3-2日目
朝、凄く早い時間神官さんに起こされた。昨日は遅くまでそこいらに転がっていた道具や本を触ったり読んでいるうちに、座ったまま寝てしまったようだ。
鞄を1つ渡され、自分の荷物を入れるよう指示される。鞄は使用者の身体容量相当が入る魔法鞄らしく、この世界では誰でも持っているものらしい。なので、昨日着ていた制服と部屋にあった道具と本を失敬する。汚れてホコリを被ってた位だから大丈夫だと判断した(私が)。
部屋から出ると着いて来るように言われ、いつの間にか神殿・お城と抜けて城壁を出てしまった。そこで徐にお金を手渡される。
「こちらをお持ち下さい」
ピカピカと光る金貨が10枚と白い硬貨が6枚乗った手を見る。
「これは何ですか?」
「サエキ様は精霊契約を行うことが出来ませんので、城内にご滞在いただけません」
「‥‥‥‥‥」
「お還りいただくことも叶いませんので、これからの生活を憂いた王女様より下賜されたものとなります。但し、再びこちらを訪ねられましてもこのようなことは金輪際ございませんので、どうかお忘れなきよう」
色々と憂うのが好きな癖に、勝手に喚び出した女神はポイ捨てかよっ!
「わかりました。ありがたく頂戴します、では」
昨日の件もあるしさっさと退散しよう。あの3人に義理立てすることもないし、どのみち全然仲良くないしさ。とりあえずお金の価値と物価の確認だよね。ついでに食べたことのないお菓子とか甘いものがあるといいな。それと宿、安くていい所を探したい!
「デカっ!」城下町に来ても私より小さい人がいない、何で?子供っぽい人もいるけど背が高いし。う~ん、これって私どう見られてるのかな?まさか‥‥、いやいや大丈夫でしょう!
露店街に並ぶ店々をちょこまかと暗躍しながら覗いていく。ふむ、若干小さめな女の子がチョロついてても特に問題なしと‥‥、治安はいいみたいだな。鞄が盗られたら元も子もないから実は結構ビビってたんだよ。
お店の看板、売ってる品物の名前・値段を確認する。あ、あそこで支払いしてる。え~と、貰ったお金はないみたいだな。
昨日本を読もうとして気付いたことだけど、最初文字が全くわからなくて読めなかった。困ったな~っていろんな本を見ていたら急に読めるようになって、そういえば言葉も何で通じてたんだろうと考えた。で、調べてみました。調子に乗って『ステータスオープン』と念じたらこれが出た。
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イト・サエキ(佐伯 絲)
年齢:16
職業:-
Lv:1
冒険者rank:-/-
商業rank:-
スキル:-
SP:0
状態:言語理解(1日)
受注クエスト:-
+-----+-----+
HP(生命力):100/100
MP(魔力):10,000/10,000
STR(筋力+(攻撃)):3
VIT(体力+(防御)):2
AGI(敏捷+(敏捷)):1
INT(知性+(魔力)):19
DEX(器用+(器用)):25
LUK(幸運+(幸運)):77
特殊スキル:<家事><習得>
習得スキル:<育成∞><無属性魔法Lv1><異世界言語Lv1><鑑定Lv2><分析Lv2>
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「な、何じゃコリャ~!?」
AGI1!?VIT・STRなさ過ぎ!えっ、普通こんなものなの?いや、絶対低いと思いますよコレ‥‥。あれ、でも他が低い分MPがやたらと多い。そして上のスキルは空欄だけど、下の特殊スキルと習得スキルは結構あるぞ。
ふむ‥‥最初文字は読めなかった。でも読みたいと思って見ていたら読めたことから、特殊スキルの<習得>で<異世界言語>を習得。その後、道具や本を調べたことで<鑑定><分析>をさらに習得ってところか。
言葉が通じていたのは、状態にある言語理解(1日)が原因だと思われる。言語理解(1日)を試しに<分析>すると
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〈言語理解/状態〉
言語理解x1日限定
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習得条件:無属性魔法Lv2
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という状態になっていて、その期間が1日というものだった。まず昼の召喚時に魔法を掛けられたと見て間違いないだろう。だから明日には切れて、言葉がわからなくなってしまうということになる。でも今は習得スキルに<異世界言語>があるから、明日切れても言葉も文字も多分大丈夫なはず。
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〈異世界言語Lv1〉
アラミタ標準言語・文字の使用
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習得条件:異世界言語Lv1
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ちなみに<家事><習得><育成∞>、転がっていた道具と1冊の本については何も見えなかったんだよね。
そろそろお昼か、ちょっとのんびり見過ぎたかも。さて、多分1日過ぎた。で、言葉は‥‥うん、大丈夫みたい。ホっとしたらお腹が空いてきたぞ。さっき見つけた美味しそうなお店で食べてみよっと!
「オジさん、これ凄くいい匂いですね」
「トングを焼いたもんだよ」
「1つ貰えますか?」
「銅貨2枚だ」
「あの、‥‥すみませんこれ、金貨かな?これで大丈夫ですか?」
「‥‥金貨か」
露店のオジさんはこれまた大きい人だった。職人気質でちょっと頑固そうだけど、美味しいものを作る人に悪い人はいないもんね!
「ほら、銀貨9枚と銅貨8枚だ。あと熱いから気を付けろよ」
「ありがとうございます!」
齧り付く、はふはふ‥‥「美味しい!」塩が満遍なく染み込んでいて豚肉にそっくり。気持ち生臭さを感じるものの、腹ペコがなせる業なのか、そこからは一心不乱にペロリと食べてしまった。
「はあ、美味しかった」
「お嬢ちゃん、旨そうに食うな」
「朝から何も食べていなかったもので。‥‥いや、凄く旨かったんで!」
「ありがとよ」
しかし参ったな、食べ足りん‥‥。綺麗に肉がなくなった骨をじ~っと見ていると
「もう1本食うか?」
「えっ、あの、‥‥いただきます」
銅貨2枚を出す。
「ほらよ」
「ありがとうございます」
あぐあぐ、むぐむぐ。「ふぃ~、お腹いっぱいだ~」お腹をぽんぽこ叩きながら言うと笑われた。