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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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 てことでサクっとな!いやいや、嘘、嘘ですってばオビト様!ペンで俵脇腹を抉らんでくれたまえ!


 「ふぃ~」ペン先が軽く5cmは沈んだぜ‥‥。


 では宣言通り調味料瓶から作りましょうかね!珪砂をゴソっと取り出し、さらに蒼鉱石と以前鞣しておいたラビとウルカの革も出す。

 買ったばかりの牛乳入り20L瓶を目の前に置き、見本にさせてもらう。が、よくよく見ると昔ながらの横倒し禁止タイプ!?クワ太の溢れない機能を知ってから、そこら辺を気にしなくなったのが裏目に出ちゃったな。形だけ参考にさせてもらい、前回ワトヤさんに売ってもらった蓋が閉まるやつを思い出‥‥せなかったので、自宅にあった瓶を参考にしましょう!


 珪砂だけでも高温であれば混ぜものなしでガラスになる、はず!しかし、わたくしそんなことは致しませんわ!『錬成』、そして『形状変化』『硬化』『状態維持』!

 まあ!?何ということでしょう、あっという間にガラス瓶が出来上がってしまったではありませんか!さらにそのままでは非常に重いので厚みを極薄に、その代わりに不壊・防汚・防水を付けた危険な鈍器、げふんげふん、瓶の出来上がり!


+-----+-----+-----+

[20Lガラス瓶]

珪砂で作った丸形ガラス瓶

〈効果:品質100%上昇〉

〈製作ボーナス:不壊・防汚・防水〉

+-----+-----+

珪砂+ラビウルカ蒼鉱石+蒼鉱石

作成条件:鍛冶・細工・錬金Lv4

+-----+-----+-----+


 ヤバい‥‥間違えないとは思うけど、こんなものを誤って返却した日には血の雨が降る‥‥。てことで、チョコレート隠蔽失敗事件のときから目論もくろんでいたイト印のロゴを刻むぜ!


 共犯者のヒスイ(私のせいだけど‥‥)に跨がった私、耳の間のコハクは外せない!チョコレートを好き過ぎて従属になった母上と父上を小さい順に後ろに列べて、カルガモ親子の行進ならぬスレイプニル親子の逆行進!そして、母上にさりげなくオビトを乗っける。おぉ!最強パーティーとは思えぬ程のほのぼのさ!

 それを輪郭だけにして少しデフォルメ、格好良さより可愛らしさを際立たせたものにする。お洒落なワンポイントもしっかり入れておく、それはヒスイの耳飾り(偽造対策にあと1ヵ所隠しポイントを作っとこ)。ここだけを翡翠色に『色彩変化』で着色、いいね!


 靴底に使用した金属のさらに衝撃吸収性を高めた柔らかいもの(限りなくゴム)を蒼鉱石と革を『合成』させて作り、蒼鉱石で蓋と瓶本体を繋ぐ輪っかと金具も作ってお互いを固定させる。ここにゴムもどきを嵌めてっと、調味料瓶の完成!

 そうだ!四角いのとか小さいのも作ってお菓子を詰めれば、見映えもいいしプレゼントっぽくなるかも。よし!オビトには、この中に色々詰めたものをプレゼントしよう♪

 丸形20L・5Lを量産、四角20L・5Lと丸形・四角500ml位のものを6袋の珪砂がなくなるまで作った。結果、丸形20L・5Lx各25、四角20L・5Lx各4、丸形・四角500mlx各25が出来たが、これじゃ量産の調味料も合わせて精々1瓶ずつしか作れない‥‥。もっと取って来るべきだったなぁ。池底は調達部隊じゃ行けないし、製作の合間を見て行くしかないな。


 「ホント簡単に作るよね。これを自分でやると全然出来ないんだから嫌になるよ」

 「ずっと見てても、いつの間にか出来てるのが凄いな」

 「いやぁ、ギンガさんに褒められると嬉しいですね!えっ!?ずっと見てたんですか?あんまり見つめられると、手元が狂っちゃうかも‥‥」

 「バカなこと言ってないで、早くお弁当箱っていうのを作ってよ」

 「‥‥あいあいさ~」


 いい感じで息抜きも出来たし次だ、次!


 トレントの木材を床にドンっと置き、必要な分だけ包丁でカットしてクワ太に戻す。イメージとしては重箱1段サイズの楕円形曲げわっぱ。これまでの食べっぷりを見ると、普通サイズじゃきっと苦情が殺到するに違いない。そうだ!これを機に、お箸の使い方を覚えてもらっちゃうのもいいかもしれない。


 トレントの皮を剥ぎ、魔力で鞣して革を先に作っておく。円の長さ・高さ・厚みを決めて木材をカット、接合部になる両端を包丁で斜めに削る。水に浸けたり・煮沸したりはせずに、『形状変化』で底板を嵌める溝もここで作ってしまい楕円型にして『乾燥』。接合部を魔力接着剤で『結合』させてから、最初に作っておいたトレントの革で接合部を縫い止めた。

 大きさに合わせて底板を作成、接着剤を塗り底板を溝に嵌め込む。『硬化』『状態維持』『色彩変化』でロゴを蓋裏に刻み、それから魔力を漆に見立ててコーティングする。これ、包丁を直したときと一緒かも。あのときは熱くて触れないから、水桶の水を『硬化』する水に変化させたんだもんね。てことは『物質変化』?『化学変化』?いや、魔力で生み出してる訳だから『魔力生成』でいいかな。


 うわっ!いきなりビビっと来たぁ!!これで豆腐のにがりもラーメンのかん水もクリアしちゃったんじゃない!?蜂蜜は‥‥成分がわからないから蜂に任せよう。


 遅ればせながら、調味料瓶と同じく不壊・防汚・防水を付けた危険な特大曲げわっぱ弁当箱の出来上がり!よしよし、こいつをえ~っと‥‥、特大サイズをあと5つ、いや7つ、いや9つ作っておくか。普通サイズは3つ、いや5つ作っておこう。


 トレントの木材を再び取り出して今度こそサクッと作り、仕切り・箸・箸箱・爪楊枝、ヒスイ・父上・母上用の特大平・深木皿も何種類か製作。さらにサラダをそのまま盛り付けられそうな大きな木のボウル、1人前の定食を載せるお盆、パーティー用の大皿も作る。

 蓋止めの代わりに弁当箱分のあずま袋も持っていた布で作ったので、これで箸箱とセットにして包んで渡すことが出来るぞ!


 「ねえ、凄く聞きたくないんだけど、瓶にも入れてたその模様は何なの?」

 「このロゴのこと?えっへん!では説明しよ~う!これはイト印といって、今後私の製作する商品全てに刻む証である!勿論私が乗ってるのがヒスイで、コハクも頭の上にいるよ。ココね!ちなみに真ん中の母上に乗ってるのはオビトだから!」

 『わーい!かーしゃんとにーたんといっちょ♪』

 『父上と母上も一緒なのは嬉しいぞ』

 「わかってはいたけど、俺は嘘だと言って欲しかったよ‥‥」

 「光栄なことじゃないか、羨ましいぞオビト。くくっ、いや、やけに可愛いらしくて、ついな」

 「そうだよ!栄えあるイト印のロゴに起用されたら、今後の売れっ子街道は確約されたようなものだよ!街を歩けば、1歩進んだだけで揉みくちゃになること間違いなし!」

 「その場合、俺よりペン先が沈むイトの脇腹の方に人気が集中しそうだよね」

 「うわあぁぁぁ!わ、私の脇腹は5cm足りとも沈んでないよっ!」


 乙女の秘密を容赦なく暴くとは何て危険な奴だ‥‥。


 それに比べて、この愛らしさを理解してくれるギンガさんはやはりお目が高い!寝間着の内側にもババンっ!とロゴ入れてあげねば!


 「丁度昼前だしキリもいいから、昼ご飯の準備をするか?俺も手伝うぞ?」

 「そうですね!じゃあメニューを決めましょうか」

 「今ある調味料で作れる新しい料理がいいな」

 「う~ん、それじゃあ明日のお弁当にもなる色々なお総菜にしましょうか?」

 「イトが前に言ってた総菜パンと名前が一緒だね」

 「ご飯とかの主食と一緒に、日常的に食べるおかずのことをお総菜って言うんだ。だから総菜パンも、おかずパンって言うことがあるんだよ。私にとっては、日本という国の家庭でよく食べる和食って呼ばれてる料理になるけど」

 「ちなみに、今まで食べた料理で和食はどれになるの?」

 「そう言われると難しいな‥‥、正直なところパン・シチュー・カレーは別の国の料理が元になってるんだ。私のはどちらかというと、日本人の口に合うように作った日本食になっちゃうんだよね。パンなんかも柔らかめだし、カレーは○○○って言うしさ!」

 「最後のは意味がわからないけど、イトの世界にはいくつの国があるの?」

 「確か‥‥196ヵ国だったかな?あんまり社会は得意じゃなかったんだ。間違ってたらごめん」

 「‥‥凄い数だね」

 「ああ、どれだけ大きいのか予想もつかんな」

 「さっき話した料理の中にも色んな国の料理があるから、まあ楽しみにしててよ!」




 昨日のご飯が12合残ってるけど、明日のお弁当にも必要だからまた50合炊いておこう。

作るれるものは、お弁当おかずの定番である卵焼き・きんぴらゴボウ・鮭の照り焼き・ゴボウ巻き・煮魚・カボチャの煮付け・大学いもってとこかな。チキリの唐揚げとトングの生姜焼きも残ってるから、お弁当に入れてあげよ。

 あっ!?煎り胡麻・擂り胡麻にふりかけと梅干しのことを忘れてた!これも調味料と一緒に仕込んじゃわないと。でも梅がねぇ~!


 必要な調味料・食材・調理道具を出して、まずはギンガさんに何をどの料理に使うのかを説明する。オビトも<錬金>以外に、これからは<料理>も書き留めることにしたようだ。

 次に食材の切り方・料理方法・料理手順を懇切丁寧に説明しながら教える。先に切って見せて切り方の名前を、水に晒してアクを抜くこと・先に湯通しすること・お湯じゃないと臭みが出ること、食材や調味料をこのタイミングで入れないと風味が出ない・味が染みない・焦げる等。

 2人が一番驚いたのは、大学いもに蜜を絡めた後固まったとき。私も最初に作ったときは感動したから凄くわかるよ!卵焼きも、卵を何回かに分けてクルクル巻くのが面白かったみたい。ギンガさんは何回かやったらすぐ出来たけど、オビトのは最後まで不格好な卵焼きだった。自分で食べると言って、嬉しそうにしてたからいいけどね!

 今日の味噌汁は茄子と長葱。何度も言うが、ちくしょう油揚げが欲しいぜ‥‥。


 出来たものを一旦全部クワ太にしまって、セイジさんが来るまでに洗い物と片付け、は面倒なので『清浄』。しまった!?台所周りだけ不自然に綺麗過ぎて完全に浮いてる。これじゃ私の魔法テクがお粗末みたいじゃないか‥‥、こうなったら工房全体に掛けちまえ『清浄』!


 ガタンっ!ガッシャ~ン!ドンっ!ガラガラガランっ!「何だ!?何があったんだ!」


 タクマさんが工房に駆け込んで来た。多分だけど、『清浄』の光がお店に漏れたからだと思う。野外のときは周りが明るいから気付かなかったが、室内だと眩しいもんね。営業妨害してすみません、ペコリ。心の中で謝っておく。


 「ご迷惑をお掛けしてすみません。それより凄い音がしましたが、お店の方は大丈夫ですか?」

 「何の考えもなしにイトが工房全体に『清浄』を掛けたので、お店の方に光が漏れてしまったみたいです。驚かれましたよね?」

 「いや、何もなけりゃいい。客が居たわけでもねぇしな」


 ちらっ、ニヤリ。ぐぬぬぅ、オ~ビ~ト~めぇ!秘奥義、話題すり替えの術を発動させたというのに、被せ気味で潰しやがって!

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