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織りなす絲  作者: 琴笠 垰
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30

 スタコラサッサと逃げ帰り、げふんげふん、速やかに退散した私達はタクマさん家の工房へとやって来た(狸親父は笑顔で手を振ってたよ‥‥)。


 「じゃあ、報酬を分けますね。合計で7,770,500ギルだったので、1人1,295,083ギルです。余りは2ギルなので、私とオビトで分けてしまっていいですか?」

 「これだけ稼いでおいて細かいことを気にすんなよ」

 「問題ないわ」

 「5ギルだった場合誰が貰えなかったのかが気になる‥‥」

 「いいぞ、持ってけ」


 次にオビトが解体された魔物を出していく。トングの肉・皮・脂身・レバー・骨x1匹分、チキリの皮付き肉・レバー・骨x1匹分、ウルカの肉・皮・骨x2匹分、ギュシの肉・皮・舌・脂身・レバー・骨・角x23匹分。

 トング・ウルカの皮とギュシの角半分とギュシの皮半分をセイジさんが、ギュシの角半分をタクマさんが、残りのギュシの皮半分を私が引き取った。数の少ないトング・チキリ・ウルカの肉・脂身・レバー・骨については私が全て貰い、ギュシの肉を全員で分けることにした(オビトの分は私と共有)。ギュシの舌・脂身・レバー・骨は誰もいらないと言うのでありがたくいただく。

 

 「しかし3回目でもうランク3かよ。ホントに凄ぇよお前達」

 「皆さんのポイントも貰っちゃったからです。すみません」

 「今日一緒にいたからわかるけど、僕達がいてもいなくても関係ないと思うな」

 「むしろ早めに帰って来た分足を引っ張っちゃったわ」

 「違いねぇ」

 「そ、それで明日の予定なんですけど、オビトの精霊契約と採取をしたいと思います」

 「「「「「了解」」」」」

 「あの、異議なしですか?」

 「イトは突然突拍子もないことをすっけど、俺は今日めちゃくちゃ楽しかったぞ!」

 「そうね、あと2日‥‥1日があっという間だったわ」

 「美味しい昼ご飯もあと2日かぁ‥‥」

 「「っ!?」」

 「ふふん、俺はこれからも昼・夜食べられるけどな」

 「あぁ~!タクマさん汚ねぇぞ!」

 「これは由々しき問題ね。改善策を考えないと‥‥」

 「僕、お昼はお店を閉めて食べに行きますね♪」

 「「この裏切り者ぉ~!」」


 スッカリ私とオビトのお株を奪われている気がする‥‥。ま、面白いからいっか!私はクワ太から蘇生草を取り出す。


 「ちょっと相談なんですが、この蘇生草1日で腐るらしいんです。どうしたらいいと思いますか?」

 「腐らせるには惜しいわね」

 「『乾燥』しておけば?」

 「なるほどっ!今日もキレキレだね、オビト!」

 「‥‥キレキレついでに俺にも1本頂戴」

 「いいよ、ほい。じゃあ『乾燥』『粉砕』!」

 「「「「‥‥軽い」」」」

 「あちゃ~、しまった。助さん使えば良かったんだ‥‥」

 「助さんって誰のこと?」


 皆に保温・冷却・高熱・氷結・時間促進・時間停止の機能を持った助さん達の説明をする。ついでに神殿から失敬してきたことも伝えると絶句されてしまったので、慌ててゴミ同然のような扱いだったんですと弁明しておいた。

 少し考え込んだ後、オビトが時間停止の3枚ある内の1枚をギンガさんにあげられないかと言うので了承する。不定期にお肉を買ってもらうことになるなら確かに必要だもんね。渡す予定のやつに魔石(透明)を『合成』させて渡す。これでいくらでも入るから大丈夫だろう。何をしたかわかったオビトは、小さな声で「ありがとう」と言った。


 『乾燥』『粉砕』させた蘇生草は瓶に入れてクワ太行き、の前にちょっと舐めてみよっと。案外美味しかったらどうしましょ‥‥、それペロリ。


 「‥‥う、うぎゃ~!ま、まず、激マズ‥‥ぐふぅ~!!」

 「バカじゃないの?草が美味しいはずないのに」

 「辛辣‥‥」「毒舌‥‥」「容赦ない‥‥」「担当者は違う‥‥」

 「他の草もこんな味がするの!?私、そんな不味い薬飲めないってば!」

 「良薬は口に苦しって言葉知らないの?だから効果があるんだよ」

 「うんにゃ!その考え方は間違っておるぞ!こうなったら私自らが作るしかないようだのぅ。まあお主はそこで見ておればよいわ。ふぉ~ふぉっふぉっ!」

 「あ、ほっとけば勝手に終わりますから」

 「「「「‥‥オビト先生」」」」




 夕方にはまだ早いので晩ご飯の準備を買って出ると、飛び上がらんばかりに喜ばれた。何が食べたいかと聞くと任せると言われたので、パンとシチューを作ることにする。タクマさんにお願いしてオーブンに火を入れてもらっておく。


 まず牛乳を『分離』して乳脂肪分を濃縮させて生クリームを作り、それをさらに水分と乳脂肪に『分離』させてバターを完成させておく。

 さてここからはパン作り。ボウルに強力粉・酵母・水・砂糖・塩を混ぜ合わせてこねる。粉気がなくなったところでバターを加えさらにこねて固まりにして、倍になるまでほっといて1次発酵。


 発酵させてる間にシチューの下拵えをする。チキリの肉と野菜を1口大に切って、熱した鍋にバターを入れてチキリを炒めて取り出し、次に玉葱・他の野菜を炒める。ブイヨンをまだ作っていないから、水からじっくりと煮込んでおきたい。

 さてここで煮込み時間を短縮しようじゃないか!助促さ~ん、出ておいで~!私の語るも涙な経験上だと約9,000倍速(1時間で1年位)、てことは1秒で2時間半。1、はい開く!どれどれ、よし、いい感じだ!このまま弱火で煮込んでおこう。

 そうしている間に膨らんだパン種をガス抜き・分割・丸めてまた放置。時間があるのでパンに挟める具を作っておこうかな。トング肉を薄切りにして軽く塩・胡椒したものをプライパンで焼き、そこに料理酒・砂糖・みりん・醤油を入れて、煮詰めて照り焼きにする。それをちぎった葉野菜と一緒にお皿に盛り付けた。


 放置していたパン種を成形して、また倍になるまでほっといて2次発酵。フライパンでバターと小麦粉を炒めてから、牛乳でダマにならないように伸ばしベシャメルソースを作る。パン種を確認するといい感じで膨らんでいたので、オーブンの温度を確かめて突っ込んだ。10分から15分位かな?

 煮込んでいた鍋はじんわりと素材の旨味が出ていたので、ベシャメルソースを投入。塩・胡椒をして味見、よし完成!パンの方はどうかな?うわぁ、美味しそう!下がジュワジュワっとバターでカリッカリになってて、こんがりまるっと焼けてる見た目がヤバい‥‥いやいや、焼きたての匂いの方がもっとヤバい!


 「出来ましたよ~」と呼び掛けるまでもなく、既に全員ご着席済ですね。ん?1人多くない?私を入れて1・2‥‥7!?


 「え、エジムさん!?」

 「やあ、さっき振り!タクマの家に遊びに来たら帰ったはずの君達がいたんだよ。いや~、偶然って怖いね」

 「「「「嘘ばっかり‥‥」」」」

 「しかしいい匂いだね。私もご相伴に与ってもいいかい?」

 「たくさん作ったので大丈夫ですよ」

 「ダメだイト!この人こう見えて痩せの大食いなんだ!俺の分がなくなる!!」

 「そうよイトちゃん。こんな狸親父に食べさせたっていいことなんて1つもないわ」

 「あわわわわ!?メリダ、狸親父って言っちゃってるよ!」

 「イトの飯が掛かってんだ。お前に食わせる飯はねぇ!」

 「何とでも言いたまえ。私はもうイトちゃんの許可を貰ってるんだからね」

 「皆さん落ち着いて下さい。明日もイトのご飯は食べられるんですから」

 「「「「‥‥今日だけ我慢」」」」

 「じゃ、じゃあ説明します。晩ご飯のメニューは焼きたてパン・チキリと野菜のシチュー、それとパンに挟めるトングの照り焼きと葉野菜になります。挟むときはナイフでパンに切れ目を入れてバターを塗って下さいね。では、いただきます!」

 「「「「「「いただきます!」」」」」」


 私はパンから行こうかね。「あちちっ!」うむ、これぞ焼きたての醍醐味じゃ!真ん中をザクっと割ると、ほわぁ~と上がる湯気と一緒に立ち上るパンのいい匂い!くんくん、ふぁ~美味しそう、ではガブり‥‥「ふまぁ~!」これだよコレ!噛むほどに口に広がるバターの味わいと仄かな甘み、そして外はカリっと中はモチっと、んんん~最高!

 さてさてシチューの方はどうだい?スプーンで掬うとトロ~っとしたホワイトソースがなんとも言えない。お味の方は‥‥「あ~、生き返る~」濃厚でクリーミーな口溶けに牛乳とバターの優しい甘さ、ほんわかして家に帰って来たって感じがするよ。

 2個目のパンに切れ目を入れてバターを塗り、葉野菜と照り焼きを挟む。ここまで来て悔しい。いい油があればマヨネーズを作ったのにな。まあ今さら言っても仕方がない、ではガブっとな。「おいひぃ!」とてもいいね!いやぁ、甘辛の照り焼きがひたすら旨い!バターと葉野菜のシャキシャキがまたそれを引き立てていて、そしてそれを受け止めるパン、とれびあん!


 もきゅもきゅ食べていると、お昼のときみたいに静かだった。まさかコレは‥‥、顔を上げるとエジムさん以外はもう何個目・何杯目の世界に突入していた。エジムさんは昼の皆みたいに呆然としてお皿を見ている。

 ヤバい!ギンガさんとレイアさんの分を確保しとかないとなくなっちゃう!お皿を出してパンと具を乗っけて、小鍋を出してシチューを装う。出しておくと食べられそうなので、急いでクワ太に突っ込んだ。


 あ、エジムさん復活!ヤミルさんが取ろうとしたパンを横から掻っ攫って、3口で食べた。今度はタクマさんが挟もうとした照り焼きを強奪、こちらは2口で食べた。その後セイジさんが装うとして持っていたお玉を奪い取ると、深皿にこれでもかとシチューを盛り付けた。この人どっからどう見てもガキ大将だな、マジで質が悪い。


 確保しといて大正解!見事に全てなくなった。


 「「ご馳走様でした!」」

 「「「「「ご馳走様でした‥‥」」」」」


 前2人は言わなくてもわかるよね?私と勿論エジムさんです。あれだけ皆が嫌がっていた理由が遅ればせながらわかったよ。本当にごめんね。


 「酷いなぁ。君達はイトちゃんのご飯を昼も食べて、尚且つ明日も食べるんだろう?私も明日からここに通うことにするよ」

 「な、何言ってるんですかマスター!今日だってまだ仕事の時間じゃないですか!?」

 「えへっ、タクマと遊びたくて早退して来ちゃった♪」

 「はぁ‥‥、ヤミル諦めましょう。この人から逃げることは不可能よ」

 「僕は自分の分がちゃんとあればいいからね、イトちゃん!」

 「そうだな、コイツらが来る前に俺達で食っちまえばいいんだ。セイジ、お前たまにはいいこと言うな」

 「「「う、裏切り者ぉ~!!」」」


 エジムさんも一緒になって叫んでる。何だかんだ言ってノリは一緒なんだな‥‥。


 「あ、1人500ギルです」

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