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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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 「あいたたたぁ、酷いよ~イトちゃん」

 「よせ、エジム、非はこちらにある」

 「もし次、同じようなことがあれば‥‥、生まれてきたことを後悔させてあげますよ?」

 「「‥‥はい」」


 指をポキポキってしたけど鳴らなかったので、慌てて眉間に皺が寄るようにして低い声で凄んでみた。こんなんじゃ服を破ることなんて夢のまた夢だな‥‥。


 「イトは切れると怖いな‥‥。俺達も気を付けようぜ、セイジ」

 「うん、危険人物だもんね」

 「その言い方じゃ、いつも危険な子みたいじゃない」

 「間違っちゃいねぇな、くくくっ」

 「投げ技も出来るんだね。それも蹴り技みたいに名前とかあるの?」

 「「「「「「‥‥ある意味危険人物」」」」」」

 「今のは1本背負いって言うんだよ。こう相手の片手を掴んで担いだら、背負うみたいにして前にブン投げるの。あれ?でも2人だったから2本背負いになるのかな?」

 『儂もやってみたい‥‥』

 『コハもー!』


 しかし殺陣といいピザ回しといい、ヒスイは色んなことに興味があるみたいだな。生まれてまだ1年、しかも人と接したのが昨日からとなれば無理もないか。ここは姉として何とか期待に応えてあげたいぞ!


 「それにしてもルスカまで急にどうしたってんだ?」

 「確かにそうですね、マスターだけならともかく」

 「俺達みたいに子分になりたいんじゃねぇか?」

 「そうそう!でも右腕左腕は絶対に譲らないけどね!」

 「それで先程の奇行の理由は何だったんですか?」


 そうなんだよ!そこが知りたいんだよ!ルスカさんまでとなると皆そう思っちゃうんだよね。珍しく口をモゴモゴさせて、言うか言わないか悩む素振りすらしてるしさ。おっ、言うのか?眼鏡をクイっと上げたぞ?


 「‥‥子供の頃からの夢だったんだ、空を飛ぶことが‥‥」

 「私もだ!何てったって馬車代がタダになるしね!」

 「「「「2人目は動機が不純過ぎるから却下!」」」」

 「それだけじゃないぞ!早いし楽チンだし、何より不法入国し放題じゃないか!」

 「「「「「この外道が!」」」」」

 『げどー!』

 『うつけ者が!』

 「コハクとヒスイまでっ!?」

 「私はいいと思いますけどね。タダより勝るものはないし、早いのも事実ですもん!それに不法入国って言うと聞こえは悪いですけど悪事を働く訳じゃないし、ザンダルクの件を考えたらこれ以上ない隠密行動が取れますよ?てことで、その折は是非ともわたくしにそのお役目を!」

 「はぁ、結局イトが隠密行動したいだけってことでしょ?」

 「おうよ!大丈夫、そのときはちゃんとオビトも連れてってあげるからさ!」

 「サラっと人のことを悪の道へ誘わないでくれる?」


 もしかしたら王城地下迷宮に行けるかも!?古代遺跡って萌える響きだよね~!聖櫃に魔聖石に聖杯、TVに齧り付いてワクワクしながら見たっけ!私もあんな冒険がしてみたい!遺跡ってだけでも心が躍るのに、そこに古代が付いた日にはドキドキMAXだよ!


 ヒスイの話から現在確認されている3ヶ所以外にも、古代遺跡が存在する可能性が出てきた。これは全世界を揺るがす超極秘事項に該当するため、ギンガさん達にも秘密にしろという箝口令が敷かれる。

 古代遺跡の成り立ち・存在意義などを研究する機関があるらしいが、依然として謎のまま解明されていないという。唯一はっきりしていることは、未だ誰にも攻略されていないということだ。名を馳せようと思う者は、誰もが一度は挑む。しかしタクマさん達も阻まれたように、どうしても途中で進めなくなってしまうそうだ。


 ほほう、これはいいことを聞きましたぞ!私の勘が必要なアイテムが不足しているか、何かを見落としている可能性が非常に高いと囁いておるわ(ド○○○やってて良かった)!


 空を飛んで樹海遺跡に行こうぜ!プロジェクトの一環で、調達部隊のローテーションも決める。今までの活動内容に加え、オビトのレベル上げ援護と『舞○○』の練習が追加されたため、やる気満々な面々の要望で毎日活動することになってしまった。

 週7日のうち1日を休みとして、それを明日と仮定する(さらに日曜日と仮定)。週休1・2日の面々がジャンケンで決めた結果、タクマさんが月・金、セイジさんが月・土、エジムさんが月のみ、ルスカさんが木のみ、メリダさんが水・木、ヤミルさんが火・木。オビトは勿論月~土、そして何故か私が月・木参加。

 『舞○○』をどうしても覚えたいため、週に一度は私と練習したいと言われたからだ。またギルド組にも制約があって、エジムさんとルスカさん・メリダさん・ヤミルさんは休みを一緒に取れなかった。有事の際を考えどちらかのギルドマスター、ギルド内ではマスターと長の付く者は同時に休むことが出来ないそうだ。


 それを元に製作予定を立て、武器製作を金曜日AM、防具製作を土曜日AM、その他の製作を火・水・日AM、料理製作を火・水・金・土・日PMとした。これを帰ってギンガさんに伝えればバッチリだね!


 「ワクワクするなぁ!明後日が待ち遠しくて寝れる気がしないよ。ジャンケンに勝てて良かった!」

 「くっ、あそこで読み間違えなければ、私が行けたばずだったのに!」

 「お前は考え過ぎるから勝てねぇんだ」

 「そうそう、私に勝つのは100年早いよ♪」

 「「「「「「『そうそう、以下同文♪』」」」」」」

 『いかどーぶん♪』

 「っ!?次は絶対に勝ってやるからな!」


 2日後どっちが行くか3本ジャンケン勝負では、エジムさんがルスカさんにあっさり全勝しゲット!ルスカさんは全敗して余程悔しかったのか、その後皆に挑んだ結果、見事に全敗という負けっぷりを披露した。

 コハクとヒスイとも口ジャンケンをするも敢えなく惨敗、真っ白どころか灰になる寸前だった‥‥。ここまで来ると聞くも涙語るも涙としか言いようがない。

 そうこうしているうちに時刻は8時過ぎ、お暇する時間になったので声を掛けて(ルスカさんは肩ポン)帰る。タクマさんから渡された瓶にワインを何本分か残してきたので、まだまだドンチャン騒ぎが続くんだろうな。




 いつものことだが夜の露店街は閑散としている。1人だったらちょっと寂しいかも。営業時間を知らず、瓶欲しさに一昨日もし出掛けていたら完全に空振りだったってことだ。危ねっ!


 「また楽しくなりそうだね」


 オビトがぽつりと呟いた。昨日とは違い嬉しそうで、こっちも嬉しくなってくる。お互いに1人っ子だし、私も小っちゃい頃は兄弟・姉妹に憧れた口だもん。だが


 「その台詞、いつまで言っていられるのか見物だな!修行の日々は辛く厳しいもの!1に努力、2に根性、3・4がお菓子で、5にセンス!」

 「結局センスがあればいいってこと?」

 「まあそうとも言う!」

 「普通はお菓子を食べながらやらないよね?」

 「私の道場では許可している!何故なら私が食べられなくなったら困るじゃないか!」

 「‥‥そういう人だったね、聞いて損した」

 『コハ、とべる?』

 「う~ん、コハクにはSPがないからなぁ‥‥。あっ、閃いた!じゃあ<飛翔>アイテムを作ってあげるよ!イメージはバッチリ出来てるからさ!」

 「ねえ、それって昨日の夜話してたことだよね?<飛翔>を付与出来るなら、<無属性魔法>を習得する必要なくなっちゃうんじゃないの?」

 「っ!?で、でも<無属性魔法>は超便利な魔法なんだよっ!綺麗になるし、光るし、潜水出来るし、他にもいっぱいだし、ね?ね?凄いよね!?」

 「そうかな?しょうがないから皆には内緒にしといてあげるけど、俺のレベルが足りなくて取得出来なかったときは‥‥」

 「誠心誠意心を込めて製作させていただきますでありますです、ハイ!」


 直立不動でビシっと敬礼!多分酔いに任せてもう取得している可能性大、背中を嫌な汗が伝いガクブルが止まらない‥‥。


 「あ、あのぉ、お口直しにチョコレートでも如何でしょうか?わたくしめ、あと少量ですが持っておりますので」

 「くれるって言うなら貰おうかな?コハクとヒスイもいるでしょ?」

 『‥‥ちかたない、チョコ40こじゅつ』

 『ありがたくいただこう』

 「流石にそんなたくさんは持ってないんじゃない?どうしようかな‥‥」

 「あります!ございます!どうぞ持ってって下さいまし!」


 ミルクチョコレートとホワイトチョコレートを各120個ずつ放出、残りは各30個ずつとなってしまった。このトリオ、既に私よりチョコレートを持っているぞ‥‥。魔のトライアングル攻撃、下に恐ろしい技である。




 「ただいま」「帰りました」『ぷる』『ぶる』

 「お帰りなさい。ふふっ、コハクちゃんはヒスイ君の頭の上がお気に入りなのね」

 『ぷる!』

 「昼間1人で大丈夫だった?」

 「ええ、いつも通りよ。お客さんもあと数人だから、先に食堂へ行っててもらえるかしら?」

 「うん、わかった」


 食堂に行くとレイアさんが言った通り、数人のお客さんが残っていて丁度帰るところだった。置いてあった食器を厨房へ持って行き、食堂の机を拭いて戸締まり。床を掃き掃除した後に『清浄』して片付け完了!

 厨房と宿の片付けを終えたギンガさんとレイアさんが食堂に来たので、晩ご飯をクワ太から次々と取り出す。ピザ2種類・その他の料理・炭酸飲料の説明、お酒の注意事項を先程と同じようにしてから乾杯をした。


 「口の中が面白いわ!甘くてとても美味しいし!」

 「薄くない酒がこれ程旨いとは‥‥」

 「こっちのピザも熱いうちに食べて下さい。具が溢れることがあるので、気を付けて下さいね」

 「そういえば、ヤミルさんがチーズを溢して大惨事になってたよ。俺も1切れ貰うね」

 『オビー、コハも!』

 『儂にもくれ!』

 「あら、コハクちゃんとヒスイ君はたくさん食べるのね。それだけ美味しいってことかしら?」

 「俺達もいただこうか。‥‥んんっ!?旨いな!これは‥‥今日作ったチーズを何種類か混ぜているのか?サラダのソースは‥‥これにもチーズが使われているな」

 「‥‥はふっ、ん~美味しい!こっちのサラダもとっても美味しいわ!」

 「はい、大正解です!シーザーサラダドレッシングの方は、ヨーグルト・マヨネーズ・パルミジャーノ・レッジャーノ・レモン・砂糖・塩・胡椒・ニンニクで作りました」

 「そんなに色々なものが入っているのか‥‥、ソース1つ取ってもイトの料理は奥深いな」


 えへへ~、私が凄いんじゃないけど褒められるとやっぱり嬉しいもんだね!


 食べ終わりの頃合いに、オビトが今日決まった製作予定をギンガさんに伝えると快く了承してくれた。さらには週2日自分なりに料理を研究する時間が出来て、逆にありがたいと言ってくれる紳士振りを発揮。きゃあ~!素敵過ぎる、LOVEギンガさ~ん!

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