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タクマさんのお店を出て次に向かったのは防具屋さん。そういえば冒険者の人達は、鎧装備の人がとても多かった。STRで思い出したけど、私AGI1だったよね。これって鎧を装備した時点で、動けなくなったりしない‥‥?
「こんにちは~」
「いらっしゃい」
声小っさ!私、声小っさ!この件も3回目です‥‥もういいか。このお店も壁や棚に種類ごとの防具が置いてある。鎧・革装備・外套・服・靴・帽子などが素材ごとにあって、選ぶのが大変そう。飾ってあるものを見たり、棚の服を広げていたら気付いてしまった。こんなところにも弊害があろうとは‥‥、ステータス以前の問題だよ。
「イト、どうしたの?」
挙動不審な私を見かねたオビトが声を掛ける。
「私が着れるサイズがない‥‥」
「‥‥冒険者に子供はいないからね」
「‥‥‥‥‥」
「俺ももうお金ないから出る?」
「そうだね。あっ、もうちょっとだけ見てもいい?」
この感じだと、他のお店も私サイズの防具は皆無。昨日の魔法鞄みたいに材料とスキルがわかれば自分で作れるはずだから、<鑑定>。
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[コトンクローズ]
コトンの布で作った服
〈効果:VIT+3〉
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[ウルカアーマー]
ウルカの革で作った部分鎧
〈効果:VIT+5〉
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あれ?材料とスキルが出ないぞ。ん~、さっきナイフを見たときも出なかったかも。昨日と何が違うんだろ?‥‥そっか、鞄は調べようとして<分析>したんだっけ。
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[コトンクローズ]
コトンの布で作った服
〈効果:VIT+3〉
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コトンの布+モクの糸
作成条件:裁縫・細工Lv2
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[ウルカアーマー]
ウルカの革で作った部分鎧
〈効果:VIT+5〉
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ウルカの皮+サアの布+モクの糸+鉄鉱石
作成条件:裁縫・細工・鍛冶Lv2
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出ましたね。てことは、『言語理解』<異世界言語>ラビショルダーバックはたまたま<分析>を使ってたってことか。<分析>を使わないと線から下が見えないから、材料もスキル・レベルもわからないんだ。<鑑定>が見る、<分析>が調べる、<鑑定>の上位版が<分析>って感じ?
線から下が重要な情報だとすると‥‥、ギルドカードも<鑑定>になるんだ。表示が『ステータスオープン』の線から上だけだったもんね。じゃあアイアンジャズナイフは
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[アイアンジャズナイフ]
鉄で出来た引き切り包丁
〈効果:STR+5〉
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鉄鉱石+アラの木
作成条件:鍛冶Lv2
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武器も使えるものがなければ、使えるものを自分で作ればいいんじゃない?でも素材の他に鍛冶道具が必要になるから流石に無理か~。そんなことを考えながら、お店の商品を見て回る。あっ、これ見たことある。
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[アイアンガントレット]
鉄で出来た籠手
〈効果:STR+2・VIT+3〉
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鉄鉱石+ウルカの革+サアの布+モクの糸
作成条件:鍛冶・裁縫・細工Lv2
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籠手って防具だったんだ。格闘家とかが手に付けて攻撃してたから、武器だと思ってたよ。金属の鎧と同じで重そうだな、おっ、革がメインのやつもあるぞ。この茶色のやつ、指まで熊の手みたいで格好いい!
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[ベアントガントレット]
ベアントの革で作った籠手
〈効果:STR+7・VIT+3〉
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ベアントの革+サアの布+モクの糸+鉄鉱石
作成条件:裁縫・細工・鍛冶Lv3
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欲しいけどブカブカだぁ、外れないようにしながらシャドーボクシング。熊ストレート、熊ジャブ、熊ジャブ、熊フック、熊アッパー!
「くすくすっ、気に入った?」
振り向くと、優しそうなお兄さんがいた。
「あ、はい。とても格好いいですね、コレ!」
「そうだね、可愛かったよ。9,000ギルだけど、大きさを調整したら買う?」
「買います!」
「じゃあ、ちょっと待っててね?」
そう言ってお兄さんはカウンターの奥へ入って行った。いや~、思わず即答で買っちゃったよ。ヤバいな、計画性なさ過ぎ‥‥。
「見終わった?」
「今、サイズを直してもらってるところ」
「何を買ったの?」
「ガントレット、この金属が茶色の革で出来てるやつ」
「‥‥ベアントだろうね、いくらだった?」
「9,000ギルだったよ」
「お待たせ、一応着けてもらっていいかな?」
「はい、‥‥ぴったりです!」
手に着けて再びシャドーボクシング。シュっ、シュっ。おおっ!心なしか切れがいい、さっきより断然出来る感じ。
「あれ?さっきより様になってるね」
「オビトどう?」
「思ってたよりベアントっぽいよ」
「えへへ~、格好可愛い感じでしょ~。ん?ベアントって褒め言葉?」
「鎧とか服も見てたみたいだけど、流石に大きさが違い過ぎて手直しが効かないんだ。防具が欲しいなら1から作るしかないんだけど、どうする?」
「それなんですけど、実は自分で防具を作ってみようかと思ってるんです」
「君が?失礼だけどスキルは持ってるの?」
「いえ、これから取得しようかな~と」
「へえ~、その年で精霊と契約しているなんて凄いね」
ギクぅっ!
「い、いやぁ、ソレホドデモ‥‥。そ、それより、お店の商品を参考にさせていただきたいので、また来てもいいですか?」
「面と向かって敵情視察宣言されたのは初めてだよ。僕はセイジ、君達は?」
「イトです」
「オビトです」
「ところで、今日は誰かに紹介されてここに来てたりする?」
「はい。冒険者ギルドのメリダさんに紹介してもらいましたけど、何でわかったんですか?」
「ははっ、やっぱりね。何となくそうじゃないかと思ったんだ。まあ、色々と相談に乗るからまた顔を出してよ」
「はい、ありがとうございます!」




