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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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 そんじゃ宣言通り、畑泥棒対策に着手しますぞ!今回のコンセプトは‥‥ズバリ、関係者以外立ち入り禁止でしょう!


 と、その前に。配置しながらぐるっと柵を見て回ったけど、魔物が壊したのか風化してなくなってしまったのかという箇所が随所で見受けられた。防犯的には何ら問題はないが、見られると要らぬ火種の元になりそうなので是非とも直しておきたい。

 その旨をオビトに伝えトレントを1本くれと頼んだら、手持ち無沙汰な皆が手伝ってくれると言うので、柵用の板に加工してオビトへ託す。すみませんが宜しく‥‥おっと、忘れてた。ワトヤさんにお願いして、ご愛用のアレをお預かりする。それじゃあお願いします。いってらっしゃいませ~!


 ‥‥ふっ、私に誘導されたとも気付かずに‥‥。6人が離れた場所で修理し始めたことを確認して、即座に荷車へと乗り込む。作業するためとはいえ、ド○○ナされた身としては含み笑いは二度と御免だし、一段落したからには私もお菓子が食べたい!

 クワ太からギュシの革・モクの糸・蒼鉱石・鉄礬柘榴石、アレに使用するもの、それからお皿にチョコレートをダバっと出して口の中へ放り込んだ。はわぁ~、疲れた身体に甘さが染み渡りますなぁ。ぱく、もぐ、ぱく、もぐ‥‥あっ、なくなっちゃった‥‥。追加、追加っと。


 以前と同様に革紐とフック形状の金具を作り、縫い合わせてネックレスを7つ用意。2つはワトヤさんとカウ兄様の分、残りの5つは今後の予備ってことで。鉄礬柘榴石から小魔石サイズを47個切り出し、16個を『形状変化』でドックタグx15枚とピアスx1個に形成。残りの小魔石サイズのうち30個は『合成』して、小魔石5個サイズx6個にしておく。

 ドックタグ10枚は『形状変化』で私・オビト・ヤミルさん達・タクマさん達、それからワトヤさんとカウ兄様の名前を印字して『色彩変化』で白くする。手で握り込み、ドックタグ・ピアス・小魔石サイズx1個はセキュリティーカードに。金具2つには盗難防止機能を付け『硬化』『現状維持』、残りのドックタグ5枚は予備のネックレスに嵌めて、ここにいない5人分と一緒にクワ太へと突っ込んだ。


 黒・透明・紫と来て赤か‥‥。<飛翔>アイテムは蒼にしようかなぁ、ぱく。


 小魔石5個サイズは、上空・地中からの進入も加味した結界+外から覗き込んでも荒れ地にしか見えない目眩ましのオマケ付き。これを四隅と長手中央の6ヶ所へ配置する予定だけど‥‥終わったかな?荷車からヒョコっと顔を出して確認。うん、まだ直してるね。

 再び荷車に引っ込み、預かったものにちゃちゃっと手を加える。しゃがんだときと立ったままのときの作業効率を考えると、脇と背中ってところかな?腰紐を上手く利用してパターンを変えられるように、金具をちくちくと縫い合わせた。


 出~来たっ!ふむふむ、見れば見るほど実用的且つ画期的な一品でございますな!


 全ての作業を終えた私にとって、最早ココに用はない。長居は無用とばかりに、ドックタグとネックレスをポケットに入れて片付ける。忘れ物がないか再度確認をしてから素早く荷車から降り、最寄りのポイントへ向かった。


 取り付け前に結界のラインは柵の外側ね、と追加でお願いをして柵に『結合』、取り付けた柵ごと『硬化』『現状維持』することも忘れずに!修理している皆の横を通り過ぎるときに「終わったら入り口に戻って来てね」と伝え、残りも同様に処理をして回った。




 どんどんぱふぱふ~!それでは、試運転調整を開始します!


 とりあえずそのまま柵の外へ‥‥、よしっ!次にポケットに入れたドックタグとネックレスを地面に置いてと、あれ?通れちゃったな‥‥。あ、そうか!クワ太の中にあってもダメなのね。クワ太を外して‥‥、むぎゃっ!?凄い、見えない壁がココにある!そしてどうだ、この華麗なパントマイムは(本当にあるんだけど)!


 「何してるの?」

 「し、試運転調整中です‥‥」

 「「「‥‥何の(ですか)?」」」


 う、うむ、問題なし!いそいそとクワ太を装着し、ドックタグとネックレスを回収した。じゃあ次!


 「ヤミルさん、ちょっと一緒に来てもらっていいですか?」

 「イトに着いて行けばいいのか?むぎゃっ!?な、何じゃコリャ~!」


 ヤミルさんが見えない壁をペタペタと触る。おおっ、すんばらしいパントマイムだな!面白そうに見えたのかコハクは体当たりで、ヒスイは鼻面でツンツンしながら一緒になってやっている。オビト達も指先で突いたりして、全員が確認したところでヤミルさんの手を掴んで引っ張った。そしてヤミルさんを1人外に残して戻る。


 「うわっ!?‥‥通れた。ってオイ、畑が元に戻っちまってるぞ!?それにオビト達もいねぇ!どうなってん‥‥イトも消えたぁ!?」

 「ワトヤさん、オビトとカウ兄様と手を繋いでもらえますか?」

 「‥‥繋げばいいんだな?」

 「‥‥‥‥‥」


 3人が手を繋いだことを確認して、オビトの手を握り一緒に外へ出る。よっしゃぁ~、何人いても大丈夫!


 「ふ~ん‥‥、これが防犯機能と認証装置ってこと?」

 「「「‥‥‥‥‥」」」


 説明しなくてもわかっちゃうのねオビト君。君の頭脳は一体全体どうなってるんだい‥‥?とりあえずカウ兄様にヤミルさんと手を繋いでもらい、5人で中に戻り説明タイムへと突入した。




 魔石(茶)にて土壌の改善をした結果、豊穣の土なるものが出来たのでその効果などの内容説明。植えたものの本来の収穫周期や取り扱い説明(ハーブ類は特に注意)。用途などについてはオビトが知っているので、午後にでも味見をしながら聞いて欲しいこと。そしてこれはお願いになるが、豊穣の土により成長促進されるはずなので、収穫したらそれぞれの収穫周期を知りたいと頼んだ。


 次にドックタグを4人に渡し、防犯装置について説明をする。持っていれば勿論入れるが、セキュリティーカードのように開けた人と一緒なら入れること(その場合、接触が必要)。鞄の中に入れておいても作動するが、出来れば見えないように肌身離さず着けていてもらいたいこと。ワトヤさんとカウ兄様へネックレスを渡し、ドックタグを嵌めてもらって本人以外が外せないこともやって見せた。

 話が進むにつれ、驚きを隠せず青褪あおざめていくワトヤさんとカウ兄様。だが、そうでなければ困る。なにせ大家族と多数の従業員を抱えているのだ。彼らの信用に値する人物でなければ、あっという間に露呈しちゃうもんね。


 「じゃあ一通り説明が終わったところで今後の大まかな流れについてですが、まず果物をジャンジャン売って価格破壊が起きたら砂糖を売るつもりです」

 「「「「‥‥大まか過ぎ(だ)(です)‥‥」」」」

 「え~っと‥‥筋書きとしては市場がちょっとお安くなった果物で溢れかえり、甘味が馴染み深いものになることで人々の購買威力が上昇。そこへ畳み掛けるように果物を売り続けることで半額程度にまで値崩れさせ、同時平行で着々と作っておいた砂糖を満を持して販売、ってな感じです。果物を売り始める前提条件としては、収穫周期の把握及び果物とトウキの大量確保、商業ギルドにおけるブースの設置といったところでしょうか」

 「質問」

 「はい、オビト君どうぞ」


 オビトがすちゃっと手を挙げたので、人差し指でビシっと指す。


 「‥‥前は栽培をお願いするって言ってたけど、ここまで改造したってことは畑を買い取るつもりなの?」

 「うんにゃ。安定供給を求める以上、初回の収穫以降は全部譲るつもりだよ。そんで安くしてもらう!」

 「それだとワトヤさんが大量の果物を商業ギルドに売りに行くってことになるよね?ブースが設置されたとしても、それはちょっと危なくない?」

 「ちょ、ちょっと待ってくれっ!荒れ地の整備に加えて、これだけの畑を全て譲渡するというのか!?」

 「安くするとかそんな次元の話ではありません!畑のことも含め、本来であればこちらが支払うべき代物です!」

 「2人とも落ち着けって。とにかく最後までイトの話を聞いてみようぜ、な?」

 「「‥‥‥‥‥」」

 「ありがとうございます。でもその前に1点だけ確認させて下さい。この畑の栽培及び収穫をお任せするとしたら、どの位の人手が必要になるものなんですか?」

 「土の手入れが少ない上<菜園>スキルがあるから、この程度であればカウノ1人でも大丈夫だとは思うが‥‥」

 「イト様の畑を他の誰かに任せるだなんて、父さんが許しても俺が許しません!」


 1人で出来ちゃうのかよ、<菜園>スキル恐るべし。いや、それよりもカウ兄様の意気込みが半端ないな‥‥。


 「では譲渡の件に関しては、私がこれから言う条件を呑んでいただければ‥‥とさせていただきます。勿論果物が値崩れを起こすまでは、私がワトヤさんから買い取って売りに行きますのでご心配なく。面が割れてしまうと危険な上にここもバレちゃいますし、私には『変、げふんげふんっ、秘策があるので正体不明の人物を装うことなどお手のものですから!」

 「あ、あのお方に会えるのか!?」

 「いやぁ、目立っちゃうんで別人で♪」

 「なるほどね‥‥」

 「‥‥わかった、条件を呑もう」

 「父さんっ!?」

 「あの、まだ何も言ってませんけど‥‥」

 「聞いても聞かなくても何の道答えは変わらないからな。それともドンと来いと言った方がいいか?」

 「ふっ‥‥昨日の続きってやつですか?」

 「まあ、そんなところだ」

 「「‥‥くくく」」

 「なんて仲の良さ‥‥、例え父さんでもイト様専属の座は譲りませんよ!」

 「「似たもの親子‥‥」」




 提示した条件は6つ。


 1.イト農園への立ち入りは、ワトヤさんとカウ兄様の他は基本ご家族だけとし、他言無用の上従業員にも秘密にすること(人の口に戸は立てられぬ)。

 2.立ち入る際はどちらかが必ず同行し、ネックレスはご家族であろうと渡さないこと(用心には網を張れ)。

 3.物議を醸すことになりそうな豊穣の土は、イト農園外への持ち出しを禁ずる(事は密なるを以て成る)。

 4.トウキは、商業ギルドにおける砂糖の販売価格がイト・サエキの希望する金額に達するまで、イト・サエキ及びオビト・ヨク以外への販売を禁ずる。但し、2名が許可した者を除く。

 5.果物は砂糖を、その他の作物は調味料や加工品をイト・サエキが商業ギルドへ販売するまで、イト・サエキ及びオビト・ヨク以外への販売を禁ずる。但し、2名が許可した者を除く。

 6.安くして下さい。


 「ゆくゆくは私以外の人も作れるような環境にしたいんですが、あまり値を下げ過ぎると新規参入が難しくなってしまうのが悩みの種ですかね。あ、勿論空いているスペースは有効活用していただいて構いませんよ?収穫周期の長いものや、ちょっと育ちにくくてお困りのものなんて何のそのだと思います!果物の品種改良なんて大大大、大歓迎です!」

 「なあオビト‥‥最後のは条件っつうか、ただのお願いじゃねぇか?」

 「イト的には最重要事項なんでしょうね。ヤミルさんも露店街を一緒に歩いてみるといいですよ?子供の振りをして半額まで値切った挙句、さらにオマケまで要求する抜け目のなさなんて、俺、申し訳なくて‥‥」

 「嘘付けぃっ!自分だってちゃっかり貰ってた癖に!」

 「「先に返答をさせてくれ(下さい)‥‥」」

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