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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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 食堂の片付けをオビトと一緒に手伝って(パン屋のオヤジは外に座らせて戸締まり)、晩ご飯を机に用意して5人で席に着く。鍋を出した途端、食堂中にカレーの匂いが広がった。ギンガさんとレイアさんの鼻がくんくん、コハクが肩の上でふるふると動く。

 皆に説明したように2人にも食べ方の説明をして、コハクも食べたそうにしているので装ってあげる。


 「このカレーというのは酷く旨いな‥‥」

 「辛いのにどんどん食べたくなっちゃうわ」

 「今回はご飯に掛けてカレーライスにしましたけど、パンの具にしたり麺類のスープにしても美味しいんですよ」

 「それに油で揚げるという発想が凄い。揚げたものがこんなに旨くなるとは」

 「熱々なのがまたいいわね」

 「マヨネーズと醤油ドレッシングも信じられん味だ。野菜だけではなく他の料理にも使えそうだな」

 「ええ、酸っぱいのが何とも言えないわ」


 今回も概ね好評で良かった。おっと、忘れてた。コーンマヨパンと葡萄パンを5個ずつ取り出して渡す。


 「厨房をお借りして焼かせてもらったコーンマヨパンと葡萄パンです。焼きたてなので熱いうちにどうぞ」


 そう言って私も食べる。「ふまぁっ!」葡萄パンは上に載せたグラニュー糖が好きだ!甘いのにほんのりしょっぱくて、このバランス感が何とも言えん!コーンマヨパンは王道の1つだよね。この何処にでもあるけど美味しいのが最高!コハクは両方とも一口で食べてしまい、ほっぺたにスリスリして来たのでもう1個ずつあげた。


 「イトの作るものは全て旨いな。明後日からが待ち遠しくて仕方ない」

 「私も美味しいものが食べられると思うと、毎日が楽しいわ」

 「明日も晩ご飯を作って来るので是非食べて下さい」

 「ねえイト、このパンを売るとしたらいくら?」

 「う~ん、1個50~100ギルかなぁ」

 「本気か!?酵母もそうだが安過ぎる!」

 「イトは今後普及させるなら、砂糖の値段も10kg1,500ギルだって言ってるよ」

 「買い手としてはありがたい話だが、今まで存在しなかったものを果たしてその値段で売っていいものか‥‥。俺では判断がつかんな」

 「だから明日冒険者ギルドマスターに相談するつもり。もし高くなったとしても父さんもその値段でいいよね?」

 「当たり前だ」


 ギンガさんから酵母x2瓶分の値段10,000ギルを受け取り、そのまま売買もしてしまう。本日大量入荷したオーガ肉2匹分をお買い上げいただき、666,666ギルの収入(オビトと半分こ)。さらにおまけで、オーガの脂身を6匹分プレゼントした。

 その後お願いして、明日の仕込みをするギンガさんの横でまた厨房を使わせてもらえることになった。オビトはちゃっかり100ギルでコーンマヨパン・葡萄パンを10個ずつお買い上げ。それに便乗して、ギンガさんとレイアさんも2個ずつご購入です(明日の朝ご飯らしい)。毎度あり!




 ギンガさんと2人で作業する(コハクはオビトの部屋へ)。今日量産するのは酵母・醤油・味噌・みりん・お酢・料理酒・バター・植物油・マヨネーズ・パン粉、大量に作ってクワ太へぽいっと。

 さてここからが本番です。作るのはチーズ・ソース・ケチャップ・ヨーグルト・胡麻油・オリーブ油・ラー油・片栗粉・きな粉・だしの素・鶏がらの素・中華の素・デミグラスソース・ブイヨン・コンソメ・めんつゆ。の、はずがったがここで2L瓶が品切れ‥‥、もう自分の計画性のなさに自分でドン引きだ。ここは開き直ってお菓子を作りますかっ!!


 鍋を出して小豆を水に浸けたら、助促さ~ん出番ですよ~!で、煮ると、また出番‥‥。てことで黒砂糖・塩・隠し味の醤油を入れて餡が完成。これでどら焼きとあんパンを作る。どら焼きの生地とパン種を作ってと、餡を詰めて胡麻をパラっとふってオーブンへ。

 モソモソとしたパンがあまり好きじゃないので、あんパンはフランスあんパンにしちゃいます!普通のやつしか食べたことのなかった私が、あるチェーン店で初めて食べたときの衝撃は計りしれないものだった。長期間に渡り、めっちゃ通いまくったかんね!後に某コンビニで発売されたフランスあんパンマーガリンが、今日こんにちのぽちゃっとぷりを決定付けたといっても過言ではない。いや、他にも理由はたくさんあります‥‥。

 あんパンを焼いている間に、鉄板を借りてどら焼きの皮を焼く。焼けたものに餡を挟んで‥‥完成!これも1つ残してクワ太へGO!


 あんパンが焼き上がるのを待っている間に、どら焼きをいただきま~す!「ふまぁ~い!」仄かに感じる絶妙な塩加減の餡に、ふわっとモチっとした優しい甘さの生地もいい。でも、それより何より焼きたてなのが一番いい!冒険者ダイエットを根本から覆す存在だなぁ、お前って奴は。しかもこの後、止めを刺しに奴が来る‥‥。

 焼きたてあんパ~ン!これも1つ残して、パクっ「ほわぁ~!」多めに入れたバターがいい!噛み応えのあるパリっとした生地に、香ばしく焼けた胡麻の風味が何とも言えず最高っ!この2つを量産してっと。


 次に取り出しますはボウルと鍋、クッキーとドーナツを作りますぞ!おっと、ジャム様を忘れてはいかん。苺ジャム食べたかったんだ~。鍋に苺と砂糖を入れて、また出番だよ~!レモンを入れて煮る、また‥‥。

 クッキー生地とドーナツ生地を作って、クッキーは上に苺ジャムを乗せて焼く。ドーナツは成形して熱した植物油で揚げて、仕上げにグラニュー糖を軽くまぶす。

 ヤバい!夢中になってたから気付かなかったけど、ジャムを煮て焼いてたから匂いが凄い。奴らに気付かれる前にしまわないと、私の分が減って


 「イト終わったの?」

 『‥‥‥‥‥』

 「う、うん。今片付けてるところだよ」

 「父さんはまだ掛かるみたいだし、ちょっと話でもしようか」

 「わ、私、今日はもう眠いなぁ」

 「まあそう言わず座りなよ」

 『‥‥‥‥‥』

 「‥‥はい」


 無言の攻防が続く‥‥。しかし、お菓子だけは絶対に渡さんぞ!


 「イト、オビト、ちょっとこのパンを試食してみてくれないか?」

 「はい」

 「いいよ」


 ギンガさんのことだから美味しいんだろうな。こいつは楽しみだ、パクっ「‥‥塩パンだ」初日にして、早くもバターたっぷりな熱熱カリカリの塩パンにありつくことが出来るとは‥‥驚くばかりである。

 

 「やはりイトの知っているパンだったか。オリジナルのつもりだったんだがな」

 「すみません、私の故郷はパンの種類がとても多いので」

 「いや、イトの食べたことのない料理を作るのも楽しそうだ」

 「お腹がいっぱいでなければ、私の作ったパンも食べますか?」

 「ああ、いただこう」

 「俺にも頂戴」

 『‥‥‥‥‥』


 あんパンを3つ出して渡すと、丸っとしたパンに2人が齧り付いた(コハクは丸呑み)。


 「‥‥旨いな、中身が甘いんだが甘いだけじゃないのがいい」

 「美味しい‥‥。俺はさっきの葡萄パンよりこっちの方が好きだな。これも100ギル?」

 「うん、中に入ってるのが小豆の餡だからあんパンって言うんだよ」


 オビト20個・ギンガさん4個、お買い上げありがとうございます!


 「しかしこの匂いはこのパンじゃないな‥‥。他にも何か作ったのか?」


 ぎくぅっ!?折角堪え忍んだというのに、ここでギンガさんからの突っ込みが来るとは予想外だ。おかげで身体が不自然に跳ねてしまった‥‥、何とかこの場を凌ぐ手段はないものか。


 「どうせイトが言うところの野望をしたんじゃないの?俺が思うに、‥‥お菓子‥‥」


 あちゃ~、ギリギリアウト~!!オビトから逃げられると思っていた私がバカだったよ‥‥。どら焼き・ジャムクッキー・ドーナツ・プリンを渋々出した。


 「右からどら焼き・ジャムクッキー・ドーナツ・プリンというお菓子になります。プリンはギンガさんとレイアさんの分だけです」

 「見たことのないものばかりだな」

 「これが1人で食べようとしてたお菓子か‥‥、余程美味しいんだろうね」


 してやったりといった感じでオビトが言った。むっきぃ~、悔しい!独り占めするつもりはなかったんだけど、いざ作ってみたら久し振りのお菓子達が私を誘惑するからいけないんだよ‥‥。うぎゃぁ!考え事している間に確保されてるっ!

 私も急いで自分の陣地に囲い込む。ど・れ・に・し・よ・お・か・な、よし、君に決めた!ジャムクッキー♪ではでは‥‥「んまぁ~い!!」ななな、何だこれは!?本当に私が作ったクッキーなのか。いつもの作り方をしたにしては旨過ぎるぞ!

 いや、いま思えば作ったご飯はどれも美味しかった。でもそれは、出来たて焼きたてによるものや、念願の料理がもたらす旨さだと思っていたが、‥‥<鑑定>さんお願いします。


 なぬぅ!?<鑑定>出来ないだと!?ということは


+-----+-----+-----+

イト・サエキ(佐伯 絲)

年齢:16

職業:-

Lv:10

冒険者rank:4-132/L4

商業rank:-

スキル:-

SP:180

状態:-

受注クエスト:-

+-----+-----+

HP(生命力):220/280

MP(魔力):9,260/10,180

STR(筋力+(攻撃)):35+(135)

VIT(体力+(防御)):34+(140)

AGI(敏捷+(敏捷)):31+(125)

INT(知性+(魔力)):49

DEX(器用+(器用)):55+(30)

LUK(幸運+(幸運)):103+(20)

特殊スキル:<家事><習得>

習得スキル:<育成∞><無属性魔法Lv5><異世界言語Lv6><鑑定Lv7><分析Lv7><剣術Lv1><槍術Lv1><斧術Lv1><弓術Lv1><体術Lv3><棒術Lv2><感知Lv4><索敵Lv4><地図Lv4><錬金Lv7><鍛冶Lv2><投術Lv1><身体強化Lv3><治癒魔法Lv1><水魔法Lv2><土魔法Lv1><火魔法Lv2><風魔法Lv1><氷魔法Lv1><付与魔法Lv2><薬剤Lv1>

+-----+-----+-----+


 ‥‥久し振りに見たら凄いことになってる。


 え~っと<鑑定><分析>は、Lv7か‥‥。じゃあこのジャムクッキーは、少なくともLv8以上の出来ということになるのか。そりゃあ旨いはずだぜ‥‥。にしてもスキルの上がり方が尋常じゃないぞ。後でオビトに相談しとこ。

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