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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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 判明した。の衝撃は何処へやら‥‥、それにしても盛大に話題が逸れたな。私が悪いんじゃないよ、深淵なる接吻のせいだから!いつか会ったら絶対にサインを貰うんだ!


 しかし、どうして地下迷宮に入ったパーティー名までエジムさんが知っていたかというと、ザンダルクの冒険者ギルドマスターに世にも珍しいものを食わせてやると言ったらケロっと吐いたそうだ。どうやら王族からの依頼で冒険者ギルドが斡旋したらしい。

 依頼時の条件はランク5以上であること、名が売れていないこと、若くて口が堅いこと。名声を求める若者を金の力で丸め込もうって魂胆?でもその前に口の堅いギルドマスターを選ぼうよ‥‥。


 結果、やはりザンダルク王族は真っ黒々だった。他国を侵略している国が何故女神を召喚させたのか、魔術書をトルキアナに譲ったのか等の理由は謎のまま。う~ん、不気味な印象がどうにも拭えませんなぁ。


 「という訳で、近々ザンダルクの冒険者ギルドマスターが遊びに来るからさ♪」

 「な!?なんですとぉ~!じゃあ深淵なる接吻も来ますか!?」

 「来ないよ。彼らはランク6になって、有名になっちゃったからね」

 「直筆サインが‥‥」

 「ギルドマスターが長期間その国を離れることについては、ギルド的に問題はないんですか?」

 「大問題に決まっている。だがそれ以上に重要な用件があれば話は別だ」

 「てことは何だ?公に出来ねぇ話でもあるってことか?」

 「困ったもんだよね~、こっちの都合を考えない奴って。私だって暇じゃないのにさ」

 「「「「「「「似た者同士‥‥」」」」」」」


 またもや同類の匂いがプンプンしやがる。要注意人物ばっかり増えていくのは何故だ!?いい加減に可愛くて優しい女の子とお知り合いになりたい!


 『先程から気になっておるのだが、古代遺跡とはどのようなものなのだ?』

 「古い建造物とでも言えばいいのかな?私もカトビアの古の塔にしか行ったことがないから、どう表現すればいいかわからないけど」

 「古の塔はざっと30階位だったか?上階へ上がる通路を見つけることが出来なくて、21階で断念したことが懐かしいな」

 「あんときゃ食うものがなくなってヤバかったな」

 「凄いですね。俺達も行きましたけど、10階そこそこで行き詰まりましたよ」

 「下層はレベル上げに丁度良かったけど、中層になると3人じゃ歯が立たなくてキツかったもんね」

 「行き止まりも多くて、思っていたより時間が掛かっちゃったのよね。おかげで食糧と回復薬がなくなって帰りが大変だったわ」

 「形は違えど、似たようなものがブルイスの山頂とザンダルクの王城地下に存在するということですか?」

 「だと思うよ?王城地下迷宮以外の2つは自由に入れるから、いつか自分達で行ってみるといい」

 「うおぉぉぉ!塔と聞いたら行くっきゃないでしょ!RPG好きには欠かせない存在だし、絶対に重大な秘密が最上階に隠されている気がする!私も何度閉め出され迷わされ落とされたことか、あの鍵の掛かった扉とあざわらうような仕掛けとにっくき落とし穴めに!」

 「「「「「「どんな塔だ‥‥」」」」」」

 「ヒスイはどうして古代遺跡が気になったの?」

 『仮にそのようなものが古代遺跡というのならば、儂が前に棲んでいた所に同じようなものがあったのでな』

 『にーたん、ものちり!』

 「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 「マジでっ!?じゃあトルキアナの樹海にもあるってことか!くくくくくっ、こいつは私に攻略しに行け、そしてあわよくばお宝を発見せよという神の啓示!こりゃあじっとしちゃいられんぞ!早速今夜にでも出発せねばなるまい!ふぐぅっ!?」

 「イトはちょっと黙ってて!」


 黙らせ方は他にも色々あると思うんですよ。頭の上がタンコブ2姉弟になってるっちゅ~の‥‥。


 「エジム、どうする?私は動くべきだと思うが」

 「とりあえず確認するしかないな。出来れば私自らが行きたいところだが、それでは露呈する恐れがある。タクマ、お前から見てイトちゃん達は実際どうなんだ?」

 「強い、しかも底が知れねぇ。昨日納めなかった高ランクの達成条件はケルベロス・コカトリス・ワイバーン、まだ必要なら話すが?」

 「いや、十分だ。‥‥ふふ、イトちゃんには本当に驚かされるよ」

 「信じられん‥‥、だがヒスイもスレイプニルだったな。ふっ」

 「「「もしかして‥‥」」」

 「俺達を偵察部隊に指名したいってことですよね?ヒスイ達がいるから道案内も問題がない、ですか?」

 「これ以上ない適任者だよね?全てにおいて恐ろしい程に条件を満たしている」

 「しかし、どれだけ強くてもまだ子供だぞ?」


 これはもしや、指名クエストというやつですかな?偵察部隊‥‥偵・察・部・隊!何という甘美な響き!隠密かつ重要な役目、強くて信用に足る者にしか与えられぬ極秘任務ではないか!


 「はいっ!やります!昔から憧れてました!是非ともわたくしにそのお役目を!」

 「イトの製作期間中は論外です。正直なところ、当面は調達部隊の調整と活動だけで手一杯ですから」

 「何だい?その調達部隊というのは?」

 「私も知りたいぞ」

 「「セイジ‥‥?」」

 「僕だって昼ご飯のときに初めて聞いたんだよ!そうですよね?タクマさん」

 「ああ、そのことだが」


 何この総スルー攻撃‥‥。ずぅん、と落ち込んでいるとコハクとヒスイが慰めてくれた。でも『ちっかり!』とか『めげるな!』ってダメっ子に言う台詞じゃないの?


 調達部隊結成の話と臨時パーティー期間、活動内容についてタクマさんがギルド組に説明する(お弁当のことは内緒)。メリダさんとヤミルさんは即答で参加の意を伝えてきた。そして何故かエジムさんとルスカさんも‥‥。

 パーティーは6人までだが、臨時パーティーが認められている時点でリーダー以外が変わっても問題はないらしい。実際に組んでみて合わなかったら大変だし、ここでもお金にモノを言わせて引き抜きをしたりする人がいるとのこと。

 マスター2人がパーティーに入るのは流石に拙いので登録メンバーの変更をしない代わりに、取り分として自分達にも鞄を作って欲しいとお願いされた。冷めても勿論美味しいんだけど、やっぱり温かいお弁当を食べたいってのが目下の悩みらしい。食い意地もここまで来ると天晴れだよね‥‥。

 

 「最近運動不足でさ~。素敵なオジ様のお腹が出てたら格好悪いでしょ?」

 「はっ、くだらぬことを。お前はまず怠けることを止めろ」

 「「「ぷぷぅっ!」」」

 「そこっ!お前達だっていつかは直面する問題だからな!」

 「いつまで経っても大人なんだか子供なんだかわからん奴だな」

 「まるでイトみたいですね」

 「うげっ!超心外!」

 「何か言ったかな?イトちゃん」

 「イエ、ナニモ‥‥」

 『ちゃいあく!』

 「こら、コハク!心外を最悪なんて言い換える高等技術は教えてないぞ!」

 『ごめんちゃい』

 「「「「「「『コハクは悪くない!』」」」」」」

 「ルスカまで‥‥、お前この2日で随分馴染んだな」

 「まあ、こんなのも悪くはない」


 しかし上は45歳から下は0歳まで、今さらながらよくこんな面子で連んでるよね。私の大人っぽさは勿論だけど、13歳のオビトが渡り合ってるのはやっぱり凄いと思う。




 「樹海に行くときはギンガに許可を貰わないといけないよね?」

 「当たり前だ、最低でも約2週間は掛かる」

 「うん?日帰りで行けませんかね?」

 「イトちゃん、どれだけ遠いかわかってないでしょ?」

 「樹海は馬車が使えないから、往復するだけでも大変だぞ」

 「飛べばすぐ着くと思いますけど」

 「「はっ!?」」

 「だから、空を飛べばそんなに掛からずに行けると思いますよ」

 「「‥‥はっ!?」」

 「だ~か~ら~、こうやって飛べば楽チンですってば!『舞○○』!」


 プカプカ浮いてみせる。ぷくくっ、2人とも凄い顔。口ぱっか~んなってますけど!ぐるりと工房を1周してからすちゃっと降りた、ハイ10点!


 「そういや言ってなかったな」

 「飛んで当たり前になってましたからね」

 「ねえ、樹海に行くのはイトちゃんの製作期間が終わってからだよね?だったらそれまでに飛べるようになった人が一緒に行くことにしない?」

 「乗った!ところで<無属性魔法>のSPがいくつだったか覚えてるか?」

 「信じられないわ、本当にギルド職員なの?‥‥40SPよ」

 「よっしゃ~!ギリギリ40SPだぜ!」

 「私も取得するわ。パーティーの座は譲らないわよ!」

 「僕だって負けないからね!」

 「じゃあ既にイメージが出来てる俺が1歩リードだな。イトと一緒に空を飛んで良かったぜ」

 「「「イト(ちゃん)!宜しく!」」」

 「先に言っておきますが、命の保証はないですよ?」

 「「「そうだった‥‥」」」

 『コハクは儂に乗ればよい』

 『あい!にーたん!』

 「SPが足りなくて、もし飛べるようにならなかったら俺も乗せてよ」

 『構わぬぞ。オビトがおれば飛んだままでも食事が出来るな』


 特訓ムードが漂う中、何やらぷるぷるしているのが約2名。どうしちゃったのかな?もしかしてギンガさんみたいにプチパニック中?ほっとけばいいか、その方が静かだし。


 「イトちゃんっ!」「イトっ!」


 「ぐぇっ!?」むぎゅぅ~っと、エジムさんとルスカさんに両方から抱き着かれた。うぐぐぐぐ、苦しい‥‥。ちょ、ちょっとドコ触ってんだ!脇腹を掴むな、そこは腹じゃねぇ一応胸だ!

 「うぎゃぁ~!止めろお!!ギブギブギブぅ~!!」ダバダバしてみても一向に止める気配がない。何がしたいってんだ、こんニャロウ共!いい加減に


 「止めろっつってんだろぉがあぁぁぁぁ!!!」


 ブンっ!ドゴォ~ン!ガガガガガっ、カランっ!腕を掴んだまま空中で身体を捻って着地、そして2人纏めてダブル背負い投げで1本!目をパチクリさせて色々なものに埋もれている2人を、胸を張り仁王立ちして上から見下ろす(やはりお腹が出ただけだったが‥‥)。


 ふん、思い知ったか!乙女の胸を触った報いだ。この位で許してやる寛大な私に感謝するがよいわ!

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