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うぷぷ。皆様、お聞きになりまして?美女ですってよ、BI・JO♪
「あ~、やっぱりイトちゃんはこうでなくっちゃ!」
叩きのルスカさんが言う位だ。かなりのもんだと思っていいだろう!
「凄くわかります!僕達、知らないうちに癒やされていたんですねぇ」
痩せてあと数年したらああなるのか‥‥、こりゃあ稀代のモテ子も夢じゃないかもよ?わははははっ!
「この丸っこいのが一番だな」
今なら勝てる(『変身』すれば)!切実にクイーンへリベンジマッチを挑みたい!
「お前達、他に言うことがあるだろうが‥‥」
そして教えてやるのさ、諦めたらそこで試合終了だって!私が諦めずに継続している毎日の牛乳と、背が伸びるという都市伝説のジャンプが実を結ぶ日はきっと来る!
『おっきかった!』
しかしこの俵肉ともサヨナラしなきゃいけない日が来ると思うと、少し物悲しい気持ちになるなぁ。
『儂もやってみたい‥‥』
そしてエの付く人はロリコン確定だ!‥‥あばばばば!?早く大きくならなくっちゃ!
「まあイトですし、褒めたところで調子に乗って暴走するだけですから。それより俺、嘘を誠にする一石二鳥の案が閃きました」
「「「本当か(に)?」」」
「一応美人だとは思ったんだな。危うくお前達の美的感覚を疑うところだったぞ‥‥、ところで何のことだ?」
「おっ!?キタコレ!お姉さんにも教えて頂戴な!‥‥ん?ルスカさん、今私のことを呼びましたかな?」
「聞いていないようで聞いてるんだ‥‥。その前に、さっきのやつは何が目的で作ったの?」
「え?ヒスイとチャンバラごっこをしようと思って」
『儂と?』
「「チャンバラごっこ?」」
「「「ああ、あれか」」」
『‥‥コハもちたい』
「勿論コハクも一緒だよ。さっきも言ってたけど、ピザ回しのときも背負い投げのときもヒスイがやりたいって言ってたから作ってみたんだ。『変身』後の服がまだ出来ていないから、それが出来たら色んなことを一緒にやろうよ!
あっ、その代わりと言ってはなんだけど、私のお願いも聞いてくれないかな?大丈夫、そんな大したことじゃないよ?ちょこっと『変身』して欲しいやつがあるってだけで、ちゃんと絵に描いて事細かく説明するからさ!ぐふ、ぐふふ‥‥」
『姉上‥‥忝い』
「「「「出た、ヤバいやつ‥‥」」」」
「俺の分もある?」
「あたり前○のクラッカー!勿論用意させてもらっているとも。だって君と僕とは副リーダーとリーダー、総司令官と最高司令官、名参謀とタンコブの仲じゃないか!」
「ねえ、いつからタンコブそのものになったの?」
「「こんばんは」」
オビトの閃きは食後の楽しみにとっといて、腹ペコ軍団が全員揃ったので晩ご飯の準備を再開する。急拵えの<火魔法>コンロと<火魔法>鉄板、貸してもらった屋台サイズの鉄板と<土魔法>の土台で作ったにしては中々の出来だ。コンロでくつくつと煮え始めたミルフィーユ鍋、鉄板では生姜焼きとお好み焼きと回鍋肉がじゅうじゅうと音を立て、仕上がり直前のいい頃合いである。
「晩ご飯のメニューは、オーガ肉と野菜のカレー・カツ丼・豚汁・角煮・生姜焼き・お好み焼き・回鍋肉・白菜と豚バラのミルフィーユ鍋とご希望通りのオーガ肉尽くしにしました。
カレーとカツ丼は食べたい人だけご飯に掛けて下さい。オーガ肉の豚カツもありますので、カツカレーにしたい方はご遠慮なく!鍋はつけダレを何種類かご用意しましたので、お好きなものでどうぞ。
生姜焼きとお好み焼きと回鍋肉は‥‥「じゅわあ、じゅわわあぁ~!」これで出来上がりです。まだたくさんありますから、どんどん食べて下さいね。お酒はワインの他に、シードルという林檎のお酒を用意しました。メリダさんには、飲んだ感想をいただけると嬉しいです。では、いただきます!」
「「「「「「「『『いただきます(ちゅ)!』』」」」」」」」
「ど・れ・に・し・よ・お・か・な?よし!俺はこのお好み焼きってやつから食うぞ!ふぁっちぃ!!」
「じゃあ僕は回鍋肉から食べよ!‥‥お、美味しい!このタレめちゃくちゃ美味しいよ!」
「このお鍋、サッパリしていて美味しい!それにこのお酒も程良い甘さでとっても飲みやすいわ、イトちゃん」
「よっしゃ、掴みはオッケー!」
「オーガ肉の生姜焼きは美味しいなぁ!あ、イトちゃん、カツ丼一丁!」
『あちち!うま!かーしゃん、カレーいっちょ!』
『焼きたては最高だのぅ!姉上、儂もカレーを所望する!』
「この角煮というのは絶品だな‥‥、付け合わせの卵がまた何とも言えん。私はどちらも食べたことがないので、カツ丼とカレーの相掛けに豚カツ載せで頼む」
「おぉっ!?流石はルスカさん!オムハヤシカレーならぬダブルカツ丼カレーと来ましたか。教えるまでもなく、ご自分で編み出されるとは恐れ入った‥‥」
「むっ!私だってここに角煮と生姜焼きと回鍋肉を載せたオーガ尽くし丼を作っちゃうもんね!」
「止めろ。俺は食ったことのねぇカツ丼にするか。しかし、食卓の上で煮たり焼いたりってのは合理的で中々面白いな」
「自分で焼くのが楽しい上に熱々ですし、何で今まで思いつかなかったんでしょうね?イト、俺もカツ丼で」
「「「相掛け一丁!」」」
はい、はいっと。これで一段落したかな?然らば某も、あ~ん。んんっ!?角煮旨ぁい!このコク、この深み、この柔らかさ‥‥溶けちゃった、堪りませんなぁ!回鍋肉は?ぐわぁ~、濃厚且つ絶妙なるタレの旨味による味のビックバン。コイツは間違いない旨さだね!ご飯が進み過ぎてヤバいっス。お鍋も久し振りで嬉しいぞ!ほわぁ~、落ち着く~。
あれま!?鉄板物が早くも品薄状態だ。相変わらずの食いっぷり、これで太った人が1人もいないってんだから羨ましい‥‥。あっ、食べてないのにお好み焼きがもうない!
「焼けた?」
「まだ生だ、暫し待たれよ」
『やけた?』
「今答えたばかりだ」
「焼け「エジムさんが数枚単位で食べちゃうからなくなっちゃったんでしょ!」た?‥‥。だって、美味しくてつい」
「全く困ったもの「ルスカさんが残りを全部食べちゃったからなくなっちゃったんでしょ!」だ‥‥。すまん、旨くてつい」
「お前達2人、今日はもう手出し無用だ。いいな?」
「「‥‥嫌だ」」
「コハク、ヒスイ」
『『いいな?』』
「「‥‥はい」」
「「「やった~!」」」
「イト、回鍋肉も焼いてね」
「あいよ~」
鉄板の半分以上がお好み焼きに占領されているのを見ると、縁日を思い出すなぁ。漂う匂い、野外独特の雰囲気についふらふらっと誘われ、夜遅くに食べてしまう高カロリーなアイツら。やっぱり匂いって大切だよね。なんてったって焼き肉・焼き鳥・鰻・お蕎麦・お煎餅屋さんの前を歩くと、涎が勝手に出てきちゃうんだからさ!
ギンガさんの屋台メニューは、匂いで食わせるをコンセプトにしてみようか‥‥?うん、いいかもしれない。焦げた醤油やソースの匂いなんて、立ち止まらずにはいられないもんね!
‥‥私はここに積年の恨みを見る。旨い、旨いと言いながらこの7人、もの凄い量を平らげおった(お替わりすること3回)。盛大にうるうるしちゃってるイケてる親父達を一切視界に入れることなく頬張り尽くす面々。さらに私がギンガさん達の分を確保したせいで、きれいさっぱり鉄板物がなくなるという始末‥‥。
その反動で他の料理に魔の手が伸びた結果、豚汁とカレー以外な~んも残らんかった。というのは嘘で、残っているけど出さなかった。どう見たって腹八分目ならぬ腹二十分目、この人達相手に匂いで食わせるのは危険極まりないと悟った晩ご飯だった。
「遅くなったが、何も問題はなかったか?」
「聞くのが本当に遅過ぎですよ、マスター。まあ晩ご飯の方が重要ですが、問題大ありです。本日王族により執り行われていた女神様方のご祈祷式にて、神の息吹と共に神託を授かったという噂で城下町中が上へ下への大騒ぎとなっています。それに伴い王族より冒険者ギルドへ、神託の儀に用いるロック鳥の七色尾羽及び空から舞い落ちた神託入手依頼が来ました」
「「「『ロック鳥‥‥』」」」『とりしゃん‥‥』
ほほう、彼奴のことか。ドテっ腹に空いた風穴のインパクトが強過ぎて、尻尾なんて気にもしてなかったよ。てゆうか、神託ってお告げじゃなくてものなんだ。へぇ~、面白いな。
「各国のギルドに問い合わせましたが、運の悪いことに現在の在庫は0。俺も伝手を頼ってみましたが全滅でした。3日後の神託の儀に間に合わせるために、神託入手と併せ本日付で緊急クエストを発布しました」
「私達はギルド内にいたため見逃してしまったが、お前達は見たんじゃないか?オビト」
「神の息吹を、ですか?」
「そうだ。商業ギルドに来た商人達の話によると、女神様方が祈りを捧げた瞬間、地上より突如現れた閃光に呼応し、城へと一筋の光が差し込んだらしい。その後、空から舞い落ちるものを参列していた大多数が見ていたことから、神器などへと形を模した神託が降されたという騒ぎになっているのだ」
「「「『ロック鳥‥‥』」」」『とりしゃん‥‥』
デカいからなアイツ。でも、光が降り注いだのは草原だよ?都合のいい様に解釈し過ぎでしょ‥‥それよか、非常にヤバヤバな予感しかせん。
「くどいぞ。ロック鳥ではなく神託だと言っている」
「いえ、ロック鳥です」
「「「‥‥ま、まさかっ!?」」」
「ご想像の通りです。全ての元凶‥‥いえ、犯人は「「「イト(ちゃん)だ!」」」『姉上だ!』『かーしゃんだ!』‥‥です」
「アハ、アハハノハー。ゴショウカイニアズカリマシタ、イト・サエキデッス!」
バチコンっ!と、両目閉じ。あぁ、猛烈な睡魔がっ!?このまま眠ってしまいたい!
「どうするんですか‥‥、緊急クエスト発布しちゃいましたよっ!?」
「どうするって言ったって、発布したのは私じゃないし」
「きったねぇ!あっ、明日俺休みだわ」
「明後日は私が休みです、マスター。という訳で、後のことは宜しくお願いします」
「突然だが今日休んだついでに、私は明日から3日間の休養に入ろうかと思う。何年分も貯まった休みを消化しろと常々言われていたからな。丁度いい機会だろう?」
「「「もっと働け、この怠け狸がっ!」」」
「俺達は空を飛んで高みの見物と行くか、セイジ」
「ですね。折角ですから、おつまみでも持って行きましょうか!」
「「「‥‥ま、まさかっ!?」」」
「ふっふっふっ、そのまさかさ!我々ヒヨっ子トリオは師匠の教えの元、初日に偉業を達成した自慢の弟子達なんだぞ!凄いだろう、えっへん!」
「「ちょっと可愛いのがまたムカつく‥‥」」
「‥‥‥‥‥」
あれ?肝心のルスカさんからは反応がないぞ?と思ったら、驚愕のあまり見開かれたルスカさんの目から悔しほにゃららが‥‥やっぱりこうなったか。
「見た目は大人、空を飛ぶことに関しては子供のルスカさんになんて言い方するんだよっ!エジム、お前は破門じゃあ!!」
「し、師匠、破門だけは、破門だけはどうかご勘弁を!不肖エジム、これからは心を入れ替え邁進致します故、何卒、何卒ぉ~!」
「では今後、この件に関して揶揄するでない」
「はい!」
「休まず仕事に行け」
「わかりました!」
「「イト(ちゃん)、ごにょごにょ‥‥」」
「ふむふむ、緊急クエストも何とかしろと‥‥どうだ?」
「弟子として光栄の至り、合点承知の助!」
「それから、私のことは諦めろ」
「え~、師匠の頼みでもそれはちょっと」
「オビト、除籍手続きを頼む」
「何それ‥‥。あ~、はいはい「なるべく善処しますです、ハイ。話は変わりますが、師匠に折り入ってご相談が!」」
なぬっ!?厄介ごとはごめんだぜ?とゆうか此奴、やけにあっさり承諾したと思ったら明らかに私を巻き込むつもりじゃないか!と、その前に
「ルスカさんも3日後きっと飛べますって!今日の屁のカッパ大作戦にも負けず劣らずなやつを、特別にルスカさんにだけやってあげますからね!ね?」
「「屁のカッパ?」」
『いいなぁ』
『羨ましいのぅ』
「「「「碌なもの来た‥‥」」」」




