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「○ー○ーグーに~」
お聞きの通り牛丼にします!私は甘辛いものが食べたいんだっ!
先にご飯を炊いておくか。鍋を出して自分を『清浄』。ありゃ、水がなかったよ‥‥流石にこの池の水は嫌だな。てことで水を出してみよう。指先は蛇口、ここからジャバ~っと出ろ!「ジャバ~」よし出た。味は‥‥うん、雑味のない美味しいお水ですね!
これでお米を研いでっと。しまった、竈を忘れてた。土さんや、こんな形で盛り上がって固まっておくれ。おお!?一瞬にして出来てしまった‥‥、これって<錬金>になっちゃうのかな?いや、<土魔法Lv1>が取得出来てる。う~ん、触らないでやったから?
枯れ木を集めて『乾燥』させる。指先はライター、ここから火がボワっと出るよ!「ブォワっ」よ、よし、ちょっと火力が強かったけど火も出たぞ。20合炊いとけば足りるよね?竈をあと2つちょちょいのちょいっと作って、う~ん、やっぱり最初は燃え方が弱いな。指先は扇風機でどう?よしよし、いい風出てるぞ!
うぎゃっ!?作業台と食卓がない‥‥。失敗した~、こんなことならオーブン付き大型コンロと机と椅子を買っておけばよかった。しょうがない、作るか。
竈の脇にある大岩に包丁でぐるっと切れ目を入れてワンパンチ、綺麗に割れたね。下が作業台で横に転がった上が机でいいか、はいこれも『清浄』っと。
お次は「オビト~、ギュシの肉頂戴~!」、まな板と包丁を出して色々と触ったから私も再び『清浄』。受け取ったお肉をちょっと厚めに切って、玉葱をざく切りにする。持っていたトング肉を少し小間切れにして、根菜は一口大に。味の濃いものが多いから、葉野菜は洗ってちぎったものをそのまま人数分盛り付けておき、鰹っぽい魚を『乾燥』『粉砕』して鰹ダシもどきを作った。
「うしししっ」クワ太から黒砂糖と瓶を取り出す。ご紹介しましょう!右から醤油・味噌・みりん・料理酒さんです!実は以前露店街で買っておいた材料を使って、昨日の夜厨房で作りました。砂糖を作ったら創作意欲が止まらなくなっちゃってさ。
お米から種麹を作り蒸米に加えて米麹を、大豆・塩・小麦・種麹から醤油、大豆・米麹・塩から味噌、餅米・お米・米麹・お米で作った醸造用アルコールからみりん、お米からお酢、お米・塩・米麹・醸造用アルコールから料理酒、水・果物・砂糖から酵母を造った。
これらを造るのに使用したのはお馴染みの<錬金>ゴリ押し。あと驚く事なかれ、あの90Lゴミ革袋である(今後は助っ人の助さんと呼ぶことにした)。何となく料理に使えそうだと思っていたら、ズバリ大当たり!水とお湯を使って実験した結果は以下になる。
暖かいのにコップの水を入れたら熱めのお湯に、これは時間に関係なく温度は一定だった(温x3枚)。冷たいのにコップの水を入れたら冷たい水に、これも時間に関係なく温度は一定(冷x3枚)。
熱いのにコップの水を入れたらぐつぐつと沸いたお湯に、熱くて持てなかった‥‥これは閉じた時間に比例するみたいだった(熱x2枚)。試しにお米を1粒入れてみると香ばしく焼けた(ので食べた)。寒いのにコップの水を入れたら氷になった、以下同文(寒x2枚)。
何もないのは驚くことに2種類あった。1つ目はコップのお湯を入れると冷めてしまうもの、これは上澄みにカビが生えた‥‥。大豆を1粒入れてみる、腐った‥‥(時間促進x2枚)。2つ目はコップのお湯を入れるとそのままのもの、代わりに氷になったコップを入れたらそれもそのままだった‥‥(時間停止x3枚)。
袋の口を閉じると発動して開けると解除、じゃないと手が焼けちゃうからホントに良く出来てる。これを作った人はマジ天才だね!
そうして試行錯誤した末、完成したのである!途中何度挫折しそうになったことか‥‥、腐る・炭化・どう見ても有害なカビ・不味い・見るからにヤバい等々‥‥。
眠いことも相まって危険な領域へと突入。奇声を上げながら不気味な笑いが止まらず(一応小声)、端から見たらマッドサイエンティストも真っ青だったろうよ。しかし出来てしまうと、今度は自分で暴走を押さえるのに一苦労であった。
鍋を3つとフライパンを取り出す。1つは豚汁。トング肉を軽く焼いて水と根菜に鰹ダシを投入して火に掛け、コトコト煮込んで最後に味噌を投入。「すぅぅ~、はぁぁ~」あ~、おダシと味噌の匂いだ‥‥。
2つ目は待ってました牛丼さん!水に鰹ダシ・砂糖・みりん・醤油・料理酒を入れて玉葱を入れる。くつくつしたら牛肉を入れてアク取り、味が染み込んでトロっとするまで煮込む。ゴクりっ‥‥、食べてもいないのに匂いだけで知らず知らずのうちに溜まっていた唾液を飲み込んだ。
3つめはプリン♪フライパンに水と白砂糖でカラメルを作り、深めの小皿に流し込む。ボウルに卵と砂糖を入れて混ぜた後に牛乳を追加して混ぜ、それをカラメルの上に流し込んだ。むっふぅ~、もうこのままでいいから飲み干させてくれっ!
鍋に水を張り大皿を入れてその上に小皿、蓋の下に布を挟み空いた竈で蒸せるように準備しておく。いざ作ってみると結構足りない物があるなぁ、やっぱり油系と薬味、それにバニラビーンズとかの香辛料なんて本当に存在します?
いい匂いが辺りに漂う。そろそろ声を掛けておこうかな?と後ろを振り向くと、いつの間にか岩机を囲んで座っていた。皆の鼻がひくひくしてるけど、いつから待機してたのさ?
お米も蒸らしていい具合に全部出来上がったので、プリンを火に掛け鍋を3つ運ぶ。葉野菜を配り、牛丼・豚汁を装って渡していく。箸がないからスプーンとフォークになるけど、これも今は我慢だ。
「お昼ご飯のメニューは、ギュシの牛丼・トングの豚汁・葉野菜のサラダです。それと勝負に勝った私とオビトには食後にプリンが付きますので♪では、いただきます!」
「いただきます!」
「「「「‥‥いただきます」」」」
「う、旨ぁ~!これこれ、これだよ!牛丼最高ぉ~!!」はぁ、ついに塩味以外の料理が食べられた‥‥私、やっとここまで来たんだ。
甘めの味が染み込んだお肉と玉葱はホロッホロ、ご飯にトロっと絡みついた汁ごと口いっぱいに頬張る。う~、もっと噛みたいのに飲み込んじゃうよ。はふはふしながらガツガツ掻っ込む。ズズ~っ「はふぅ~」身体に染み渡る‥‥。豚汁も野菜の優しい味とお肉のコクがおダシと味噌と混然一体になってて、マジ最高っス!この2つは不動の最強のタッグだね!葉野菜もシャキシャキしてて、箸休めにとってもいいぞ。
やけに静かだな。丼から顔を上げると、全員呆然とした顔で空になった器を見ていた。
「まだたくさんありますけど、食べますか?」
「「「「「お替わりっ!」」」」」
装って渡すともの凄い勢いで食べ始めたので、コップを出して水を注ぐ。あ、ちょっと温いかも、氷、氷「ぽちゃんっ」。オビトが胸を叩いてる、ほら言わんこっちゃない。皆にも水を渡してあげる。
私も落ち着いたので、今度は周りを見ながら食べる。食べっぷりが一番いいのはヤミルさん、丼を抱え込んで離さない。セイジさんは涙と鼻水を流しながら食べてる、しょっぱくないのかな?メリダさんは上品に食べてるけどもの凄く早い、どんどんなくなってくよ。
タクマさんは一口が大きいけど味わいながら食べてる、でもなくなるのが早い。オビトはとても美味しそうに食べてる、こういうのを見ると作り甲斐があるよね。
「ふぃ~、美味しかった!」そろそろプリンが出来たかな?鍋を覗くと「プリンだ‥‥」目から涎が出ちまうよ‥‥。丁度いい感じだったので持って行く。皆も食べ終わったみたいで満足したのか放心している。あの後さらになくなるまでお替わりしてれば、当たり前っちゃ当たり前か。
「はいご注目!では本日の賞品、プリンになります!ではオビト君、イトちゃんお召し上がり下さい。わ~い♪」
「このプリンっていうのぷるぷるしてるね」
「それが醍醐味なんだよ、さあ食べて、食べて!うひゃあ~、プリン万歳っ!!」
パクっとオビトが口に入れる。
「美味しい‥‥イト!これ凄く美味しいよ!」
おお~、こんなに興奮してるオビトは初めてかも。では私も、掬った反動でふるふると揺れるプリンをはむっと「んぅ~!!」言葉が出ない程の旨さとはこのことか‥‥。口に入れた瞬間に一瞬にして溶けてなくなってしまった。口の中に残る甘くこっくりとした卵と牛乳の味わい、それをホロ苦いカラメルがピンと一本味を引き締め‥‥、ぶらぼー!
じわ~っと身体にプリンが染み込む、‥‥ようやくお菓子が食べられたよ。今度はオーブンで作る焼きプリンが食べたい!ああ、幸せ‥‥生き抜けて本当に良かった‥‥。空になった小皿を感慨深く眺める。これからはいつでも食べられるんだ、と1人でじ~んと浸っていると服を引っ張られた。
「イトちゃん、負けたのはわかっているんだけど‥‥」
「そんな旨そうに食われたらなぁ」
「僕も食べたい‥‥」
「出世払いで俺にも食わせてくれ!」
「バカ、ヤミルはそれ以上出世しないわよ」
「そういうこと言ってるから彼女が出来ないんじゃない?」
「お前はいつまで経ってもガキだな」
「ぷぷぷっ、今日だけ特別ですよ。食べたければ明日頑張って勝って下さいね」
実はこんなことになるんじゃないかと思って、4人の分も作っておいたんだ。
「「「「‥‥旨い(美味しい)」」」」
「‥‥信じられん旨さだ」
「美味しい~!僕、毎日10個は食べたい!」
「美味しい‥‥、セイジじゃないけど私も毎日食べたいわ!」
「め、めちゃくちゃ旨ぇ!」
そうだろう、そうだろう、君達もお菓子の素晴らしさに目覚めてしまったんだね。知ってしまったらもう抜け出せないよ、‥‥くふふ。
「しかし旨ぇ飯だったな。イトありゃ何なんだ?」
「臨時パーティー万歳!」
「全部旨過ぎてあっという間になくなっちまった‥‥」
「私も気付いたら空っぽになってたわ」
「私の故郷では極普通に食べるもので、他にも色々なお菓子や料理がありますよ。調味料もこれから増やすつもりなので、どんどん作れるものも増える予定です」
「イトとパーティーを組んだあの日の俺を褒めてやりたい‥‥」
「あ~、ズリぃぞオビト!俺だって仕事がなきゃ‥‥」
「僕もお店がなければ‥‥」
「俺も店が‥‥」
「私、仕事辞めちゃおうかしら」
「「「それだけは止めてくれ!」」」
どうしても諦めきれない晩ご飯集り隊は、タクマさんに必死で晩ご飯確保をお願いしていた。争奪戦が繰り広げられそうなので、ちゃんと人数分用意しないとダメそうだな。
「イトが食材を全部買ったから昼ご飯代払うよ、いくら?」
「そうだった、2,000ギルあれば足りるか?」
「ヤミル安過ぎるよ。イトちゃん3,000ギルでいい?」
「あら、セイジこそそれじゃ果物より安いじゃない。5,000ギルで大丈夫かしら?」
「お前達も見る目がねぇな。アレはそんな値段で食えるもんじゃねぇぞ」
「じゃあ1人500ギルでお願いします」
「「「「「激安っ!?」」」」」
「え、でも1食分の値段なんてそんなものですよ?早くて旨くて安いことがある方と主婦の信条ですから」
「はい、500ギル」
「オビト毎度あり!」
「「「「‥‥500ギルです」」」」
「毎度あり!今後ともどうぞご贔屓に!」




