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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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 セイジさんを待っている間に、武器が散らばってしまった店内を皆で片付ける。『清浄』にビックリしたタクマさんが立て掛けてあったものを蹴飛ばしたり、棚にぶつかって落としてしまったりしてとんでもないことになっていたのだ。

 結果的には‥‥、かなりの確率で‥‥、大まかには私のせいなので、率先してせっせと拾い片付ける。ヒスイは咥えて、コハクは一旦身体に入れて棚の上に跳ねてからニュっと出す‥‥斬新過ぎだろ‥‥。


 片付けてて気付いたけど、重たい物が持てるようになってる。この剣も前は持つだけで精一杯だったのに、今はこんなことも出来ちゃうぜ!鞘から出した剣をポーンと投げクルクル回転しながら落ちてくるのをキャッチ、殺陣たて紛いの動きをしてから鞘へすちゃっと戻した。

 これなら前回持てなかったハンマーっぽいのも持てるかも?父さんとよくクイズごっこして遊んだな「○○○ーチャンス!!」と言いながら振り下ろす。かぁ~最高っ!これぞ獲得者のみが持つ醍醐味だよね!


 相変わらず刀はないな。そういえば鞭もないぞ。ピシっピシって蹴散らす感じがちょっと格好いいよね。オホホホホ!ってのも一度はやってみたい。そうだ!刀と一緒に鞭も作っちゃお♪


 『かーしゃん、かっこい!』

 『さすが姉上!』

 「さっきの動き格好良かったね。あれは何なの?」

 「お、オビトに格好いいって言われた‥‥。ままま、まあね!私はいつも格好可愛いから、何のことを言ってるのかはわからないけどさ!」

 「素晴らしい剣捌きだったぞ。イトは凄いんだな」

 「剣もそんなに扱えたのか‥‥。くくっ、敵わねぇな」

 「あたぼうよ!こちとら小っちゃい頃から時代劇を真似て、自称チャンバラの達人とまで呼ばれたイト様でい!てめえらが纏めて掛かって来たところで、剣の錆にもなりゃしねぇ!」

 「オビト、イトはどうしたんだ?」

 「そうか、父さんは初めてだったっけ。ちょっと待ってね」

 「待てオビト、面白そうなのが始まるみてぇだぞ」


 パカラ、パカラ、パカラ「はいやぁ~!」ちゃちゃちゃ~、ちゃっちゃっちゃっちゃ~!毎週欠かさず見てました!火消しに憧れたこともありました!起承転結!勧善懲悪!○さん○さんも桜○○も大好きだけど、○様と結婚することを夢見た日がありました!

 襲い掛かる並みいる敵をバッタバッタと切り倒し「成敗!」、お庭番の2人は居ないから自分で倒す!「ふぃ~」刀ではなかったけど、久々の殺陣はやはり痺れますなぁ!


 『ちゅごい!』

 「これ程の腕前だったとは‥‥」

 『儂もやってみたい‥‥』

 「これが異世界の技‥‥」

 「今度俺にも教えてよ、イト先生」

 「っ!?勿論だとも!オビト君!!しかし私の教えは厳しいぞ?果たして着いて来れるかな?はぁっはっはっはっ!」

 「オビト、もういいぞ」

 「わかりました」

 「こんにちは!あれ?全員揃ってどうしたんですか?」


 セイジさんが来たことで我に返った私は、間一髪で憎き奴を阻止出来た‥‥マジ危ねぇ。


 お店の片付けをセイジさんにも手伝ってもらい、丁度片付け終わる頃にお腹が「ぐるきゅぅ!」と鳴った。うう、お腹空いた。そういえば、4限目にいつもお腹が鳴ってたな。咳払いして誤魔化してたけど、タエちゃんにはいつも12時に鳴る正確無比な腹時計だって褒められてたっけ。

 ‥‥どうせだから、今日のお昼ご飯はお弁当箱に詰めて出してみようか。自分で作ってると嬉しさは半減だけど、今日は何かなって思いながら蓋を開けるワクワク感がいいよね!一度寝坊してご飯にふりかけだけだったときは、感慨深いものがあったからな‥‥。




 そうと決まれば、お昼ご飯の準備をすると言って先に工房へ戻らせてもらう。特大わっぱx9・普通わっぱx2・特大平木皿x3を取り出し『清浄』、ご飯とおかずを詰めて盛り付ける。これでご飯の残りが18合となり、おかずは全てなくなった。

 あずま袋の上に箸箱と一緒にを置いてから結び、特大わっぱx4・普通わっぱx1・特大平木皿x2は再びクワ太へしまっておく。お椀に味噌汁を装い、お弁当箱と合わせてお盆に載せ「出来ましたよ~!」と声を掛ければ、皆が工房へ入って来たので、お盆を渡して運んでもらった。


 「お昼ご飯のメニューは、皆大好きお弁当・味噌汁です。ギンガさんとオビトは中身を知っていますが、そこは盛り付けを楽しんで下さい。では、いただきます!」

 「「「「『『いただきます(ちゅ)!』』」」」」


 ドキドキしながら皆が開けるのを待つ。蓋に手を掛けパカっ、「うわぁ~!」「おぉ~!」という声が挙がる。よし、掴みはバッチリだね!私も開けようパカっ、わぉ!いっつびゅーてぃふぉー♪何て色取り取りで美味しそうなおかず達!どれから食べるか悩んじゃうぞ!

 1つ不満があるとすれば、ご飯が白一色で寂しいことだ。ふりかけと梅干しだけじゃなくて、海苔を見つけてのり弁も食べたい!昆布も欲しいから、いずれは海にも行かねばなるまい!


 皆の反応を見てみると、オビトは自分で作った不格好な卵焼きを美味しそうに頬張っていた。自分で初めて作ったものって何故か美味しいよね!セイジさんは食べるのが勿体ないと呟きながらゴボウ巻きを食べ、ご飯を掻っ込んでいる。タクマさんはきんぴらゴボウを口に入れ、ピリっとした辛さにこれまたご飯が進んでいるようだ。

 ギンガさんは煮魚から。作ってるときに、湯引き・お湯から煮る等の臭み取りを一番気にしていたものだ。今までは塩茹でしかなかったから、尚更臭みを感じていたんだろうね。で、どうですか?顔を見ればわかるね、作って良かったです!

 コハクとヒスイは楽しそうにはぐはぐと食べている。作り手として嬉しい限りだ。さて、私も食べるぞ!まずは大学いもからだ♪


 「旨かった‥‥。少量ずつだが色んなもんが入ってて、こりゃいいな」

 「どれも美味しくって、こんなものが売っていたら絶対に買いますよ!」

 「‥‥持ち帰りを視野に入れたものか‥‥」

 「父さん何か考え事?」

 「いやな、これを機に屋台で売るものを一新しようと思っているんだ。それを持ち帰っても食べられるようなものにすれば、購入者が増えるんじゃないかと思ってな」

 「確かに露店街の屋台は、その場で食べるものが多いですもんね。あれって何でですか?」

 「冷めると固くなったり、臭みが増して味が悪くなるから自ずとそうなったとしか言えんな」

 「なるほど‥‥。じゃあ、臭みに関しては血抜きと調理方法で何とかなるとして、冷めても美味しいものを売ればいいと思いますよ。温め直して食べられればもっといいですよね?」

 「何か思い当たることでもあるのか?」

 「任せて下さい!私のいた世界は、テイクアウトだらけでしたからね!」

 「テイクアウトってどういう意味なの?」

 「お持ち帰りって意味だよ。ファーストフード店、え~っと、軽食屋と飲食店が予め持ち帰れるように包装とか簡易弁当箱を用意しておいて、希望する人にはお皿じゃなくてそれで提供するシステムなんだ」

 「それだと持ち帰りの方が、包装と弁当箱分値段が高くなっちゃうってこと?」 

 「いや、一緒だよ。量が違うのかどうかは知らないけど、お店で食べると対応したりお皿を洗ったりする分人件費が掛かるでしょ?持ち帰りはそれがない分とんとんなんだと思うな」


 オビトもギンガさんも食堂の様子を思い出したようで納得してくれた。食堂でもお持ち帰りを取り入れた場合、レイアさんの給仕が減りギンガさんが洗うお皿も少なくなる分お店の回転率が上がる。結果としてプラマイゼロってことだ。

 屋台で取り入れれば、もっといい結果が得られるだろう。広くないスペースでは、作れるものも捌ける人数も限られている。勿論作りたてが一番美味しいが、ものによって作り置きしておいたものを買ってもらえれば客単価もグンと上がる。


 「イト、出来れば相談に乗ってもらえないだろうか?今の話を聞く限り、その方がいいものが出来そうだ」

 「勿論です!どうせならギンガ印も作っちゃいましょうか!」

 「か、考えさせてくれ‥‥」


 銀河だから星がいいかも!レイアさんの名前がゼウスの母神と偶然同じだから、女神様が星型の杖を持ったのなんかどう?ヤバっ!杖は違うけど、これってまんま聖○○星○の○○○様っぽいぞ‥‥。まあ、誰も知らないだろうしいっか!


 「それにしても、お弁当のことを知られたらどんな嫌みを言われることか‥‥」

 「あ、その点なら解決済みですよ。ちゃんとギルド組の分も作ってますから」

 「今日の晩飯に出してやるのか?」

 「いいえ、明日の朝に渡して驚かせようかと思っています。なので皆さん、明日までお弁当箱のことは秘密にしておいて下さいね」

 「じゃあ、口裏合わせをしておかないとね。何を食べたことにしておきますか?」

 「そうだな‥‥、食べたものはそのまま伝えればいいんじゃねぇか?下手に嘘を付くとボロが出るしな。セイジがあまりの美味しさに全部食っちまったことにでもするか」

 「勘弁して下さいよ!何で僕1人を悪者にするんですか!?そんなことをしたらどんな目に遭うのか想像も出来ない‥‥、助けてコハク!」

 『コハのちぇい』

 「僕の天使!」

 『儂も一役買おう』

 「コハクとヒスイはそれでいいのか?」

 『あい!おいちかった!』

 『取り分が決められていなければ、まだ食べておったからな』

 「そうか、セイジと違ってお前達は器がデカいな。なら全員で食っちまったことにするか、ギンガもいいか?」

 「構いませんよ。俺もあればもっと食べたいですからね」

 「僕の器って一体‥‥」


 今どき僕の天使と来たか‥‥わかる、わかるがそれを口に出しちゃいかん!寒過ぎるわっ!


 「でも、私はそこまで食べないから逆に怪しまれちゃうんじゃないかな?」

 「よく言うよ、あんなにお菓子を食べておいて」

 「乙女の胃袋には、お菓子のための特等席がいつ如何なる時も存在するんだ!梅干しを見ると唾液が出るのと一緒で、お菓子を見るとお腹が空くんだよっ!」

 『コハも!』

 「まいぷりちーえんじぇる!」


 僕の天使と果たして違いがあるんだろうか‥‥、心の友よ。


 食べ終わったお弁当箱を回収、『清浄』してからクワ太にしまい込んだ。食休みのお供に皆でジュースを飲みながら雑談・休憩タイム。


 「午後からは何をする予定なんだ?」

 「調味料の製作に取り掛かるつもりです。オビトが昨日<錬金>を取得したので、教えながらになると思いますが」

 「ついに取得したのか。良かったなオビト!まあ、かく言う俺も取得したがな」

 「僕も取得しましたよ!SPを無駄遣いしていなくて本当に良かったです!」

 「てことだ。武器と防具を作る予定が立っているようだったら、先に教えといてもらえねぇか?」

 「そのことなんですけど、ちょっといいですか?別件でこちらからも提案があるのですが」

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