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1000年後の世界



妖精の森の地下深く。


ある大悪魔ベリアルが長い長い眠りから目覚めた。



ん? 俺何やってたんだっけ?


あ、寝てたのか。 全力出して魔王ぶっ倒したから、疲れて寝ちゃってたのか。あいつ、やっぱ強かったからな、俺ほどではないけど。


ん?身体が全然動かないぞ?ていうか、ここ土の中か?

見回すと土の中に何故か空いた空洞にいるみたいだ。

そして、何故か身体からたくさんの根っこが生えている。

ふと気づく、根っこから自分の養分を吸収されているような感覚に。


え、もしかして、俺の体から養分を吸収してやがるのか!?

いつの間に?ちょっと寝てただけなのに。ほんと気が抜けねえな魔物の巣窟付近の地域は!なんの魔種だよこの根の植物は!


俺は全身に瞬間的に力を入れて身体中の根っこをぶちぎった。

と、体に本来の力が戻ってくる。

ああ、そうだ、この身体中をみなぎる力。この力こそが大悪魔ベリアルの象徴である。


まあ、とりあえず、地上に出るか。



ーー実はこの悪魔のいるところは、地中のかなり奥深いところなのだが、彼の力ならば地上に出るのは造作もない。

彼が力を入れて地面を強く蹴れば一発で地上に出られる。

大地を盛大に破壊して大悪魔が1000年ぶりに地上に戻ってくる。

彼の感覚では魔王との戦いの後疲れて眠って次の日の朝に目覚めた感じである。ーー




外は朝。鳥の囀りが心地いい。木も魔種でもないみたいで、ここは森か。

地面の破壊の勢いで何本もの木が倒れる。

あぁ、さすがにやりすぎた。なんか、力の操作がうまくいかねぇな。


ーーと、俺の中に記憶の齟齬が生じる。


あれ?俺って昨日こんな森で寝たっけ?

なんか、確かここは魔物の巣窟から少し外れた程度のところだったと思うんだけど。


この森はなんか神聖な感じだ。


「あぁ!!悪魔さん!目が覚めたんですかあ! 」


どこからか女の子のアホっぽい声が聞こえる。


あたりを見回すが、誰もいない。 今のは、幻聴か?


「下じゃありませんよー。上です!上! 」


その声に従って上を見上げる。

と、そこには小さな小さな蝶の羽を持った女の子が宙に浮いている。


「声が幼いから人間のちっこいのかと思ったぜ。

お前は、妖精か? 」


「そうですけど、私幼いですか!?

私こう見えてももう500年は生きてるんですけど!

さすがは大悪魔さん!」


まじかよ。 さらっととんでもないことぬかしよる。

この見た目でそんな婆さんなのか。

あぁ、妖精は霊の一種だからずっといきてるんだっけ確か。


「で、何の用だ。妖精が俺に寄ってくるなんざ、珍しいな、どういう風の吹きまわしだ? 」


実はちょっと嬉しいのは隠しておく。まさか、魔族以外と話せるとは。

他の生物とは違い魔族は魔族であるだけで避けられるのが普通だ。


「それは、もちろんこの森の生みの親である悪魔さんが目覚めたんですから、寄ってもいきますよー」


可愛らしい妖精は、満面の笑みを浮かべている。


「生みの親? どういうこった? 」


「かつて、悪魔さんが邪悪な魔王を打ち滅ぼし、ここで眠りにつきました。そして、その魔力を養分にして、この聖なる森ができてたくさんの妖精がうまれました。 私もそのうちの一匹です。 だから、あなたは私たちの、この森の生みの親です! 」


今の妖精の話を聞いていろいろ気になることはある。

でも、ひとつ特にききづてならないことがあった。


「かつて? 俺はどんくらい寝てたんだ? 」


「私も生まれてないので、正確にはわかりませーん。でも推定1000年らしいです」


え!? 1000年!?


悪魔の俺でも驚いた。

だって俺の感覚だと、ちょっと寝てたら1000年たっちまったんだよ!?

1000年て言ったら時代が丸々普通に変わるじゃないか。

俺とか歴史上の人物になっててもおかしくないし。


1000年後なんて全く知らない世界。

こんな時はとにかく情報収集だ。

それに尽きる。


俺は、固有スキル「地獄耳」を発動させる。

地獄耳ー自分の周囲半径1キロメートルの範囲で行われる生命の会話を聞き取る。

人系でも動物でも虫でもなんでも会話を聞き取れる。

ほんとに便利な能力だぜ。


俺は聞き耳をたてる。

人か?人がいるみたいだ。たくさんの人がいて一気に聞こうとすると何も聞こえない。

これは人の街だ。半径1キロ以内に街がある。

集中的に、一つ一つの会話を取り出して聞いてみる。


「 やばいのでーす。 魔獣が一匹逃げ出してしまったのでーす 」

間の延びた声。

「おい! どうするんだよ!早くとらえないと領主様に俺ら全員街ごと消されちまうぞ! 」


「あの魔獣、逃げる前に急に大きくなって凶暴になって! どこにあんな力があったんでしょーかっ!」


「とにかく、魔獣が逃げたことを領主様に報告して、俺たちは俺たちでーー 」


「報告だと!? そんなのしたらもうおわりだぞ!あのメンツにこだわる領主様だぞ! 」


おお、大荒れだ。

なにやら、大変な状況らしい。

魔獣に逃げられたとか、なんとか。

俺なら解決してやれるぞ人間め。

もう少し情報をーー


「悪魔さーん。ねえ、なにしてるんですかー。私とのおしゃべり無視してなにしてるんですかー? 」


妖精が邪魔してくる。

ちょっとうるせーな。察しろよ、なんか能力使ってるのわかるだろ!


「ねー。無視しないでくださいよー 」


ああ、このアホが。うるさくて聞こえねーぞ。500年生きようがアホはいつまでもアホなんだろうな。


「ちょっと、静かにしろ! 今この近くの街で、魔獣が逃げて大騒ぎになってやがる。その情報がもう少し

欲しいからちょっとだまれよ!な! 」

俺は妖精に威圧する目を向ける。


「あぁ、はぃ。悪魔さんすいませぇん、黙ります 」


妖精は、気まずそうに黙り込む。

やっとうるさい声がなくなった。

よしっ、情報収集の続きを、と思った時何かが森の中をかけてくるのが見えた。


ものすごいスピードでこっちにくる。

犬か? でも、犬とは決定的に違うのはその気配。

この独特の気配はーー魔獣のものだ。

魔獣は待ってくれない。この魔獣があの人間から逃れてきた魔獣かどうか知らんが、このスピード、相手はどうやらやる気らしい。



魔獣は、俺と妖精の前で急停止した。



その魔獣は3つの頭を持つ犬の怪物。

地獄の門番と恐れられたケルベロスであった。




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