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腐るから持っていけと言われ、まだ鞄を持っていない父上達が倒したオーガをさらに11匹貰ってしまった。口の周りを血だらけにしたまま、嬉しそうに渡されたら断れませんて‥‥。そして今度こそ別れを告げ、桃源郷を後にする。また来るね~!
「池1号」までの赤表示を次々と屠る。相手の位置が遠目でもわかっているから奇襲攻撃もいいところだ。これで24本めっと!ふふん、枝を動かすことすら許さんよ?では、25本目へいざ参る!
「これもそうだけど、今までのも本当にトレントなのかい?ただの木だって言われた方がまだしっくりくる‥‥」
「‥‥動く前に倒しちゃってますからね」
「オビトどうだ?」
「間違いありません、これで24本目です」
『ちゅぎ25?』
『正解だ。コハクはいくつまでわかるのだ?』
『うーと、100までおちえてもらった』
「「「「何気に英才教育してる‥‥」」」」
コイツで‥‥「オビト、次で何本目?」「61本目」、おりゃあ~ラスト61本目ぇ!地図に疎らに点在していた赤表示が、突き進んで来た範囲だけものの見事にない。自分で言うのも何だが、素晴らしい地図だなお前って奴は!
慌ただしく出て来たから、さっき検索したままになっていて超カラフル☆気になるクイーンはというと、取り巻き達と一緒にランセクト方面へ移動している。なるほど、次の港はそこなのね。次回相見えるときまで、アッシー君とミツグ君をしこたま増やしてきてくれたまえ!
おろ?「池1号」のど真ん中に紫表示がある。青スライムかな?いや、そもそもアイツはLv4だし水辺にいるはずだから違うな。と、すればだよ‥‥
「何してるの?」
「ん~、釣りの準備。‥‥出来た♪そんじゃ、ちょっくら行ってくるわ!」
「釣りじゃないの!?」
「池1号」の真上まで飛んで来た。皆が水辺に佇んでいるのが何とかわかるギリギリの距離だ。まあ、これだけ離れてたら何かあっても大丈夫だね。モクの糸を『硬化』した釣糸に蒼鉱石で作った釣り針、餌には魔物が大好き甘いもの、しかもそれがLv10の飴だったとしたら?ゴキ〇〇ホイホイならぬ魔物ホイホイの出来上がり!
これを、おいそれと外れないように『結合』すれば‥‥、我に死角なし!ガントレットにぐるぐると巻き付けて、それ行けぇ!ぽちゃんっ。
池底までの距離は前回の調査でバッチリだから、表示のある上空をふよふよと水平に漂う。う~ん、この仕掛けに安易に引っ掛からないとは中々頭がいい奴なのかも?ちょっと引き戻して餌を換えてみようかな。
「およ?」動かないぞ‥‥てことは引っ掛かったか?我慢してたけど、これを逃したら二度とお目に掛かれないことに頭がいいからこそ気付いたな?ならば、かなり手練れの可能性あり!自分の力に自信があるから、多分捩じ伏せる気で来てる。ふっふっふっ、この勝負受けて立ぁつ!
「ふんっ!」‥‥動かん。「ふんぬぅ~!おりゃあぁぁぁぁ~!」‥‥ヤバいやもしれん。こうなったら人様の前では恥ずかしくて出来ない、あの掛け声で行くしかないか‥‥。
「うんとこしょ、どっこいしょ!」
おっ!?ちょこっとだけど動いたぞ!わかってはいたけど、やっぱりこの掛け声は一味も二味も違いますなぁ。「せ~の、うんとこしょ、どっこいしょ!まだまだ魔物は釣れません」なんちって!
「釣りって掛け声が必要なものでしたっけ?」
「いや、イトだけだな」
「歌に通ずるイケてる掛け声だね、イトちゃん!」
「セイジ、イトちゃんの歌を聴いたことがあるのか!?」
「エジムさん以外は皆聞いてますよ。ね~、コハク~!」
『コハ、ちらない‥‥』
『儂も知らぬ‥‥』
「えっ!?そ、そうだったっけ?2人ともごめんね。そんなつもりじゃなかったんだよ‥‥」
「幼気な子供と美中年に対して何て酷いことを、よよよ‥‥」
驚きのあまり黙って聞いていれば、この人達は一体全体何をしに来たんだ?元の大きさに戻って<偽装>も解いたヒスイにギュウギュウに跨がった面々、ぷっ、ちょっとウケる。「うわぁっ!?」油断も隙もない、気を緩めると即座に持って行かれる!
「ここは危ないんだ、笑わせに来ただけならすぐに帰れ!」
「バカじゃないの?危ないって言われて帰る訳ないでしょ?」
「まあ、そういうこった。手伝うぞ」
「私も!」
「僕にも名誉挽回させてよ!」
「手伝うって言ったって‥‥」
ここは地上じゃないんですよ?と、断ろうとした瞬間に3人がヒスイから降りた。‥‥降りたぁっ!?
「どんなもんだい!下が池なら落ちても平気だからね」
「浮くだけだったらもう問題ねぇな」
「師匠の教えは史上最強です!」
史上最強‥‥、なんて心に染み入る言葉なんだ。それにしたって弟子達の成長が著し過ぎる。考えられる要因としては<育成>ってところか‥‥。従属以外にも効果があるのは正直ありがたいぞ。これは師匠として弟子の思いに応えてやらねば!
「いいかテメエら、耳の穴かっぽじってよぉ~く聞けよ!私の後ろに1列に並んで引け、間違っても前になんか出るんじゃねぇぞ!ヒスイ、お前は最後尾の奴を咥えて引くんだ!」
「「「『おう!』」」」
「お~、頑張れ~」
『がんばれー』
「そこのオビト!嘘でもいいから、ちっとぐれぇ冒険者の気概を示せよっ!」
「だって俺、飛べないんだもん」
「可愛く言えば許されると思いやがって!これだから顔のいい奴は‥‥」
『だってコハ、とべないんだもん』
「しょ、しょうがないな。コハクはヒスイから絶対に離れちゃダメだよ?」
オビトの視線がグサグサと刺さる。さっきまでシリアスな展開だったのに、気が付けばいつも通り。忘れてるかもしれないけど、今戦ってる真っ最中っスよ?現状、双方の力が互いに拮抗した五分と五分の状態が続いてるんだよね、こう見えて!
「せ~の、で行くぞ!」
「「「『おう!』」」」「『おー』」
「‥‥せ~の、お~えす「「「「『うんとこしょ(ちょ)、どっこいしょ(ちょ)!まだまだ魔物は釣れません(ちぇん)』」」」」‥‥。す、すとっぷぅ~!?」
「どうしたのイトちゃん?」
「実際どうかと思ったが、やってみると結構力が入るもんだな」
「親分、最高の掛け声ですね!」
『これは良いな!』
『たのちー!』
「一言一句間違っていないはずだけど?」
「だからだよっ!後生だから最後の台詞は言わないでくれぇ!」
それにしても思いの外手強い。このままじゃ埒が明かないし、あまり続くようだとこっちの方が先にバテちゃうぞ?う~ん、この状況を打破するいい打開策はないものか。こう巨大魚の一本釣りのような‥‥、そういや綱引きとか野菜の収穫みたいになってたけど、釣りだったなコレ。
「これから一気に勝負を決めます。いいですか、絶対、ぜ~ったいに手を離さないで下さいよ!」
「「「「嫌な予感‥‥」」」」
『心得た!』
『あい!』
「‥‥コハクはヒスイのお口の中に入っていなさい」
『コハ、おいちくない‥‥』
『皆、手が空いておらぬが故言っておるのだぞ?儂が可愛いコハクを食べたりなどするものか、さあ参れ』
『あいあいちゃー!』
パカっと開いたヒスイの口にコハクがちょこんと身を置く、こんなときじゃなければ激写もんの光景だな。ヒスイが口を閉じたことを確認して、皆に目で合図を送る。全員が頷き、私に掴まっていたタクマさんはさらにキツく力を込めた。
「未だ見ぬ好敵手よ、貴様の命もこれで終わりだ。大人しくお縄に付きやがれ!『舞○○』マッハ10!」
「「「「ぐっ!?」」」」
一瞬で急停止、したら目の前を下から上へ畝りながら、黒い物体がダバダバダバダバっと身体をはためかせ通り過ぎて行った。なっげぇ~!?
「わわっ!?ふおぉぉぉ~!」釣り糸を咥えたままの大池蛇?いやコイツは‥‥。止まるすべを持たず、ひたすらに天を目指し突き進む奴に引き摺られ、こちらが釣り上げられたようになる。釣ったのはこっちだっちゅ~の!
あまり高度が上がると目撃される危険もあるので、釣り糸を通して奴ごと『舞○○』で覆い強制的に止める。水から離れたお前は最早私の敵ではない‥‥名勝負をありがとう、さらばだ!
「超巨大鰻獲ったどぉ~!」
「「「‥‥シーサーペント‥‥」」」
「ちなみにLvはいくつなんですか?」
「「「8です‥‥」」」
鰻の大きさがこの位だとするでしょ?で、目の前に蜷局を巻いているのは少なくとも体長100m・直径3mはある。てことはですよ、何人前ですか?ただ1つ言えることは、一生鰻に困ることはないってことさ!くふふのふぅ~!
『にーたん、これにょろーでぬるー』
『このような足触りは初めてだのぅ』
『それ、つるっとなー♪』
『儂もやるぞ!』
君達、それは滑り台でもウォータースタイダーでもないぞ。しかし、人の振り見て我が振り直せとは良く言ったものだ。私っていつもこんな感じなんだな‥‥、すっげぇ楽しそうじゃんか!
「ひゃっほぅ!」
「目を見開いて絶命してるの、怖くないんですかね?」
「セイジは怖いのか?」
「こ、怖くないと言ったら嘘になります‥‥」
「だろうな、俺もこえぇよ。例外はアイツら位のもんだ」
「このヌルヌル癖になるぅ~!」
「あ~!?エジムさん順番守って下さいよっ!」
「次は俺の番だからね」
あ~、楽しかった!水着姿になれない者としては、嬉しいことこの上ない娯楽でやんした!皆纏めて『清浄』!
シーサーペントをオビトににゅるにゅるっとしまってもらい(ちょい感動!)、本日のラストミッションである池底探検へ繰り出す。なお採取し易いように、『空間固定』の範囲は前回の2倍である約半径10mとした。出来るだけ<地図>を埋めたいので、前回通っていない場所を歩き採取していく。珪砂は『空間固定』でごっそりと、蘇生草も見つけたものは確保する。
池底初体験のエジムさんは大興奮!興味津々過ぎてうっかり範囲外に出てしまいズブ濡れになったかと思えば、池底に寝転んでみたりと忙しない。蘇生草があると知ってからは、目に付く全ての雑草を駆除するとてもいいオジさんになった。
奴が潜んでいた場所を一目確認しに、蛇行しながらど真ん中まで来てみて大正解!あのヌルヌルボディーで戦うために、池底へ身体を潜り込ませてたんだろうね。そしてドッタンバッタンと暴れた結果、掘り出すまでもなく魔石と鉱石に宝石がゴロゴロと転がってますがな!
鼻歌交じりで拾って、拾って、拾いまくる。おっ、魔石(茶)見っけ!今2つ持ってるけど、前に見つけたときはレベルが足りなくて<鑑定><分析>してないままだったよ。どれどれ?
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[魔石(茶)]
魔力が宿る石
〈効果:植物増強・成長促進〉
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小魔石(茶)x20個
使用条件:錬金Lv9
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こ、これは‥‥、まさに明日欲しかったものではないかっ!?ぐっじょぶ鰻!
ふぅ、これで目に見えるものは粗方拾ったかな?コツンっ、歩いていたら何かに躓いた。何だろう?手をズボっと突っ込み引っこ抜く。わわわっ!?すんごい綺麗な鉱石発見!
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[幻鉱石]
極稀少な鉱石
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使用条件:鍛冶Lv9
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‥‥オリハルコンげぇ~っと!!とくれば、ここ掘れワンワンするしかねぇべさ!




