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な、何ということでしょう‥‥、いつの間にかLv9のスキルが5つもあるってばよ!意図して上げようとしなくて3日間でこれってことは、本気で上げに掛かったら即効カンストしちゃうんじゃないの?
薬を作る手前好都合な展開ではあるけど、うっかり不老不死の霊薬なんぞ作っちまった日にはゲンコツがいくつになることやら‥‥うん、黙っとこ。あっ、でも<料理>だけは確認しときたいな、キャラメル食べてないし!
キャラメルを取り出し<鑑定>、そして食べる。美味しい!からこそダメだった、これでLv10確定。となれば<家事><習得>を<分析>、‥‥これも確定だ。まあ、いっか!大は小を兼ねるって言うし、この類い稀なるセンスを以てすれば余裕のヨっちゃんさ!
しかし、肝心の<索敵>は達人級のLv8か。‥‥達人ともなればそろそろ魔物を指定出来てもいい頃合いでは?むむっ、何か閃いちゃったぞ。だって達人だもん!
地図を出し現状を確認する。今は地図に打ったマーカーが4つとコハクが表示されており、その他は以前と変わりなく行ったことのない所は空白のままだ。これに<索敵>と<感知>を合体!させたら地図に魔物が表示され‥‥た、よし!ヒスイと父上と母上も表示されたからバッチリだね。
表示色は緑か。これを目的の魔物だけ色を変えて表示させてみるには‥‥、検索バーを作ってっと。え~っと、表示色は赤で!トレントで宜しくお願いしまぁ~す。それ、ポチっとな!
「まーべらす!」
「良かったね」
「「何故意味がわかる‥‥」」
「悔しいが私はまだまだということか」
イトと書いて天才と読む、えっへん!こうなりゃトコトンやっちゃうぜ!
まず検索バーを5つにして、それぞれの表示色を赤・黄色・橙・青・紫に設定する。試しに黄色の検索バーにスレイプニルでポチっと、成功!これって名前を知っていればいくらでも検索出来るけど、知らない場合はどうしようもないな。う~ん、実験してみるか。
橙の検索バーにトング、青の検索バーにもトングでどうなる?おぉ~、マーブル!でも見づらいから、せめて半分ずつになってくれ!で、青の検索バーを一旦消去。これを豚っぽいのにしたらどうだ?「じーにあす!」とくれば、ランク指定も出来るっしょ!それじゃあ紫の検索バーにランク5以上で?おぉ~、3人がストライプ!でも君も見づらいから、せめて半分ずつになってくれ!
そういえば人は表示されていないけど、マーカーを付けてもらったときは地図に表示されたよな。必要としていないから表示されないだけで、<感知>があるから多分表示出来るとは思うんだけど、流石にちょっとね‥‥。‥‥ちょ、ちょっと出来るかどうか試すだけ‥‥、出来ちゃった‥‥封印っ!!
ち、<地図>は確か150SPだったよね。この件は墓場まで持って行く極秘事項と致す!
あと試したいのは‥‥、地図に表示されているヒスイにマーカーを打った場合、コハクと同じような表示になるのかどうか、かな?マーカーをプスっと刺してヒスイっと。「ヒスイ、この辺りを少し走ってみてくれる?」
‥‥多機能過ぎて怖い。おっと、忘れる前に父上と母上にもマーカーしとこ。他にやり忘れはないかな?敢えて言うなら、検索しないと何の魔物かわからないのが唯一のネックってとこか。この緑のをポチっとしたらわからないかな?ここから一番近い奴は‥‥
「出たっ!けど、オーガクイーン!?」
「「「っ!?」」」
「キング、奥さんいたんだね」
『およめしゃん?』
『母上とどちらが強いかのぅ』
「オーガキングにさえ妻がいるなんて‥‥羨ましい」
「ちょ、ちょっと待ってよ!クイーンだからって奥さんとは限らないでしょ!?」
「お前達、問題はそこじゃねぇだろ‥‥。何で近くにいるのがわかったんだ?」
「<地図>を合体させてポチっとしたらわかりました」
「「「「全然わからない」」」」
よく見ると、桃源郷の周りを取り囲むように魔物が点在している。全部違う種別の魔物だと思ってたから気にしていなかったけど、‥‥ビンゴ!
「父上、もしかしてだけどオーガが頻繁に襲って来てたりしてた?」
「ぶる、ぶるぅ!」
『気にすることはないぞ。オーガ如きが徒党を組んで来ようとも全て返り討ちよ!と申されておる』
「ぶるぅ」
『姉上の料理には到底及ばぬが、食うに困らず大変助かっておると母上も申されておるぞ』
母は強し!完全に食糧扱いしちゃってるよ(私も人のことは言えないけど)‥‥。
「ただそうは言っても、少なくとも300匹以上いそうなんだよね。父上達は大丈夫だって言うけど、このままじゃ心配だから半分位倒しちゃっていいかな?全滅させるには惜しい存在だし、私もオーガ肉が欲しいしさ!」
「最後の一言で全部台無し」
『カレーのにく?』
『確かにあれは美味であったな』
「「「今夜はオーガ肉尽くしを希望!」」」
「よかろう!では作戦を伝える。中央であるこの場は父上と母上で死守、私とセイジさんで12時方向、オビトとエジムさんで4時方向、タクマさんとコハクとヒスイで8時方向への先制攻撃を仕掛ける。
また、かち合いを避けるため、移動の際はそこから時計回りへと動くように。ちょっとケツカッチン気味なので、各々50匹程倒したら速やかにここへ戻って来ることとする!そんじゃセイジさん行きますよっ!ブランド豚やっほ~い!」
「えっ!?うわあぁぁぁ‥‥」
「一瞬で見えなくなりましたね」
「いいなぁ、さっきよりも断然速いよねアレ」
「うっぷ‥‥俺達も行くぞ」
『あい!』
『タクマも儂に乗れ、翔るぞ』
「‥‥‥‥‥」
はい到着!そして少し離れた所には、ビックリして声も出ないオーガクイーンがいる。マッハ3で飛んで来たから、相手からしたら突然現れたみたいに感じるかもね。
それにしても驚いたなぁ、オーガキングより断然デッカいんだけど‥‥。パっと見だけど、多分5m位あるんじゃない?誰がどう見たってクイーンの方が強そう‥‥てことはだよ、キングじゃなくてクイーンが真の裏番だったってことか!
ん?あれ‥‥?も、もしかして港港にキングがいたりして!?何でそんなことを思ったのかって?だって‥‥セイジさんに現在進行形で目がハートになっちゃってるんだもん!確実に恋多き女でしょ。だが、せめて種族の垣根は守ってくれっ!
そして現在進行形で私のことを睨んでる‥‥まるで恋敵を見るかのように。って背中に抱き着いたままだったぁ!!はわわわわっ、急いで離れたけど時既に遅し!
「ブギィ~!!ギギ、ギギャア~!」
「な、何か怒ってない?」
「怒ってますよ‥‥私に‥‥。攻撃して来ないところ見ると、確実に手下を呼びましたね」
「イトちゃん、知らないうちにまた何かしたの?」
「ぶわっかもぉ~ん!何かしたのはセイジさんの方じゃい、このオーガっタラシめが!」
「えっ!?‥‥ま、まま、まさかとは思うんだけど、僕ってばあの子のハートにロックオン?」
無言で頷くと、セイジさんが慌てて私の背中に隠れてしがみ付いてきた。あちゃ~、一番やってはいけないことをやりおってからに‥‥。しかし、どうすっかなぁ。女帝故に仲間を呼ぶこともわかったし、港港の野郎共を連れて来てくれるんだったら、非情かもしれないけどお肉確保のために生かしておきたいんだよね。探す手間も省けるし、ぶっちゃけ私どころか父上達の敵でもないしさ。
な~んて考えてるうちに続々とオーガが集まって来ちゃった。待てよ?垣根がないってことは、もしかして私に惚れちゃうオーガも現れちゃったりして‥‥。右を見ても左を見ても涎ダラダラ。惚れられても困るけど、これだけいてそれはないんじゃないっ!?
そのとき何かを悟ったクイーンが嘲るように笑った。ほほぅ、穏便に済ませてやろうと思っていたが‥‥その喧嘩買ったぁ!!しがみ付いたままのセイジさんにとある極秘ミッションを指示する。「パンパン!」ほっぺたを両手で叩いて気合いを入れた。よっしゃあバッチコ~イ、目ん玉ひん剥いてよ~く見やがれぃ!
ふぃ~、悔しくないけど悔しくて些かハッスルしちゃった!てへ♪
「ほっぺにチュウなんかさせて、何がしたかったの?」
「乙女の尊厳を守るため、売られた喧嘩を買ったまでのことよ‥‥ふっ」
「そ、そうなんだ。ところで僕の勘違いじゃなければ、何でクイーンを逃がしてあげたの?あれだけ目の敵にされてたんだから、絶対に態とでしょ?」
「やっぱり少し露骨過ぎました?でも、セイジさんに1匹も襲い掛からせなかった潔さは賞賛に値しますよ。まあ、こちらにもそれなりの打算があるので、集中砲火された件については今後もたくさんの手下を連れて来てくれれば不問にします」
「しかし、よく倒したよね。これだけの数をたった1人で‥‥」
「私としては、もう一声欲しかったところですけどね」
多分、ざっとだけど100匹ってとこ?途中から面倒臭くなって数えるのを止めたからな。クイーンも半分を超えた辺りから怯え始めて、キング予備軍みたいな取り巻きに囲まれて後方へ避難しちゃったんだよ。最後は「ギ‥‥、ギギィ‥‥」ってなもんで、セイジさんに未練タラタラのまま取り巻きに引き摺られて行っちゃった。
人間だったらハンカチを噛み締めて悔しがってたね、あれは。イト翻訳によると捨て台詞は「チンクシャの分際で‥‥覚えてらっしゃい、いつか必ず彼をわたくしのモノにしてみせてよ‥‥」って感じ?
そして2人でせっせと集めた結果、113匹という大量のオーガ肉をゲット!おほほほほっ、何度でもご挑戦あそばせ!わたくしの目の黒いうちは、家のセイジに指一本たりとも触れさせなくってよ!
「たっだいま~!」
「おかえり‥‥って血みどろだけど、何があったらそうなるの?」
「ふっ、儚い恋の行く末に壮絶なる女の戦いがあったまでのことさ。だから私は稀代のモテ子っぷりを披露してやったのよっ!「完全にやらせだったけどね」‥‥『清浄』」
「それじゃあイトちゃんがクイーンを倒したんだね?」
「「いいえ」」
「セイジが倒したのか?」
「「いいえ」」
『母上とどちらが強かったのだ?』
「戦ってはいないけど断然母上だね。実は‥‥セイジさんがクイーンに一目惚れされちゃいまして」
「「「ぷっ!」」」
「ライバル視されるは、仲間は呼ばれるは、集中攻撃を喰らうは、お肉はたんまり手に入るはで最高に楽しかったんですよ。なので再戦目的で逃がしちゃいました!」
「楽しんでたんだ‥‥酷いっ!他人事だと思って!」
「じゃあ結構な数を倒したんだ?」
「うん、113匹」
『ちゅごい!』
『やはり姉上には敵わぬな』
「「「殺戮風景が目に浮かぶ‥‥」」」
他の班はというと、オビト達が46匹、タクマさん達が52匹で合計211匹となった。これだけ減らしておけば当分の間は大丈夫だろう。クイーンの行動範囲が他国にまで及んでいるかは謎だが、残りのオーガがここから離れて行かないことを考慮するときっと戻って来るはずだ。
逃げ出す前にこっそりマーカーを打っておいたから、この先クイーンの動向は筒抜けだもんね。これぞ真のロックオン!
「そうだ。一言だけ忠告しておきますけど、クイーンは恋に生きる女なので、もし私が居ないときに遭遇したら死ぬ気で逃げて下さい。オビトも含め、皆さんもういい大人でしょうから、自分の貞操位自分で守れますよね?ふむ、案外それが『舞○○』の上達に役立ったりして‥‥。クイーンめ、中々やりおるわ!」
「流石に13歳は対象外だと思うな」
「それを言ったら、45歳だって十分オジさんだから対象外だよっ!」
「‥‥ちゃっかり自覚してんじゃねぇか。まあ、かく言う俺もオッサンだがな」
「僕の味方はコハクとヒスイだけだよ‥‥」
『コハ、0ちゃいだもん』
『儂はまだ1歳なのだ』
「‥‥‥‥‥」
女の友情は儚く薄っぺらいものだとよく聞くが、男の友情も大して変わらんな。そして私にも言わせてくれ、イトはまだ16だから!




