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「失礼した」
眼鏡をクイっと上げながらルスカさんが言った。けど、お目々は真っ赤っかです。こっちも気まずいけど、ルスカさんの方が居たたまれないんだろうな。ここは違う話題を提供して、いっちょ盛り上げますか!
「そういえば!ヤミルさんのふりかけは何味でした?私はそぼろっていう甘辛いお肉味でしたよ!」
「てことは、やっぱりアレは肉だったんだな!俺のも甘塩っぱい感じで、ご飯だけが進み過ぎて先になくなっちまったぜ」
「似ているようだが何かが違う‥‥、ちなみに色の方は?」
「きっと色んな肉が入ってたんだろうな。確か緑と黄色と橙、それからえ~っと「そんな色の肉があってたまるかってんだ!ヤミルさんが食べたのは野菜ふりかけ!」‥‥マジか‥‥」
がぁ~ん!?4/5をハズす俺の引きって‥‥と、その場に崩れ落ちたヤミルさん。たく、ちょっと考えればわかるだろうに。その流れでメリダさんとルスカさんともふりかけ談義を交わした結果、メリダさんは鮭、ルスカさんは鰹だったようだ。
最悪おかずがなくてもふりかけさえあれば生きていける!と力説されたが、あの日のふりかけ弁当をまたもや思い出してしまい、丁重に説得させていただいた。
その流れで、今日あった一連の活動を掻い摘まんでご報告。奇しくも神託の儀と同日の3日後、発見した大穴探検に行く旨を伝えたら大喜びしてもらえた。眼鏡の反射で気付きづらいが、ルスカさんのお目々がキラキラと輝いていたのでちょっとホっとしたのは秘密だ。
幻鉱石発見の章では、半信半疑の3人に印籠の如く突きつけてみたら静寂が部屋を包み込んだ。流石はギルド員。タクマさん達が教えてくれた幻鉱石に纏わる話をやはり知っていたようだ。その後、震える指でちょんっと突く3人の姿が少し可愛かった。
そしてオーガクイーンの件では大爆笑の中、何故かメリダさんが眉を眇めていた。オーガに良くない思い出でもあるのだろうか?前回キングを見せたときには、そんな素振りはなかったと思うが‥‥う~ん。
さらに私も初耳だったが、オーガ達との戦闘でタクマさんとエジムさんが何年振りかのレベルアップを果たしたとのこと。しかしセイジさんは‥‥ふ、ふおおぉ、祝杯じゃ~!ささ、シードルをどうぞ!ほらほら、セイジさんもしょんぼりしてないでさ!
そして、メリダさん達が来る直前まで『変身』していた話をしたら
「何で元に戻っちまったんだ?」
「いやぁ、皆がどうにも落ち着かないって言うもんで」
「あら、私も見てみたかったわ」
とのご要望をいただきましたので
「そんじゃちょっくら失礼して‥‥キャ○、○○プルピン○○(省略)プンっ☆」
魔法ステッキの代わりにトレントの枝を取り出し、今度はちゃんと決めポーズ♪これをやれる日が来るとは‥‥、感無量ですたい(涙)!
「「‥‥‥‥‥」」
「初めまして、ルスカさんお墨付きの大人イトです」
「本当にイトちゃんなの‥‥?」
「はい」
「‥‥お、俺と結婚して下さいぃぃ!」
現在、ヤミルさんとエジムさんはドッタンバッタンと取っ組み合いの真っ最中。
そしてやはり落ち着かないってんで、再び魔法少女イトへと逆戻り。せめて麗しのメリダ嬢と小指を立てて優雅にお茶したかったぜ‥‥。どう見てもエジムさんが相談してきそうにもないので、オビトが閃いたという嘘を誠にする一石二鳥案を先に披露してもらうことにしよう。
「あ~、そこのオビト君。すまないが、先程閃いたというアレを頼む」
「はいはい。じゃあ‥‥そこの2人、今止めないと教えてあげませんよ」
「「らじゃ!」」
オビトの言葉にパっと離れ、すかさず敬礼する2人。大人として、いいのかそれで‥‥。
門番さん達についた嘘を実現する上で問題なのは、謎の店を開いたときに正体がバレてしまうこと。神出鬼没にしたって誰の口からも噂すら上がらないのはおかしいし、そうなるとやはり私が‥‥ということになってしまう。今は門番さん達だけだからいいものの、何かの拍子に知られたら狙われる可能性もありうると。
さらには3日前、最終的に商業ギルドを批難したまま帰宅したため皆には伝えていなかったが、善意の第三者が美味しい薬を安い値段で売れば、不味くて高い薬は全然売れなくなるのではないか?と考えたこと。そうすれば、相手も値段を下げざるを得なくなると推測したことを話した。
元々美味しい薬を作っても、どうやって売ればいいのかをずっと悩んでいたらしい(何も考えてなかった‥‥オビト、すまん)。そこへ追加された謎の店の話。解決策も出ていないのに課題を増やしやがって、と思っていたところをチャンバラごっこのために作った『変身』が全てを解決してくれたという。
「要は売り手が誰だかわからなければこちらに被害もありませんし、イトが狙われる理由も一切なくなります。あとは場所を特定されて買い占められることや、後をつけられたとき等の対処方法を予め決めておきたいですね。不安点を上げるとすれば、営業中に難癖をつけられり襲われた場合、といったところでしょうか」
「「「「「「‥‥名参謀‥‥」」」」」」
『相わかった。その護衛役、儂が承る!』
『ドンとこい!』
「なるほどね‥‥、流石は我がパーティーが誇る腹黒策士オビト!あいたぁっ!?」
「師匠、先程お願いしたご相談の件ですが」
いや、あの、このタンコブがちょこっとでもいいんで目に入りませんかね?てゆうか、<完全防御>何処行った!?
「ロック鳥の七色尾羽も含め、神託について何かいい案はないでしょうか?これは嘘を誠に出来る、師匠にしか出来ないことだと思うんです!」
「も、モチのロンだよっ!私を誰だと思っている。あのゼ○○の伝説シリーズをやり込んだイト様だぞ!えっ!?何が一番好きかって?そりゃあ君、やり込み度No.1のム○ュ○の仮面に決まっとるがな!」
「是非私めにご指導ご鞭撻の程!」
「「「「「「だからそれは何だ‥‥」」」」」」
実は神器などへと形を模したって聞いたときから、アレしかないなって思ってたんだよね!
私が提案したのは、真の勇者にしか抜けない彼の有名な剣の話。自分はもしかしたら特別なのかもって誰しも一度は思ったことありません?かく言う私もエスパー○ミに憧れてた口なんで!
ただ既に半日以上経ってるから、これから草原に突き刺しても昨日はなかったのにって話になっちゃう。となれば、あんなところにこんなものが!?って方が神託らしくなるよね?てことで、篩い落としも兼ねて草原の上空にブっ刺したらどうかと。
<土魔法>で作った土台を『色彩変化』で透明にして、『空間固定』で空中に固定。神器を刺した後に土台を『硬化』、さらには神器と『結合』させて万が一にも抜かれてしまう可能性を減らす。後は‥‥そのまま居座られても困るからガードマンでも付けておく?一見さん以外お断りって条件にしちゃって、2回目以降は弾かれるみたいな‥‥。うん、いいかも!
我も我もと行列を作られちゃった日には並ばなきゃいけなくなるし、抜いたときに囲まれるのも困る。本来だったら祭壇チックなやつを作りたいところだったが、それだと下から見えなくなっちゃうからこれも断念した末の結論である。
「但し『変身』した姿で冒険者ギルドへ納めに行った場合、そちらの方で上手いこと処理していただけるのでしたら、という話になりますが。どうです、この一石二鳥ならぬ一石三鳥な案!」
「「「「「「‥‥迷参謀‥‥」」」」」」
「よせやい!照れるじゃねぇかっ!」
『ぴかいちー!』
『いやはや、恐れ入った』
「神器はどうするつもりなの?」
「それなんだが、こんなんでどうよ?」
クワ太から剣を数本取り出して並べる。
「いやぁ、思いっ切り忘れてたんだけど、よく考えたらお宝いっぱい持ってたんだよね!」
「そういえば、キングの所で宝箱を見つけたって言ってたっけ」
「「「「あっ!?」」」」
「ああ、ギルドカードのときの」
「‥‥お前達、確認していないのか?」
「「「「「些細な事だったんで‥‥」」」」」
「‥‥そうだな」
「イトに任せとくとまた忘れそうだし、ついでに確認しておこうか」
「ら、らじゃ~!」
2:製作材料(前面右)の所から銀貨・金貨・白貨と古代金貨・古代白貨などのお金、宝石・魔石・鉱石に武器・防具、それから宝飾品をせっせと出していく。タクマさんとセイジさんは武器と防具を、メリダさんとヤミルさんは宝石と魔石と鉱石を、ルスカさんは宝飾品を、エジムさんは古代金貨・古代白貨をそれぞれ確認している。
普通の硬貨に関しては、オビトとコハクとヒスイが纏めてくれたものを5:お財布(前面下)へと再び戻した。おおぅ!何か現金化しないとピンチだったお財布が一気に潤っちゃったぞ!締めて131,983,000ギルの儲け‥‥、に、2億6千万円っ!?思わずクワ太を抱え込む。
「幻鉱石を持ってる癖に何を今さら‥‥」
「そんなこと言ったって、宝くじで300円以上当たったことがない家庭で育ったんだから仕方ないでしょ!」
「それよりこの宝石は?」
『きれー』
『光っておるな』
「それよりって‥‥鉄礬柘榴石と蒼玉だね」
「イト‥‥この宝剣の名前、わかるか?」
「右から『ガンバンデイン』『クラム』『フロッチィ』『レーヴァティム』ですよ」
「‥‥‥‥‥」
「イトちゃん‥‥この防具の名前、わかる?」
「左から『アギレウスの鎧』『バデスの兜』『アイアズの盾』『ウィーザルの靴』ですね」
「‥‥‥‥‥」
ありゃ?剣もそうだけどいつの間にか<鑑定>出来るようになってるや、流石はLv9!
「ヤミル、この魔石の色って‥‥」
「黄色・橙・青・水色・赤・緑‥‥だよな‥‥?」
「あ、青と水色は今日池でも見つけましたよ?」
「「‥‥‥‥‥」」
「私の記憶が正しければ、これは行方知れずの『微笑みはあの世の調べ』と『夢見がちな貴婦人』‥‥」
「へえ、有名なやつだったんですね」
「‥‥‥‥‥」
「古代硬貨をこの手にする日が来ようとは‥‥」
「じゃあ、あげましょうか?」
「‥‥‥‥‥」
答えてるのにどうして皆黙っちゃうんだ?とりあえず確認もしたことだし、相談して名前持ちと珍しくないもの以外は売っちゃいたいかも。っとその前に
「あの~、つかぬ事をお聞きしますが、この宝箱のお値打ちは如何程でございましょうか?この年季が入っていてそこいらに打ち捨てられたような宝箱こそ、一番の掘り出し物だと思うんですが!私が推測するに「「「「「「0ギル」」」」」」‥‥マジすか‥‥」
「どう見てもオーガの手作りっぽいもんね。宝箱は女のロマンなんでしょ?売らないで自分で使えばいいんじゃない?」
「ふ、ふ~んだ!言われずとも元よりそのつもりよっ!」
まさかの0ギルとは‥‥、幽霊船にあるような木製だからダメなのか!?私としては開けるときのこのギギギってのが気に入ってるんだが、‥‥まあいいや。売れるものは売りたいことを伝え、売れなさそうなヤバいものだけを宝箱へ戻す。さっき聞かれたものは殆ど宝箱行きとなり、現在皆で覗き込んでいる状況だ。
「どの剣がいいですか?」
「う~ん、全部名のある剣なんだけど、それが逆にダメなんだよね」
「神器となるとな。さて、どうするか」
「イト、この『クラム』のLvはいくつだ?」
「8ですね」
「‥‥試しに作り替えてみねぇか?欲を言えば、宝飾を少し変えてもらいてぇんだが」
「「「なるほど!」」」
「イト、出来そう?」
「そうだなぁ‥‥」
『クラム』を手に取ってまずは<分析>。
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[クラム]
古から伝わる選定の宝剣
〈効果:STR+10・VIT+10・AGI+10・INT+10・DEX+10〉
〈製作ボーナス:切れ味良・勇者の称号〉
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選定の石+アルプの木+グリフォンの革+金剛石
作成条件:細工・鍛冶・錬金Lv8
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なんとっ!?本当に選定の宝剣だったのか!というか、あんなオンボロ小屋によくぞここまで集めたもんだよね。もしかしたらあの小屋、先祖代々受け継がれる古の小屋だったりした?
鞘には彫刻が施されているが全体的にザラついており、埋め込まれている石は1つだけ。その選定の石も年月を重ねたせいか薄汚れてくすみ、僅かに煌めく程度だ。とにかくこの石が重要だってことはわかった。
うん?柄に使われているアルプって確か林檎じゃなかったっけ?それにしても、この柄に巻かれた革がグリフォンものとはね‥‥ちょっとカビが生えてる。鞘と剣に使われている金剛石は、名前からすると多分アダマンタイトってところか。
ザラつきが残っていないか指の腹で確認しながら、柔らかめの布で優しく丁寧に磨く。滑らかになりかつての輝きが垣間見えたところで、剣身を確認するために鞘から引き抜いた。へえ、案外錆びていないもんだな。
「「「「「「「ぬ、抜いた‥‥」」」」」」」
「えっ!?‥‥あ、そっか。抜けたら勇者だって私が言ったんでしたっけ?だ、大丈夫ですよ。あれは迷信みたいなものですし、そもそもまだ偽装工作していないんで!じゃなかったら私も抜けませんよ。残念ですけどこの選定の石、古過ぎてもう効果がないみたいですね?ほら、皆さんも試してみて下さいな」
そして試した結果、誰にも抜くことが出来なかった‥‥嘘でしょ‥‥。
「「「「「「‥‥‥‥‥」」」」」」
『コハ、ぬけなかった‥‥』
『儂もだ‥‥まだまだ精進が足りぬということか』
「やけに真剣だと思ったら、2人とも本気で抜くつもりだったんだ‥‥」
「ま、まあ一応女神なんで抜けたってことでいいですかね?いいですよね?」




