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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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 調達部隊総司令官のオビトがタクマさんとセイジさんに、私が調達部隊を結成したことを伝える。総司令官の元、コハク隊長・ヒスイ副隊長を中心に据えた素晴らしい布陣の部隊だ(私談)!


 昨日は冒険者ギルドに寄っていないので、現在も臨時パーティーは継続したまま。納めていない達成条件にはランク5~7のものもあるので、これもギルドカードを預かって手続きしたいこと。どうせだから私の製作期間が終わるまでそのままにしないかという話。その方が4人で細々と続けるよりレベルも格段に上がるのでは?と提案。

 主な活動内容は、食材・素材調達と父上母上への食糧配達に伴うコハクとヒスイの同伴者募集。コハクがいるから<地図>がなくても迷うことはないし、出掛ける際は私のお弁当付き!勿論二つ返事でご了承いただけましたとも、見事な手腕です総司令官様!


 「晩飯のときにアイツらも集まるだろうから、そこで予定を組むか」

 「ですね。休みをズラして取れば毎日でも行動可能になりますよ」

 「俺の魔法鞄に入れておけば達成条件を納めるのはいつでもよくなりますし、それなら身動きも取り易そうですね。先にこちらの予定を決めて、その後にイトの製作予定を立てた方がいいかもしれません。イトもそれでいい?」

 「こちらから条件が3つある!」

 「‥‥珍しいね、それで条件は?」

 「初日は私も同行して珪砂採取を行うこと。始動は最低でも2日後からにすること。活動の際は遅くとも夕方までには帰って来ること。この3つを呑めないようであれば、家の子達を連れ出すことは諦めたまえ!」

 「諦めたまえって任命したのはイトでしょ?」

 「黙らっしゃい!ソレとコレとは話が別だ!どうしても連れ出したいのであれば私の屍を超えてゆけぃっ!」

 「じゃあ、お言葉に甘えて‥‥」

 「ば、ばばば、バッキャロ~!本気で包丁を構えるなよっ!」


 「ふぃ~」こんなところで命を脅かされるとは思わなんだ‥‥、何て末恐ろしい坊ちゃんだ。


 「冗談はさておき、2日後からの理由だけは聞いてもいい?」

 「言っとくけど、全然置いてないからね!理由は明日お弁当の仕込みをしたいのと、出来れば<完全防御>アイテムを先に作って渡したい。‥‥私が居ないときに皆に何かあったら、それこそ悔やんでも悔やみきれないよ」

 「「「「『『‥‥‥‥‥』』」」」」

 「へ、返事は!?」

 「「「了解!」」」

 『あいあいちゃー!』

 『承知した!』

 「俺も弁当作りを手伝おう」

 「うむ、苦しゅうないぞお前達!」


 恥い!柄にもないことを言ってしまった‥‥。しかしパーティーリーダー兼最高司令官として、ここは絶対に譲れんのだ!




 昼休憩を終えたタクマさんとセイジさんがお店へ戻ったので、私達は本日のメインイベント、調味料の製作を開始することにした(コハクとヒスイはお昼寝に突入)。食材と調理道具を出し、オビトとギンガさんにまずは説明。


 チーズは種類から説明する。パルミジャーノ・レッジャーノ・カマンベールチーズ・ゴーダチーズ・プロセスチーズ・カッテージチーズ・リコッタチーズ・モッツァレラチーズ・クリームチーズ、とりあえず有名処を作ることにした(チーズ作り体験しといて良かった‥‥)。最後の2つはヨーグルトが必要なはずだから、これも一緒に作らないといけない。牛乳系は多いな‥‥。

 ソースは3種類で、ウスターソース・中濃ソース・お好み風ソースの予定。ケチャップの他にトマトピューレも作っとく?あれば料理するときに手間が省けて便利だからね。あとは予定通りでいいかな?


 調味料にどの食材が必要なのか、事前にしておかなければならない準備・調理工程・手順・大切なポイント等を私も思い出しながら、事細かく説明を交えて製作を進める。特に温度・雑菌に気を付けなければいけないチーズ類は、『清浄』と同等の煮沸消毒方法や、『魔力生成』で作ってしまったレンネット(凝乳酸素)が本来は子牛の胃の中にあるタンパク質を固める酵素であること等も併せて説明しておく。

 また熟成期間についても、チーズの種類や調味料によって異なることを伝えておいた。一番最長でパルミジャーノ・レッジャーノの2年(助促さんで2時間)、長いものだと5年以上熟成させることもあるんですよって言ったときの2人の驚いた顔が面白かった。


 チーズの王様、最長熟成を誇り独特の食感と深い旨味があるパルミジャーノ・レッジャーノ。これは前日の生乳を一晩放置し乳脂肪分を分離させ取り除いたものと、当日の牛乳を混合させてから作るため助促さんにて1日経過させたものを用意。水分を『乾燥』で完全に抜き取り、今回は助促さん3時間(3年熟成です!)で完成。


 とろりとしたコクのある味わいが人気のカマンベールチーズ、熟成期間は数週間程(1ヶ月にする)。生乳を低温殺菌して、その後32度程度(ちょっと適当‥‥)まで冷ました生乳に『魔力生成』で乳酸菌・レンネットを加え1時間待‥‥たないで「ぱんっ!」固まった生乳を四角く切って、布を敷いたザルへ入れてホエーを排出させる(ホエーは捨てないよ!)。

 一晩経つと水分が抜けるので代わりに『乾燥』、これまた『魔力生成』で白カビ(食べれるカビと念じた!)を吹き付け、助促さん5分で完成。


 今までは生乳しか知らなかっただろうけど、今後乳製品を取り扱うのであれば知っておいたほうがいい。ということで、オビトとギンガさんに低温殺菌の説明。お湯が沸騰する温度が100度です!から入り、63~65度で30分間加熱殺菌、その場合決して65度を超えてはいけないことを伝える。

 デメリットとしては、72度前後で15秒程度加熱する高温殺菌、120~130度で2・3秒加熱する超高温瞬間殺菌よりもコストが高く賞味期限が短いこと。しかし風味が良く、生乳に近い牛乳本来の甘さとまろやかさを味わえることもアピールしておく。


 癖がなく食べやすいゴーダチーズ、最低熟成期間は2ヶ月。熟成が進むにつれコクのある香ばしい風味が出る。今回は柔らかくあっさりしていて癖がない、熟成が浅いものを作る(3ヶ月)。低温殺菌した生乳に魔力レンネットを加え、これまた固まったものからホエーを抜く。ボウルに作った塩水に浸し、助促さん15分で完成。

 

 おやつに出てきたこともある、一番身近なプロセスチーズ。スライスチーズもとろけるチーズもプロセスチーズだったんです!今回は作ったナチュラルチーズ(カマンベールチーズ)を<火魔法>で熱を加えて溶かし、熱いうちにバットに流し込み固めてあっという間に完成!加熱したことにより乳酸菌・酵素が死滅するため、長期間経っても味が変わらない優れもの!


 てな感じで、残りのチーズもサクサクっと製作する。みんな大好きモッツァレラチーズ、用途色々カッテージチーズ、ホエーは無駄にしません!さっぱり柔らか口当たり良しなリコッタチーズ、お菓子の味方クリームチーズ!


 ここで、食べやすいプロセスチーズを皆で実食!どうだい?美味しかろう?私も6Pチーズを1人でよく食べたものさ!気に入ったみたいで良かったよ。じゃあ、あと5切れずつあげようかね。


 ウスターソース・中濃ソース・お好み風ソースはトマト・レモン・玉葱・人参・林檎・ニンニク・酢・砂糖・塩・コンスターチ・酒・醤油・香辛料。ケチャップはトマト・玉葱・砂糖・酢・塩・香辛料。オイスターソースは牡蠣エキス・砂糖・醤油・塩・魚エキス・でん粉(片栗粉)・油・酒。デミグラスソースはギュシ・セロリ・人参・トマト・玉葱・ニンニク・酒・林檎・バター・小麦粉・香辛料を使用。


 ええ~い!もう面倒臭ぇ!


 トマトピューレ・ラー油・マスタード・ダシの素・鶏がらの素・中華の素・赤味噌・甜麺醤・固形ブイヨン・固形コンソメ・めんつゆ・乾物・干物・キャラメル・上新粉・煎り胡麻・擂り胡麻・ふりかけ(たまご・野菜・鮭・鰹・そぼろ)・豆腐・油揚げ・中華麺を製作!


 ちゃんとオビトとギンガさんには説明しておきます!さーせん!




 完成した調味料を味見するごとに、感嘆と驚きといった反応が起こる。オビトがその都度メモ帳に書き込んでいたので、ちらっと覗いたら凄いことになっていた。この子調味料マスターにでもなるつもりかしら?

 キャラメルは2回作る嵌めになった。コハクとヒスイがいたく気に入り、可愛さ爆発のおねだり攻撃に負けてしまったのだ‥‥。これだけ気に入るということは、父上と母上も好きだよね?ってことで1つはコハクへGO!


 調味料全般に言えることだが、調理途中の待ち時間や完成後の熟成期間が長いので、容量が決まっている手持ちの助促さん2枚をフル稼働しても大変だった。今回は瓶が足りなかったため結果的には良かったが、これは助促さん改を作らないといかんな。ただそうなると魔法鞄の分の魔石(透明)が足りなくなるので、これも珪砂と併せて採取が必要だ。


 助さんズと<錬金>を駆使して、どうにかこうにか調味料を量産分も含めて製作し終えた。オビトとギンガさんは作業台の上に少量ずつ残した調味料の味を確かめながら、メモ帳と睨めっこしている。

 食材の確認をすると既にトマトが0!?牛乳もジリ貧だ。バター・全乳粉に加えてチーズ類・ヨーグルト・キャラメル・生クリームも作ったもんね。野菜・魚介類・お米・餅米・小麦粉・大豆・卵・塩も、何だかんだ言って消費が激しい。定期的に購入する場合って、指定した所まで届けてくれるのかな?それとも、お店か牧場や畑まで取りに行かなきゃいけないの?


 「お聞きしたいのですが、ギンガさんの食堂で使用している食材は何処で購入しているものなんですか?食堂だけあって量も多いでしょうし、運ぶだけでも一苦労ですよね?」

 「馴染みの店から定期的に購入する代わりに、食堂まで届けてくれるように頼んでいるから問題ないぞ」

 「それって頼まないと届けてもらえないんでしょうか?」

 「大抵は届けてくれるが、届け先は伝えたのか?」

 「うっ!?」

 「言ってないよ。どのお店でも、世間話やご近所話に花が咲いちゃって大盛り上がりだったからね。いい意味で社交性の塊、悪い意味で営業妨害」

 「な、何という言い種‥‥、そんな目で見られていたなんて心外だ!ちくしょう!蜘蛛の巣のように張り巡らされた私の情報網に、いつか驚く日がきっと来るんだからな!覚えとけよっ!」


 酷い、酷いよ!これじゃあ私がいい加減帰って欲しいのに、帰らないオバちゃんみたいじゃないか!‥‥完全に否定は出来ないけど。


 「まあまあ、もうその位にしておけ。くくっ、それにしてもお前たちはまるで姉弟みたいだな」

 「仮にそうだとしても、兄妹の間違いでしょ?」

 「ふふん。大人は誰もがそう思ってるってことさ!見苦しいぞ!このオビトめ!」

 「父さん、4時過ぎたからそろそろ宿に戻ったら?」

 「えっ!?ここでまさかのスルーなの?」

 「ああ、そうだな。仕込みも出来ているし、明日からも大体この位に帰れれば問題ないだろう」


 MY心のオアシス、ギンガさんが帰ってしまった‥‥。でも去り際に「晩飯を楽しみにしてるぞ」って言われちゃった。これはもう張り切る1択でしょ!

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