12
城下町から出るのにギルドカードを提示すると、門番の人はカードと私の顔を何度も交互に見比べた。「13歳ですか?」と聞かれたので「違います」と答えてやった。
「それにしても2軒ともいいお店だったね。流石はメリダさん」
「うん、2人ともいい人だったし」
「オビトはお金を貯めて、武器と防具を買わないとね。今日から頑張って稼ごう!」
「その前に今日の予定を決めておこうよ」
「あっ、そうだね。まずクエストの薬草を最低10本。それから魔法鞄と防具の材料のラビの皮・ウルカの皮・モクの糸・サア・コトン・小魔石(透明)・鉄鉱石。あと塩・胡椒以外の調味料と果物、あれば薬味の予定「ちょ、ちょっと待って!」ん?」
「ラビとモクはいいとしても、ウルカはランク2だよ?小魔石は魔物から極まれに出るか鉱石と一緒で山にしかないし、そもそも調味料と薬味って何?果物だってないから高いんだよ」
「むぅ‥‥、でも探したい。これには私の一生が掛かってるんだよ!」
「‥‥わかった、とりあえず薬草ね。その後ならいいよ」
「あ、ありがと~!」
そうと決まれば、草を<鑑定><分析>しながら草原へ向かいますかね。
オビトに誘導されて街道から逸れ、整地されていない道を進むと突然目の前が開けた。草原と言うだけあるねぇ、周りを見渡しても草・草・草・草だらけ。森が遙か遠くに見え、歩くと結構掛かりそうだ。
あっ、見っけ!
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[薬草]
回復薬になる草
〈効果:採取後3日で腐る〉
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使用条件:薬剤Lv2
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薬草を根っこから引き抜く。うん、根元が白い。試しに横の雑草を引き抜くと、根元は草と同じ緑色だった。見渡した限りだと、500本の雑草に1本の薬草ってところかな?1回で雑草5本を引き抜くとして100回、10本で1,000回、でもこれはあくまで確率の話だから絶対じゃない。あ~、確かに見分けが難しいって言うねコレ。
まあいいでしょう、<鑑定>さんお願いします!
「ふぃ~、いい仕事しましたなぁ」
「イトどう?俺の方は、抜いても抜いても雑草だった」
「あ、オビト。薬草はもういいよ」
「‥‥諦めるってこと?」
「うんにゃ、もう100本取ったけど?まだ集める?」
「えっ!?」
「じゃあ、あと100本取ろっか」
「薬草を?雑草じゃなくて?」
「<鑑定>で見てるから間違いっこないよ。根元も白いから間違いなし」
「‥‥<鑑定>持ってるの?」
「うん、結構便利だよ」
「‥‥防具屋でスキル取得のこと誤魔化してたけど、精霊契約してないよね?何でスキルを持ってるの?」
「オビトは特殊スキルを持ってないの?」
「何ソレ‥‥初めて聞いたよ。俺が知らないだけかもしれないけど、イトはそれを持ってるってこと?」
「‥‥うん、もしかして何かダメな感じ?」
「そうだね、‥‥そのことは他の人には言わない方がいいと思う。イト、レベルとSPはいくつ?」
「え~っと‥‥」
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イト・サエキ(佐伯 絲)
年齢:16
職業:-
Lv:1
冒険者rank:1-0/L1
商業rank:-
スキル:-
SP:0
状態:-
受注クエスト:rank1-5薬草採取
+-----+-----+
HP(生命力):100/100
MP(魔力):10,000/10,000
STR(筋力+(攻撃)):3+(12)
VIT(体力+(防御)):2+(3)
AGI(敏捷+(敏捷)):1
INT(知性+(魔力)):19
DEX(器用+(器用)):25
LUK(幸運+(幸運)):77
特殊スキル:<家事><習得>
習得スキル:<育成∞><無属性魔法Lv1><異世界言語Lv2><鑑定Lv3><分析Lv3><剣術Lv1><槍術Lv1><斧術Lv1><弓術Lv1><体術Lv1>
+-----+-----+-----+
「な、何じゃコリャ~!?」
「ど、どうしたの?」
「あ、あの‥‥レベルは1、SPは0です」
「じゃあメリダさんにも内緒ね」
「なんで?‥‥あっ、そっか。精霊と契約していないと、SPがいくらあってもスキルが取得出来ないんだっけ。てことは例え契約していても、SPがレベル1で0なのにスキルを持ってること自体あり得ないのか‥‥」
「そう。ついでに聞くけど、今何個スキルを持ってるの?」
「‥‥12個‥‥。でも、昨日の夜までは7個だったんだよ!?」
「ああ、だからさっき驚いてたんだ。だけど1個も12個も変わらないよ。ちなみに今日増えた5個って何のスキルだったの?ここまで言ったんだから、今さら隠しても意味ないからね」
「今日増えたのは<剣術><槍術><斧術><弓術><体術>、多分だけど武器を振ったりシャドーボクシングしたからだと思う」
「突っ込みどころ満載だけど、それだけでスキルを取得出来たってこと?」
「うん。特殊スキルに<習得>ってスキルがあって、知らないスキルや知ってても想像出来ないスキルでも、身体に受けることによってスキル取得出来るみたいなんだ。勿論知っているものは、今日みたいにその行動をすれば取れちゃう」
「初めて聞くスキルだよ。イト、自分のオーラの色は知ってる?」
「オーラなしだって言われたけど‥‥」
「俺も近々契約しようと思ってるけど、オーラ黒までのSP一覧に<習得>がないことは知ってるよ」
「どういうこと?」
精霊と契約すると、SP一覧が見えるようになる。一覧はオーラの色によって内容が違って、黒-800SPまで>青-700SPまで>緑-500SPまで>黄-400SPまで>赤-300SPまで>なし-100SPまで。黒の上のオーラ白があるけど、1人もいないから上限がわからないらしい。
そしてレベルアップごとにオーラの色によってSP・HP・MP・ステータスポイントを取得、黒-8SP>青-7SP>緑-5SP>黄-4SP>赤-3SP>なし-1SP。これも白はわからないとのこと。
「口頭で説明してもわかりづらいと思うから、宿に帰ったらSP一覧を書いてあげるよ」
「うん、ありがとう。私‥‥大丈夫かな?」
「俺はイトが変な人だって、最初にわかって良かったけど」
「それだけ?私、おかしくない?」
「確かに不思議だけど、イトは元から面白いよ」
「そのおかしいじゃないよっ!」
特殊スキル:<家事><習得>
習得スキル:<育成∞><無属性魔法Lv1><鑑定Lv3><分析Lv3><剣術Lv1><槍術Lv1><斧術Lv1><弓術Lv1><体術Lv1>
持っているスキルをオビトに言う。
「<家事>も聞いたことがないよ。しかも<分析>は800SP、<育成>は700SP、<体術>は70SP、<鑑定>は60SP、<無属性魔法>は40SP、それ以外は10SPだよ。あと1つは?」
<異世界言語>は流石に言えない。文字通り、異世界人だってバレる‥‥。お城でパーティーを開いてる位だからバラしてもいいような気もするけど、正直大っぴらにしていいものか判断しかねている(追い出されたし‥‥)。
「ごめん、あと1つは言えない‥‥」
「言えないのは言わなくていいよ。そもそも人のステータスを見ること自体、良くないことだからね。特にイトは絶対に知られちゃダメ。悪い奴に騙されて利用されそう」
「私、オビトがパーティーを組んでくれて本当に良かった。多分これからいっぱい迷惑掛けちゃうと思うけど‥‥」
「迷惑より驚きの方が多そうだからいいよ。俺も楽しみながら親の役に立つ冒険者になりたいから、イトで良かったよ」
「私の目標という名の野望と、方向性が一緒だね!」
「ああ、今日の予定ってやつね」
「そう!生き抜いてお菓子と塩味以外の料理を食べること!冒険者になって稼いで宿の役に立つこと!材料を集めてタダで色々なものを作って、お金が掛からなければなお良し!」
「‥‥まさに野望だね」
「そうでしょう、そうでしょう。じゃあ手始めに、薬草をあと100本取りますか!」
「そういえば<鑑定>ってどう見えるの?」
「ここに薬草があるでしょ?これを見ると[薬草]回復薬になる草〈効果:採取後3日で腐る〉、って見えるんだよ。ちなみに<分析>で見るとその下に使用条件:薬剤Lv2、って見えるんだけどね」
「へえ、だからギルドの期限が1日なんだ」
「‥‥なるほど。1日にしないと渡した後2日しかなくて、薬にするまでの時間がなくなるんだ。私、冒険者ギルドで薬草を<鑑定>するの忘れてたよ」
「何本に1本が薬草かわかる?」
「見渡した限りだと、500本の雑草に1本が薬草みたいだよ」
「見分けが難しいはずだね」
そこからまた<鑑定><分析>さんに仕事をしてもらって、薬草を100本採取する。2人だから早いね、おっと、また見っけ。あれ?またこの草だ。
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[魔草]
回復薬になる草
〈効果:採取後3日で腐る〉
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使用条件:薬剤Lv2
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[癒やし草]
回復薬になる草
〈効果:採取後2日で腐る〉
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使用条件:薬剤Lv3
+-----+-----+-----+
「オビト、さっきから気になってるんだけど魔草と癒やし草って何?」
「もしかして見つけた?」
「薬草を探してたときからチラホラね。両方で周りに30本位あるよ」
「イトは薬草が何の薬になるか知ってる?」
「ん~と、‥‥ポーション?」
「そう、HPポーション。魔草はMPポーション、癒やし草は万能ポーションで状態異常に効く。さらに下級・中級・上級、もっと上もあるらしいけど出回ってるのは上級まで。中級でも上級でも使う草は変わらないから値段が高いんだ。それこそ薬草の比じゃないって聞くよ。両方とも雑草何本に1本?」
「ざっとだけど薬草を基準にして魔草は10倍位だから5,000本に1本、癒やし草は20倍位だから10,000本に1本ってところかな」
「出回る量が階級問わず少ないはずだね。ランクと値段はわからないけど採取しとこうか」
「うん、薬草と一緒にメリダさんに聞いてみようよ」
「わかった」
結果、薬草200本、魔草20本、癒やし草10本を採取した。根元は魔草が青、癒やし草が黄色だった。この2つは雑草の緑に色がちょっと似ていて、<鑑定>がないとさらに見分けが難しと思う。
「時間あるけど野望する?」
「野望する?って何さ。そういう風に言われると余計に恥ずかしいってば!」
「俺は気に入ったけど」
「‥‥じゃあ野望します」
「とりあえず初日だから討伐は止めて採取しようか。サア・コトン・小魔石(透明)・鉄鉱石・調味料・果物・薬味だったっけ?」
「何で全部覚えてるの?オビトって凄いね!」
「そう?イトが<鑑定>しながら歩けば、何かしら見つかると思うよ」
「よし、任された!それじゃあ魔物に気を付けながら行くとしますか」




