながら俺はようやく目的の地、ある空き住宅地帯へとたどり着いた。


ボスの居場所すなわちリーベとシュヴァの居場所は集団が増えてきた場所だろうと大体予想がついた。


そして。

住宅地帯が丸ごとなくなった空いた土地に着いた。

そこにはこれまでの奴らとは一味違う雰囲気を持っている男が女やら男やら様々な人に囲まれて一つの立派な椅子に座っている。


褐色の肌に深紅の瞳、赤い髪の毛を持つ体格に恵まれた男だ。

ボスと言われて想像したよりは若くてなかなかかっこいい顔をしてやがる。

リーベによる俺の姿とは対照的で正直羨ましいかも。


よく見ればその右手で黒い球を弄んでいる。

なんだ、あれ。

俺にとっては初見のものだ。


おそらくボスであろう彼は突然現れた俺に気づいた。


「てめぇ、1人でここへ来たのか? 」


「ああ、俺の仲間の妖精のリーベと犬のシュヴァがここにいるはずだと思ったけど 」


男の周辺を見回すが、どうもリーベとシュヴァの姿は見つけられない。


「おう、てめえがこの妖精と犬を連れてた野郎か。そいつらはこの球の中に閉じ込められてるぜ 」


「無事なのか。 俺には全く気配が感じられない 」


最悪の事態を想像する。 でも、閉じ込められてるって言った以上無事なはずだ。 でもなぜか妖精特有の気配は感じられない。

声も聞こえてこない。


「この黒い球は、すげえ代物なんだよ。 閉じ込められたら外界から気配も何もかも遮断される。外からも内からも、声も届かない。物理的に内側から攻撃したりしても出ることは絶対にできねえし、外側からこの堅物を壊しちまえば中に閉じ込められてる奴は失われちまうらしい 」


なるほど。

それで気配がないのか。 声も聞こえなかったのか。


褐色の肌の男は黒い球を周りにいる1人の女に渡して立ち上がった。


「てめえ、うちの家族を殺さねえで潜り抜けたらしいな。 あいつらどうだった? 」


「どうだったかって? 普通の人とそこまで変わらないと思ったが 」


俺は率直に彼らに対峙した感想を述べる。


褐色の肌の男は立ったまま笑った。


「 あいつらはな普通の人に比べりゃあ2、3倍の身体能力を持ってる。 パワーもスピードもな。

でも、てめえにとっちゃ人と変わらんか 」


「そんなことは些細なことだ。 それより俺の仲間を返してもらいたい 」


褐色の肌の男は隣の女の持つ黒い球を再び受け取って俺に見せつける。


「いいだろう。 が、その代わりひとつ条件だ。 俺と闘え。 俺と一対一で真剣勝負だ。もし俺が負けたらその球の所有権は自動的にお前に移る。 そうしたらお前は好きにそいつらを外に出すことができる 」


「まあ、当たり前のことだな。 はい、どうぞって渡すわけはないと思ってたよ。まあ、俺にとっては複数と戦うんだろうなって思ってたのがお前一人と戦うことになって嬉しい限りだよ 」


つまり、俺の答えは受けたぜってことだ。


それを聞いて、褐色の男は周りに侍る大勢の人たちに目を向ける。


「てめえら、この空き地から出てくれ。かなりやる野郎みたいだぜ。 ワクワクして来た 」


「分かりました。勝利の姿がもう目に浮かびます」


周りに侍る手下、この集団の幹部の1人はすんなりと受け入れた。

そこにはボスが負けるはずがないだろうというボスに対する絶対的な信頼が表れていた。

それ以外に侍っていたもの達も黙って頷き、揃ってこの空き地から出て行く。


「随分と信頼を置かれてるみたいじゃないか。 さっき俺を囲ってきた奴らもお前に絶対の信頼を置いてたみたいだった」


「まあ、俺は人には負ける気がしねえからな。 これまでまともに相手になった奴は1人もいなかった。

その俺がてめえとの戦いをなかなか楽しみにしてるんだ。 てめえとはいい勝負ができそうだってな 」


男は熱い熱い闘志を燃やしている。

全身が焔に包まれていると錯覚さえする。

こいつは魔法を使うのか。

いまいちイメージが合わない。

見た目からこってこての武闘派って感じがする。

でも、もしそうだったら人間に対して強くても俺に対しては勝ち目ないぞ。


そんなことを考えていると周囲は静寂に包まれている。

いよいよということだろう。


褐色の男がこのタイミングで名乗る。


「俺はガイルだ。 てめえは? 」


「ベリアルだ 」


お互いの名前を知ったところで今度こそいよいよだ。


ガイルは戦う態勢に入り、静かに言った。

「はじめだ 」


「てめえには最初から全力でいかせてもらうぜ 」

彼は構えながら言う。この構えはおそらく武闘派だ。 ここからこいつがどうやって戦うのか気になるな。

俺はまず相手の出方を見ることにする。

この新しい世界で今後旅する上で相手の強さの程度は重要な情報だしな。


ーーだが、そんな呑気なことを考えていた刹那。


目の前のガイルの姿が消える。

いや、消えたように見えたと言ったほうが正確か。


速すぎて目で捕らえきれなかったのだ。


目の前にはパンチの姿勢に入っているガイルの姿があった。






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