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「精霊はこちらの言葉がわかるが話せねぇ。だが、精霊の言いたいことは主人にだけ何となくわかるんだ。頼めば色んなことを手伝ってくれる。俺の場合は鍛冶だな。青い炎を吐くことが出来るから、ランクの高い鉱石なんかの加工に使用しているぞ」
「僕は撫でたりして癒やされてるよ」
「私もリラックスしたいときに呼ぶわ」
「俺はたまに一緒に走ってるぞ」
最後の人どうでもよくない?
「いいか、俺がこれから言う言葉を覚えろ。『汝、我の願いを聞き我の力となり賜え。如何なるものにも侵されぬ不滅の絆で結ばれし者よ、我は汝を望む者なり』だ」
「長いですね‥‥」
「言葉を言いながらひたすら精霊が必要だと願え。そしてギルドカードに込めるように、自分の魔力を何かに込めるんだ」
「何かとは?」
「俺にもわからん。誰かわかるか?」
「わかりませんね」
「俺も」
「自然と出来てしまうから大丈夫よ」
「わかりました、やってみます」
お、ついに始まるぞ。何かのアトラクションみたいでドキドキするな‥‥。
「汝、我の願いを聞き我の力となり賜え。如何なるものにも侵されぬ不滅の絆で結ばれし者よ、我は汝を望む者なり」
何も見えないけど、オビトの周りの空気が動いたのがわかった。どういう原理なんだろうね?言葉に意味はなさそうだから、言葉を発することにより意志を明確にってところかな?わたしの独学<錬金>みたい、いや、かなり近いかもしれないぞ。
ピカっと光った、成功!?
「うぉん!」蒼鉱石のような色をした小狼が現れた。しかもその出で立ちは、私の代名詞である格好可愛いを奪う勢いだ。4匹も興味を持ったのか、私から離れて近付いて行った。
ふぅ、鬼の居ぬ間に何とやら、私にもオーラがあるとわかったからには試してみたい!心の中でさっきの言葉を唱える。ん?何も感じないぞ?しかし私のオーラは白、出来ぬはずがない!「来いっ!」ピカっとなることを想定して両手を高々と振り上げた。
「「「「「‥‥‥‥‥」」」」」
「‥‥‥‥‥」
シ~ン‥‥、上げた手が降ろせない。くそぅ!こうなったら「ピュ~」っと口笛を吹いて誤魔化す。上げていた手を頭の後ろで組むようにして、え?何かありました?的な雰囲気を装った。
「「「「「‥‥絶対やらかした」」」」」
「え?何か言いました?私は口笛を吹いていただけですよ。イヤダナァ、アハ、アハハハ」
ふぃ~、何とかやり過ごしてやったぜ。危ないところであった‥‥。これは私の沽券に関わる大問題だからね。
「それでオビトは何のスキルを取得するんだ?」
「最初のスキルは<錬金>にして、最終的には<鑑定>と<料理>を取得しようかと思っています」
「将来はお店を継ぐつもりなの?」
「いえ、継ぐつもりはないんですが、料理の偉大さを思い知らされましたので」
「あ、それわかる!人生がバラ色な感じだよね!」
「僕も何となくわかるなぁ」
「俺も!飯が旨いと頑張ろうって気になるよな」
おお!心の友よっ!3人の絆がさらに深まった‥‥。
精霊達を戻し、皆がオビトにスキルの使い勝手を説明している間に、私はお昼ご飯の準備をする。今日は何の気分だい?自分のお腹に問い掛ける。何々?揚げ物がいいって?いいよ、お姉さんに任せなさい!てことで、今日は天丼と味噌汁と野菜の朝漬けに決定!
まず昨日と同じ量のご飯を炊いておき、魚介類と野菜の下拵えを済ます(勿論、魚介類は大ぶりで!)。ボウルに小麦粉・卵・水・氷を入れて衣の準備。鍋にトングの脂身を入れて火に掛け、ラードを作っておく。あ~、この油でトンカツが作りたかった‥‥。でもソースがないんだよ(涙)。
野菜をざく切りにして、塩・鰹ダシ・砂糖とお酢と醤油をちょっとだけ入れて揉む。うぅ~、これも昆布と唐辛子が欲しかった~!味噌汁も作って(具はジャガイモと玉葱)、鰹ダシ汁・みりん・醤油・砂糖で作った天つゆを小鍋で煮詰めておく。
それから隠れんぼはダメだったけど、昨日約束したプリンも作っておいた。
じゃあ揚げていきますよ、油の温度を確かめて‥‥よし。「じゅわぁ~!」うひゃ~、いい音!これに天つゆを絡めたら‥‥ジュルリ。
ご飯を装い天ぷらを乗せて天つゆを回し掛け、残りの天ぷらは冷めないようにクワ太へ入れておく。味噌汁も装って浅漬けと一緒に岩机へ。またもや既に着席済の面々は鼻をくんくんさせ、私の合図を待っている。
「お昼ご飯のメニューは、魚介と野菜の天丼・味噌汁・野菜の浅漬けです。それから昨日約束したプリンが食後に付きますのでお楽しみに♪では、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
さてさて、お味の方は‥‥「ふまぁ~!」天つゆがよく絡んだザクザクっとした衣を噛めば、プリっとした魚介の旨味に箸が止まらず、ご飯と一緒にはふはふと掻っ込む。味噌汁と浅漬けもまずまず。皆も丼を抱えながら噛んでるの?って勢いで食べている。天丼は無性に食べたくなるときがあるんだよね。一度でも食べてしまったら君達ももう奴の虜さ、ふっ。
「「「「「お替わりっ!」」」」」
「はいはい、ちょっと待って下さいね」
ご飯を装いクワ太から天ぷらを取り出して乗せ、天つゆを回し掛ける。さらに全員がもう一度お替わりをしてからプリンを出した。
今日もプリンが美味しいな~、幸せ‥‥。このふるふるした感じが最高!ふるふる、ふるふる。ん?足元で何かがふるふるしてる。私、プリン落としてないよね?もしかして、‥‥これって青いスライム?王道のアイツじゃないか!?か、可愛いっ!!
「イトっ!」バシュっ!と音を立てて、タクマさんの槍が青スライムを貫いた。
「うわぁ~!私の青スライムがぁ~!!?」
槍の突き刺さった地面にしゃがみ込み、青スライムの成れの果てを拾う。ふるふるしたゼラチンを少しだけ残した他は、青い欠片が残っているだけだった‥‥。
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[ブルースライムの核]
青スライムの心臓
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使用条件:錬金Lv4
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「ブルースライムはああ見えて、ランク4で水魔法を使うスライムの亜種なんだぞ」
「昔も池の近くでたまに見たよね」
「ただ逃げ足がとても速いのよ」
「でもさっきは、嘘みたいにじっとしてたぜ」
「もしかしたらプリンが食べたかったのかもしれませんね‥‥」
「「「「‥‥一理ある」」」」
こんなことになっちまってごめんよ青スラ。お前のことは忘れないぜ。核と一緒にふるふるゼラチンを撫でていたらゼラチンがプルプルっと動いた、え!?凄く小っちゃいけど、形がスライムになっていく。
目と口が出来て、透明の赤ちゃんスライムの出来上がり!ま、マジで!?
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年齢:0
種族:ベビースライム
Lv:1
スキル:<消化><吸収>
状態:イト・サエキ従属
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HP(生命力):10/10
MP(魔力):10/10
STR(筋力+(攻撃)):1
VIT(体力+(防御)):1
AGI(敏捷+(敏捷)):1
INT(知性+(魔力)):2
DEX(器用+(器用)):2
LUK(幸運+(幸運)):3
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さっきの青スラが最後の力で生んだのかな?それとも分裂?どちらにしろ私が飼うことは決定事項だ!お腹空いてるかい?ふるふるついでに食べかけで悪いがプリンでもお食べ。
スプーンに乗っけて差し出すとパクっと食べた。が、スプーンの先もなくなってしまった‥‥<消化>怖っ!このままだと無限にスプーンが必要になっちゃうぞ。言葉が通じればいいのにな‥‥。
ぽくぽくぽく、ち~ん。閃いた!琥珀の塊を取り出し包丁で端をカット、手で握り込み『言語理解』を琥珀に込めてみる。くっつけ~、定着しろ~、お前は『言語理解』持ちになるのだ~!ついでに青スラみたいにやられたら困るから、攻撃が効かないようにしとかないと。
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[琥珀]
<無属性魔法>が付与された宝石
〈効果:言語理解〉
〈製作ボーナス:完全防御〉
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作成条件:無属性魔法・細工・錬金Lv6
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出来た!ほらお食べ。「美味しい?」『まじゅい』っ!?もう一度プリンをあげてみる。「上に乗ってるのだけ食べるんだよ」パクっ!『あまくておいち』キ、キタコレっ!?
天丼・味噌汁・朝漬けもあげたが『おいちいけど、あまいのちゅき』と言われたので黒砂糖をあげる。ぽぅんと跳ねて喜んでるのがこの上なく可愛い。終いに『かーしゃん、もっと』と言われたときには悶えたね!
私を母親だと思ってるみたい。勿論喜んで!まずは名前を付けてあげなきゃだね。う~ん、‥‥琥珀を食べさせたからコハクでいいか。「お前の名前はコハクだよ」と言うと『コハ、かーしゃんちゅき』と言われた。なっ、なんちゅう可愛さ、あまりの衝撃に言葉が出ない!私がコハクの可愛さに悶絶していると
「‥‥ねえ、そのスライム喋ってない?」
「うん、喋ってるよ。だって喋れるようにしたんだもん」
「「「「っ!?」」」」
「どうやって?」
「宝石に『言語理解』をちょちょいと付与したのを<吸収>させて」
『かーしゃん、どちた?』
「「「「「‥‥‥‥‥」」」」」
『くろいの、もっと』
「結構たくさん食べたからこれで終わりだよ」
『あい』
「可愛い‥‥」
「萌える‥‥」
「滾る‥‥」
「これが孫‥‥」
「俺、弟が欲しかったんだ」
おいっ!?滾ると言った奴は何処の何奴だっ!慌ててコハクを肩の上に乗せるも、すかさず周りを囲まれツンツン突かれるコハク。『あうっ』って言うたびに悶えている奴が約2名、ここまでも心の友だったとは‥‥。
「改めまして、今日から家の子になったベビースライムのコハクです。コハク、ご挨拶して」
『コハでちゅ』
「オビトです」「メリダです」「タクマです」「セイジです」「ヤミルです」
『オビ、メリ、タク、ちぇい、ヤミ』
「「「ちぇ、ちぇい‥‥ぶふぅっ!」」」
「うわぁ~ん!イトちゃん何とかしてぇ!」
「コハク、ちぇいじゃなくてセ・イ・ジ」
『ちぇいち、‥‥テチ』
「テチ‥‥コハク頼む、もう一声!」
「「「テチ、大人げないぞ!」」」




