20-11日目
今日は1週間振りに冒険者ギルドへ行く予定だ。1週間の製作で、モクの糸・サア・コトン・各種魔石がなくなってしまったから補充しないとね。あとセイジさんに鍛冶道具を返しに行かなきゃ。
「イトおはよう。入ってもいい?」
「どうぞ。早いね、もう行く?」
部屋に入って来たオビトを見ると、冒険者用の装備をビシっと着こなしていた。しかも装備マジックでちょっと強そうに見える。うむ、我ながらいい仕事をしましたなぁ!
「ちょっと確認したいんだけど、色々装備した後のステータスってどうなってる?」
「あっ、確かにそうだね。製作に夢中で全然確認してなかったや。え~っと‥‥私レベルが2つも上がってる‥‥、製作って経験値になるんだ」
「俺も<分析>していいから、書いてもらっていい?」
「えっ!?人を<分析>するのって失礼じゃない?」
「本人が了承していれば、いいと思うよ」
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イト・サエキ(佐伯 絲)
年齢:16
職業:-
Lv:4
冒険者rank:2-1/L2
商業rank:-
スキル:-
SP:60
状態:-
受注クエスト:-
+-----+-----+
HP(生命力):160/160
MP(魔力):10,060/10,060
STR(筋力+(攻撃)):13+(90)
VIT(体力+(防御)):12+(115)
AGI(敏捷+(敏捷)):10+(100)
INT(知性+(魔力)):30
DEX(器用+(器用)):36+(30)
LUK(幸運+(幸運)):86+(20)
特殊スキル:<家事><習得>
習得スキル:<育成∞><無属性魔法Lv1><異世界言語Lv3><鑑定Lv5><分析Lv5><剣術Lv1><槍術Lv1><斧術Lv1><弓術Lv1><体術Lv2><棒術Lv2><感知Lv1><索敵Lv1><地図Lv1><錬金Lv4><鍛冶Lv1>
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+-----+-----+-----+
オビト・ヨク
年齢:13
職業:-
Lv:1
冒険者rank:2-2/2
商業rank:-
スキル:-
SP:0
状態:-
受注クエスト:-
+-----+-----+
HP(生命力):700/700
MP(魔力):70/70
STR(筋力+(攻撃)):21+(30)
VIT(体力+(防御)):18+(105)
AGI(敏捷+(敏捷)):27+(120)
INT(知性+(魔力)):7
DEX(器用+(器用)):15+(30)
LUK(幸運+(幸運)):11+(20)
+-----+-----+-----+
「何このMP、聞いてないんだけど」
「あれ?言ってなかったっけ?ごめん、ごめん」
「はぁ‥‥、今さらだったね。<錬金>はもうレベル4なんだ」
「多用しまくったからじゃないかな?便利だよね~<錬金>って!」
「いや、普通は成功しないから」
「オビトはHP高いね、私最初100だったよ」
「レベルが上がれば抜かれると思うよ。これを見る限りSPと同ポイントがHP・MP・各ステータスにそれぞれ入ってるみたいだから」
「へえ~、全然気付かなかった」
おお、本当だ!相変わらずオビトは頭がいいな。
「それより装備品効果がステータスより高過ぎるよ‥‥」
「えへへ~、1週間頑張った成果が報われたってもんさ!」
「じゃあ出掛ける前に、鞄の専用実験をしようか。大金も入ってるし、盗まれたら困るんでしょ?」
「そ、そうだった!そのために盗難防止機能を付けたんだもんね!」
実験開始です!まず自分の鞄をお互いに開けて、物を出し入れする。出来ることを確認してから鞄を交換して開け‥‥ようとするが、ウンともスンともジッパーが動かない。
「‥‥凄いね」
「予想通りの機能だよ、ズボンに固定すれば鞄を取られる心配もないからね!ついでに他の効果も確認しちゃおうか?オビト鞄交換して」
自分の鞄を返してもらって鞘から包丁を取り出す。そして鞄に勢いよく振り下ろした。ガキンっ!と音がして包丁が折れて刃先が飛んだ‥‥。
「うわああぁ~!わ、私の包丁がぁ~!!」
「何やってるの‥‥、自分で不壊を付けたんでしょ」
「だっ、だって、まさか折れるとは思わなかったから‥‥」
「まあ、壊れないことも証明されて良かった、良かった」
「心が籠もってなさ過ぎだよっ!」
冒険者ギルドへ行く前に、タクマさんの店に行くことにした。買ってから1週間しか経ってないのに、折っちゃって怒られないかな‥‥。
「オビト、タクマさん怒らないかな?」
「武器はいつか折れるものだから大丈夫。攻撃対象は鞄だったけどね」
「っ!?絶対に言わないでくれ!頼む!」
「じゃあクエストがてら、ネックレスの重量軽減と鞄の解体実験に付き合ってね。あと魔石(黒)の効果も調べたいかな」
「是非ご協力させて下さい!」
そんなこんなで武器屋さんへやって来た‥‥。
「こんにちは~」
やはり普通の音量、2回目からは大丈夫な子なのです。ただ声が震えていますが‥‥。
「らっしゃい。おう、お前達か。冒険者は順調か?」
「はい、まだ1回しか行っていませんが順調です」
「何か問題でもあったのか?」
「イト」
「あ、あのですね‥‥。実は、売っていただいた包丁を折ってしまいまして‥‥、本当にすみませんっ!」
「そんな固い魔物がここら辺にいたのか?」
「え~っと、丁度ですね、骨、いや牙、いや角に当たりまして、ハイ」
「とにかく折れちまったんだな?」
「そうなんです‥‥」
「持って来たんだろ?ちょっと見せてみろ」
腰からベルトごと外して渡すと、タクマさんが鞘から抜いた包丁の断面を角度を変えながら確認する。
「全く刃が立たなかったって折れ方だな。余程固いものを切らないとこうはならねぇぞ。何を切ったか聞いてもいいか?」
「ぎゅ、ギュシです‥‥」
「ギュシか、‥‥まあいいだろう。そういえばお前達防具を新調したんだな」
「はい、ようやく一通り揃いました」
「防具は何処で買ったんだ?」
「‥‥セイジさんのお店です」
「セイジの店ね、‥‥イトお前鍛冶をやったことはあるか?」
「は、はい。セイジさんに少し教わりました。今日、借りていた鍛冶道具を返しに行くつもりなんです」
「オビトはやらなそうだな」
「ええ、俺は専ら酷評専門です」
「くくっ、そうか。お前達ちょっと着いて来い」
店の奥にある工房へ来た。セイジさんと同じで<錬金>を使用しないのか、炉・金床・フイゴ・ハンマー・ヤットコ・ノミ・タガネ・砥石・水桶・木炭・石炭等があった。やっぱり鍛冶道具は大きいし多いな、‥‥今なら多分揃えられるけど炉をどうしようか。宿住まいの身としては、裏庭を占拠する訳にもいかないし。う~ん、森の中でやるのも手か。
「タクマさん、炉って何処で買うんですか?」
「やっぱりそうきたか。お前、今何を考えてたんだ?」
「鍛冶道具を揃えても、炉をどうしようかなって思ってましたけど」
「だろうな、そんな顔してたぞ」
「えっ!?」
思わず顔をペタペタ触ってしまう。あぅっ!相変わらずバレバレだよって顔のオビトに、ほっぺたを突かれる。「俺にも突かせろ」と言って、逆側をタクマさんが突いてきた。
「むぅ‥‥」
「悪い悪い、凄ぇ柔らかそうだったからついな」
「そうそう、パンより柔らかかったよ」
「あんな固いパンと比べないでよっ!」
「くくっ、全くお前達はブレねぇな。イト、この工房を使って自分で直してみるか?」
「いいんですか!?あの、じゃあやらせて下さい!」
「鉄鉱石は持ってるか?」
「いえ、ありませんけど必要ですか?」
「‥‥イトのやり方でやってみてくれ」
「はい、それじゃ道具をお借りしますね」
折れた包丁を返してもらい『分解』、鉄鉱石とアラの木になった。2つに折れた鉄鉱石を『合成』で1つに戻してから『錬成』で柔らかくする。不純物と分かれるように魔力を込めながらコネて『分離』をさせて、『形状変化』で包丁の形に整形してから炉に突っ込んだ。
『硬化』したいけど、流石に熱い鉄鉱石に触る度胸はない。悩んだ末、水桶の水を改良してみることにした。魔力を流して『硬化』出来る水に変化させる、上手くいけば儲けもんだ。
「あちぃっ!」ヤットコで炉から出そうとしたら、パチっと火が跳ねた。金床の上に置いて叩く、『硬化』するから必要ないんだけど気分ですよ気分!それを水桶に入れるとジュワっと音を立てて湯気が上がる、これって何回かやらなきゃダメなのかな?
まあ、形が出来てるからもういっか。水桶の水を使い砥石で包丁を研ぐ。あ、砥石が抉れちゃった‥‥。な、何でも切れる包丁にな~れ!で『合成』、最後に『状態維持』を施すことも忘れちゃいかんよ。
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[アイアンジャズナイフ]
鉄で出来た引き切り包丁
〈効果:STR+50〉
〈製作ボーナス:切れ味∞・不壊・防汚〉
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鉄鉱石+アラの木
作成条件:鍛冶Lv2
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「出来ました!」
「‥‥‥‥‥」
「イト」
黒い微笑みを浮かべたオビトが、自分の包丁を差し出してきた。はいはい、わかりましたよっと。
「はい、オビト」
「ありがとう」
「‥‥‥‥‥」
受け取ったオビトが鞘へ収めると鞘が割れてしまった、割れた‥‥のか?断面を見ると切れたみたいにスパっとしてる。あちゃ~、切れ味∞が原因か。‥‥どうせなら少し格好良くしちゃおうかな。
「タクマさんすみません、お金を払うので鞘の材料を売ってもらえませんか?」
「‥‥いや、お前達その前に問題だらけだろう」
「問題ですか?特にありませんけど」
「その問題じゃねぇ!ああ、悪い。そうじゃなくて、今のは何だったんだ?」
「今のって<錬金>のことですか?」
「‥‥<錬金>を使える奴は俺も知ってるが、こんな使い方出来ねぇぞ。イトに鍛冶屋をやられたら、こちとら商売あがったりだ。くくっ、本当に面白れぇ。鞘の材料だったな、いいもん見せてもらったからタダでやるぞ」
タクマさんが材料をタダでくれたので、そのまま工房を借りて作ることにした。ついでに腰ベルトも作り直させてもらい、製作ボーナスに不壊・防汚・防水を付けて完成!
「‥‥俺も<錬金>を取得してみるか」
「結構便利ですよ、<鍛冶>の他に<裁縫><細工>とも相性がいいと思います」
「ああ、さっき見せてもらって実感した。俺は元々冒険者をしていたから装備品の重要性は理解しているんだが‥‥お前達、生産職の奴らでもLv6が関の山なのを知らねぇだろう?セイジの店で買ったと言っていたが、お前達が装備しているものはイトが作ったんじゃねぇのか?」
「もしかして‥‥、見えてますか?」
「いや、見えねぇからだ。まだLv3だが<鑑定>なら持ってるぞ、材料の採取・採掘に便利だからな。まあ、俺も冒険者を辞めてから取得した口だから人のことは言えねぇがな。SPの問題もあるし、若い奴らは目先の力を求める節があるから取得している奴はいないが、お前達の装備を<鑑定>出来る奴がいない訳じゃねぇ。目を付けられる可能性がある限り、行動には十分注意しろ」
「俺は、知られたら攫われる危険もあり得ると思っています。だからイトが製作するときは、必ず一緒にいるようにしているんです。そこでご相談なんですが、<鍛冶>が必要になったときに、工房をお借りすることは出来ますか?多分このまま行くと、自分で道具を揃えて森の中でやりかねないので」
か、考えていたことがバレてる‥‥、タクマさんと目が合う。
「‥‥そのようだ、工房は使っていい。その代わりと言っては何だが、俺に<錬金>の使い方を教えてもらいてぇ。イト、いいか?」
「独学ですけどいいんですか?」
「はははっ!その独学が知りてぇんだ、頼んだぞ。オビトこの後の予定はどうなってんだ?」
「冒険者ギルドに行ってクエストを請けるつもりです」
「じゃあ晩メシを食いに来い、セイジは俺が呼んでおく」
「わかりました、夕方頃にまたお伺いします」




