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ヤミルさんとセイジさんを引き連れて木から飛び降り、ゆっくりと近付く。こちらに気付いたのか、忙しなく地面を蹴り威嚇し始めた。
攻撃出来るか出来ないか、という距離で地面に座り込む。セイジさんが提案した餌付けじゃないけど、魔物は甘いものが好きみたいだから試してみる価値はあると思うんだ。クワ太からお皿を取り出し、そこにどら焼き・ジャムクッキー・ドーナツを出した。
「イトちゃん、これは?」
「昨日作ったお菓子ですよ。右からどら焼き・ジャムクッキー・ドーナツです。心細いときや寂しいときに甘いものを食べるとホっとしませんか?あの子もハグレてここに辿り着いたとしたら、お腹が空いているのかもしれませんし」
「初めて見るものばかりじゃねぇか!?イト、お前隠してやがったな」
「ピュ~」
『ぴゅー』
「「コハクも口笛で誤魔化した!?」」
「か、隠してた訳じゃないんですよ!ただ、出すタイミングがなかったと言うか、出す気がなかったと言うか、そもそも作ったのだって昨夜ですし、アハハハハ‥‥すみませんでしたぁ!」
何故か土下座する私、どうしていつもこうなるんだ‥‥。
怒られる前に誠意を見せたからもういいかな?顔を上げると、何故かオビトとタクマさんとメリダさんも側に座っていた。いつの間にっ!?
「オビト君、隠してたわね?」
「まさか秘密にしてた訳じゃねぇよな?」
「ええ、昨日秘密にしようとした人はココにいますけど」
コイツあっさりと裏切りおった‥‥、皆の視線が突き刺さる。痛い!痛いってば!
「ななな、何バカなことを言ってるの?今こうして皆に振る舞ってるじゃないか!まさかとは思うけど、私がそんなことをするような人間に見えるとでも?」
「「「「「勿論!」」」」」
ちくしょう!全員即答かよっ!
「この人数じゃ全然足りねぇな。もっとあるんだろ?素直に出せ」
「あるわよね?イトちゃん?」
「「親分すいやせん‥‥」」
『おやびんちゅまぬ‥‥』
「てめぇら‥‥ちくしょう泣かせるぜ。こうなったら持ってけ泥棒~!!」
くっ、よもやここまでか‥‥。秘技、大盤振る舞い誤魔化しの術!3種類のお菓子を50個ずつ献上する。お前達また作ってやるからな‥‥あばよ。
「多少日持ちするみたいなので、食べる前に各自確保しておきましょうか」
「な、何故そのことを!?」
「昨日食べて何となく?」
約半分が瞬く間に消えた‥‥。呆けている場合じゃない!私も自分の分を再びクワ太へとしまう。ここで動いておかないと、まだあることが確実にバレる!
「ねえ、このままお昼ご飯にしない?」
「えっ!?もうそんな時間ですか?」
「確かにもうそろそろお昼ね」
「今日はまだやることがあるし、焼きたてパンでいいよ」
『わーい!ほかほか!』
「焼きたてってのがいいな」
「俺もいいぞ!」
「僕も!」
「私もいいわよ」
「よ、喜んで~」
ぐすん、小腹用残るかな‥‥。
大皿に3種類のパンをとりあえず20個ずつ積み上げ、コップに氷水を用意して配った。
「朝食べているのでパンの説明は省きます。では、いただきます!」
『いただきまちゅ!』
「「「「「いただきます!」」」」」
パンが瞬く間になくなっていく。ヤミルさんなんか両手にパンを持ってるぞ。でもやっぱりパンだけじゃ寂しいよな。肉とか野菜も食べないとバランスが悪いしさ。っ!?忘れてたぁ~!
「あの~、昨日のカレーだったら少し残ってますけど、ど「「「「「食べる!」」」」」うしますか‥‥」
『たべる!』
「あ~、はいはい。じゃあ用意しますね」
カレーと揚げ物4種を盛り付けて皆に渡す。無論、私も食べるよ。
『わーい!カレーだー!』
「毎日食べても飽きないよね」
「だな、旨!」
「何度食べても美味しいわ」
「今日も旨ぇな」
「イト、お替わり出来るの?」
「うん、大丈夫だよ」
『おかわり♪』
「「「「早っ!?」」」」
コハクは本当にカレーが好きだなぁ。そんじゃ大盛りにしてやりますか。
「ぶるぅ~」何だこの声、凄く近くで聞こえたぞ。誰かがご飯をあげようとして精霊を喚び出したのかな?うわぁ、めっちゃ鼻息荒い!落ち着け、髪を食べるなっ!ちょっと待ちなさい、今カレーを装ってあげるから。「ほらお食べ」お皿を置いて顔を上げると馬がいた‥‥
「‥‥う、う、馬もがあぁっ!?」
オビトに口を塞がれる。マジビビった‥‥。馬はお皿に顔を突っ込んで、カレーをバクバクと食べている。やっぱりお腹が空いてたのか。新たなお皿にパンも置いてあげると、猛烈な勢いでパンに齧り付いた。
さてさて、私は食後のお菓子と行きますか♪温かいうちにどら焼きとドーナツ、それからジャムクッキーと行こう!あむっ、ほわぁ~今日も美味しいねぇ。牛乳が飲みたいぞっと、空のコップに並々と注ぐ。すかさず手を挙げた5名と跳ねた1名、あいよ~。そして脇腹をグリグリする奴を発見。はいはい、お前も飲むってのね。
馬って全然草食動物じゃないじゃん。ん?そもそも馬じゃないんだっけ。当初の本命、甘いお菓子も食べるかい?試しにどら焼きを口に持っていく、さあどうする?食い付いたっ!いや、食い付き過ぎ!!私の手まで食べるの禁止!
まだぶるぶる言うので、お次はドーナツ。どうだい、これも旨いだろ?最後はジャムクッキー。パカっと開けた口に放り込むと、食べた瞬間に目が輝いた気がした。そうかお前はこれが一番好きか。クワ太からさらに50個程出して、牛乳と一緒に置いてあげる。
オビトが空になったお菓子皿をモグモグしながら差し出して来たので、追加でジャムクッキーを50個出してやった。私の偽装工作が完全にバレてる‥‥。
「しかし、お菓子に目が眩んでスレイプニルを忘れるとは、俺達もイトに毒されてきたな」
「俺もコイツが来るまで完全に忘れてました」
「イトちゃんの料理が美味しいのがいけないのよ」
「攻撃されなくて良かったよね」
「それで、この子をどうするつもりなの?」
問題の馬は、私の膝に頭を乗せて現在お昼寝中。全てを食べ切ったと思ったらネックレスに頬擦りし、そのままご就寝された。おかげで私も身動きが取れず、食後のまったりタイムへと突入している。
鼻がすぴすぴしていてとっても可愛い。うんにゃ、よく見ると顔も格好いいぞ。寝てるから、ちょっとステータスを見ちゃおうかな。
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年齢:1
種族:スレイプニル(幼体)
Lv:3
スキル:<駿足><凶脚><飛翔>
状態:イト・サエキ従属/睡眠
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HP(生命力):38/57
MP(魔力):21/57
STR(筋力+(攻撃)):13
VIT(体力+(防御)):8
AGI(敏捷+(敏捷)):15
INT(知性+(魔力)):10
DEX(器用+(器用)):6
LUK(幸運+(幸運)):5
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「っ!?何だってぇ!!どどど、どうしよう!?」
「どうどう、落ち着いて。どうしたの?」
やっぱり犯人はお前だったのかオビト!いや、今はそんなことを言っている場合じゃない!
「この子、私の従属になっちゃってるよ!何でっ!?」
「「「「「‥‥餌付け成功」」」」」
『かーしゃん、コハのにーたん?』
「う~ん、年齢を考えるとそうなるのかなぁ。コハクは嬉しいの?」
『あい!』
「そうか、そうか、じゃあいっか。この子も話せるようにしてあげないとね」
「「「「「軽い‥‥」」」」」
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[翡翠]
<無属性魔法>が付与された宝石
〈効果:言語理解〉
〈製作ボーナス:完全防御・不壊・防汚〉
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作成条件:無属性魔法・細工・錬金Lv6
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[翡翠]
<無属性魔法>が付与された宝石
〈効果:不審者撃退〉
〈製作ボーナス:偽装・不壊・防汚〉
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作成条件:無属性魔法・細工・錬金Lv6
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コハクのときみたいに作ったけど、<吸収>を持っていないからどうしよう。ん~、そういえばオビトも皆も飛んでるな。これって<吸収>してないけど、重量軽減されてるってことだよね。じゃあ身に着けられるように加工してみよっかな。
魔石(透明)も取り出して、3つを『形状変化』させてピアスにする。翡翠は輪っかに、魔石(透明)はイヤーカフスをもっと長くしたような形状にしたら、魔力を部分麻酔に見立てて耳を撫でる。右耳に翡翠を2つ、左耳に魔石(透明)を着けて継ぎ目を『結合』して閉じた。そんじゃ「痛いの痛いの飛んで行け~」白い光が耳を覆う。これで良しっと!
身体の色が青鹿毛だからなかなか似合ってる!ついでに名前も決めちゃうか。コハクと一緒で翡翠だから
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ヒスイ
年齢:1
種族:スレイプニル(幼体)
Lv:3
スキル:<駿足><凶脚><飛翔><完全防御><偽装><縮小><重量軽減>
状態:イト・サエキ従属/言語理解/不審者撃退/睡眠
+-----+-----+
HP(生命力):38/57
MP(魔力):21/57
STR(筋力+(攻撃)):13
VIT(体力+(防御)):8
AGI(敏捷+(敏捷)):15
INT(知性+(魔力)):10
DEX(器用+(器用)):6
LUK(幸運+(幸運)):5
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