8-3日目
やって来ました、冒険者ギルド!様々な武器を携えた、ゴツくて強そうな人達が出たり入ったり。本当に異世界なんだって実感が湧いてくる。
いざっ!「こんにちは~」
声小っさ!私、声小っさ!大事なことなのでお約束で2回言いました。そ~っと扉の隙間から中を覗き込む。おお~、人がいっぱいいるよ。右側の壁は一面掲示板みたいになっていて、人集りが出来てる。左側には6人掛けの机と椅子がたくさん置いてあって、打ち合わせ?している人達がいた。
正面は左右にスペースがある他は、右から左までのコの字型をした木のカウンター。文字を読むと右側5ヶ所が受付で、左側2ヶ所が買取りと書いてある。受付と買取りの両端・受付と買取りの間が跳ね上げ式の机で通れるようになっていて、カウンターの奥に扉が1つ。カウンターの右横には2階への階段、左横には奥へと行ける通路があった。
「イト?」
「ごめんオビト君、珍しくてつい」
「あそこの受付空いたよ」
お役所みたいだけど雰囲気が全然違う。どうしてもキョロキョロ見ちゃうよ。そんな私に落ち着きのなさを感じたオビト君が、手を取り引いていく。わぁ、私の方が子供みたい‥‥。結構視線を感じるな。くっ、他称7歳の私がそんなに珍しいかね、君達。空いている受付を見ると美人のお姉さんと目が合い、ニッコリと微笑まれた。
「冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか」
「冒険者登録をお願いします」
オビト君がお願いしてくれた。13歳なのにしっかりしてるなぁ。
「わかりました。では、こちらの登録石に触っていただけますか?」
「イト、先にいいよ」
「うん、ありがとう」
「えっ‥‥」
お姉さんが目を見開いて絶句してる。まだ何もしてないけど順番とかあったりするの?
「え~っと、順番を守らないとダメですか?」
「い、いえ‥‥。あの‥‥、貴方が登録するの?」
「はい、私16歳なので登録しても問題ないですよね?」
「じゅ‥‥、じゅうろく‥‥」
昨日のオビト君と一言一句一緒ですな。他称7歳恐るべし。
「‥‥失礼しました。では、こちらの登録石に触っていただけますか?」
「はい。あっ、‥‥‥‥‥うぅ~」
て、手が届かない‥‥。登録石はカウンターの上になく、カウンター下の机に置いてあった。爪先立ちでプルプルしながら必死に手を伸ばす。‥‥しかし届かんっ!やっと気付いてくれたオビト君が、無言で持ち上げてくれた。‥‥恥い、穴があったら入りたい。
「ぅ、ぅ‥‥」お姉さんが俯いて震えてるよ。16歳なのになんて健気なの!って思ってるの?いや、笑いを堪えてるよこの人。ペタ、こっちも無言で触ってやりましたよ。あれ、私の身体も震えてる、なんで?オビト君も震えてました‥‥ちぇっ。
待つこと数分。
「‥‥申し訳ありませんでした。確認させていただきます」
復活したお姉さんが、こちらから見えないカウンター下を見ながら
「イト・サエキ様、年齢16歳が確認出来ましたので登録させていただきます。少々お待ち下さい」
お姉さんはそう言うと、奥の扉に入って行った。
「イト」
「何?オビト君」
「本当に16歳だったんだね」
「証明出来て良かったよ」
「7歳なんて言ってごめん」
「気にしてないよ、小さいのは本当のことだしね」
そう言いながら爪先立ちをしたら、オビト君が堪えきれずに笑った。癒されるなぁ。
「お待たせしました。こちらがイト・サエキ様のギルドカードになります。冒険者ギルド及びギルドカードについての説明は必要でしょうか?」
「あの、説明していただく前に、彼の登録を先にお願い出来ますか?その後で一緒にお願いしたいのですが」
「わかりました。では、こちらの登録石に触っていただけますか?」
「はい」
オビト君が登録石に触ると、お姉さんがカウンター下を見ながら
「オビト・ヨク様、年齢13歳が確認出来ましたので登録させていただきます。少々お待ち下さい」
「オビト君、良かったね」
「うん、これで友達とパーティーが組めるよ」
「へえ、友達と約束してたんだ」
「俺、友達の中で生まれるのが一番遅かったんだ。皆は1年以上前から冒険者をやってる」
「そうなんだ。じゃあ危なくないね」
「‥‥イト、友達に聞いてみるからパーティーに入らない?」
「えっ、いいの?」
「1人じゃ危ないよ」
な、な、何ていい子なんだろう!確かに知らない世界で1人は正直心細かった。迷子になるってゆーか、そもそも道を知らんとゆーか。‥‥その前に道はあるのか?‥‥道を聞きたくても、人歩いてなかったりして‥‥あ、危ねー。パーティーという手に気付かないなんて迂闊にも程がある、私!
「是非とも、お仲間に入れていただきたく!」
「‥‥わかった」
「お待たせしました。こちらがオビト・ヨク様のギルドカードになります。では、冒険者ギルドとギルドカードについて説明させていただきます」
「はい。宜しくお願いします」
「まず冒険者ギルドでは‥‥」説明が始まる。
冒険者ギルドはランク制で、ランクに会わせたクエストを規定数達成することでランクが上がるシステムだ。ランクは10段階あり、個人ランクの他にパーティーランクが存在する。ちなみにパーティーは6人まで。
13歳を越えれば基本(私でも大丈夫ってことは余程のことがあっても誰でもじゃ‥‥)登録が可能であり、門戸はかなり広く開かれているようだ。魔物がいる世界だけに、あまり厳しくしてしまうとなり手がいなくなっちゃうとか?そういう理由かはわからないが登録料もないし、クエストに関しても何ヶ月・何週間に1回こなせ!みたいなのもなかった。
やらなければただ単にランクが上がらないだけ。収入も比例するからなったからにはやるんだろうけど、リスクを負うだけのロマンがそこにはある!ランクが上がる→それ即ち有名人→モテる・憧れの的・尊敬の眼差し・お金持ち→貴族・王族からのアプローチ→激闘の末、英雄へと至る→ウハウハ・この世の春・お姫様とフォーリンラブ?‥‥そりゃあ目指しちゃうよな~。
クエストは依頼・討伐・護衛・指名・緊急・その他(特殊なもの)があるらしい。見せてもらったのはこんな感じ。
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【討伐クエスト/rank1-1】
草原・森に棲むスライム討伐/3日
達成条件:スライムの核/1匹
報酬:50ギル
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【討伐クエスト/rank1-3】
草原・森に棲むラビ討伐/2日
達成条件:ラビのしっぽ/1匹
報酬:500ギル
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【依頼クエスト/rank1-5】
草原・森に自生する薬草採取/1日
達成条件:10本/一束
報酬:5,000ギル
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ほうほう、なるほど。rank1-1はランク1で受注出来るクエストで、達成すると1ポイント貰えると。ラビ討伐で2ポイント、薬草採取で5ポイント!?報酬も高い、薬草不足なの?この3つは常時出ているクエストで期限はまちまち。肉や薬草は足が早いから期限が短いらしい。
仮に期限を過ぎてしまった場合は、達成ポイントが所持ポイントから引かれてしまう。だが受注より先に採取・討伐してても、ギルドにクエストが出ていれば受注出来るというのは嬉しい。薬草は期限が短いけど常時クエストだから、採取してから受注した方がいいかも。
達成条件を受付に納めることでクエストの達成となり、魔物に関しては達成条件以外の部位を買取りで売ることが出来る。解体してないものについては、ギルドで解体する手数料として5割引いた金額になってしまう。5割はちょっと高いんじゃ‥‥と思ったが、高く設定しないと解体しない持ち込みが多過ぎて対処出来ないらしいのだ。
受注出来るクエストは、該当ランクと1つ上のランクのみ。ちなみに1つ上のランクを達成するとポイントが倍貰える。これは上のランクをこなした方がお得?でもその分、実力以上に頑張らないといけないから妥当なのかも。
また2つ以上と下のランクは受注出来ないので達成してもポイント・報酬は貰えないが、買取りで売ることは出来るということだった。
そして当然だが、人殺し・窃盗等の犯罪禁止。お縄になった時点で、ギルドから抹消となりカードは没収。晴れて警備団のお世話となる。カード自体は討伐・犯罪履歴が残るような優れものではないので、採取しないで購入した素材や他の人が討伐したものでも、持ち込んだ人のものに出来てしまうという。
だから中にはお金にモノを言わせて、ランクを上げる人もいるみたいだ。ただレベルは上がらないのでいつかは行き詰まる、というか行き詰まっている人が多数いるようだ。お姉さんは、こういう人達に気を付けるようにと言ってくれた。
「ギルドカードは登録者が魔力を込めることにより、ステータスの表示がされます。ステータス表示の際は周りからも見えますので、取り扱いには十分ご注意下さい」
「いま見てもいいですか?」
「周りをご確認になられてからどうぞ」
魔力がわからないから、こう、カ○○メ波の光を出すような感じで唸りながら込めてみた。
「‥‥ぅ‥」何か聞こえたが集中、集中‥‥出た。
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イト・サエキ
年齢:16
職業:-
Lv:1
冒険者rank:1-0/-
商業rank:-
スキル:-
SP:0
状態:-
受注クエスト:-
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『ステータスオープン』より内容が少ない、半分もないけどこういうものなんだろう。まあ、怪しい匂いプンプンのMPとかあったから、逆にありがたいか。‥‥ヤバい、力んでたらトイレに行きたくなった。
「このカードは商業ギルドでも使用できますが、商業ギルドの登録には一定期間ごとに登録料が必要となります。また、各国への入国や町へ入る際の身分証代わりとなります。そのため再発行は出来ませんので、紛失にはくれぐれもご注意下さい」
「すみません、それでも紛失したときはどうなるんですか?」
「登録データは冒険者・商業ギルドに残りますので、冒険者ギルドではクエストを受注することが出来ず買取りのみに、商業ギルドでは商品の購入と露店以外での商売が出来なくなります。さらに他国への入国が非常に厳しくなり、国によっては入国不可能となります」
怖っ!ブルブルする。これはギルドで使うとき以外、魔法鞄行きだ。鞄も死守!
「イト、震えてるけど‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「大まかな説明は以上になります。何か質問などございますか?」
「‥‥‥‥‥」
「大丈夫です、イトは?」
「‥‥あの、トイレは何処でしょうか?」
「‥‥ぅ‥ぶふぅ~!も、もう耐えられないっ!あはははっ!」
お姉さんが壊れました‥‥。