1-1日目
「女神様方、どうかアラミタをお救い下さい」
「佐伯さん、これちょっと胸が苦しいんだけど直してくれない?」
「え~っと、ごめんなさい。採寸通りのはずなんですけど‥‥」
「あー、あたしもー。ウエストが緩くて落ちちゃうんだよねー」
「あの‥‥」
「私のもいいかなぁ?なんか丈が短くてぇ」
「‥‥はい」
ただいま、3人の綺麗で可愛い女の子に囲まれております。
「花蓮また胸大きくなったのー?いいなー、あたしも雪弥にお願いしよー」
「理沙ちゃん凄いよぅ!なんでこんなに腰細いのぉ!?」
「鈴、あんたさっきしゃがんだときパンツ見られてたわよ」
「えっ‥‥、タカ君に怒られちゃうよぅ!」
え、え~っと。
「明日の模擬で男子に見せるんだから、今日中に直しておいてね」
「鈴も明日タカ君に見せるんだぁ」
「あー、もう行かないと雪弥待たせちゃうー」
「じゃあね」
「ばいばーい」
「さようならぁ」
ぽつん‥‥。
‥‥はあ、今4時か。ちらっ、うぅっ、山盛りだよ。とにかくやるしかないか。
今週末から始まる高校の学園祭で、1年A組は喫茶店をやることになっている。1ヶ月前から衣装の製作を始めて、女子全員の分が完成したのが1週間前。さらに細々したものも製作して、ようやく自分の分に取り掛かったところだった。
父親との2人家族(プラス犬1匹)で家事全般は得意だけど、希望した調理担当に漏れてから続く孤独な日々には正直もうウンザリである。あの3人は立候補のはずなのに、何故‥‥。顔を見せるだけまだマシか。何も言わずに来ないことが殆どだったもんね。
1週間前試着したときに言ってくれれば、まだ心にゆとりがあったものを‥‥。はっ、いかんいかん、手を動かすのだ私!
ちょきちょき、ちまちまちま、だだだだだ、だだだだだ、ちくちくちく‥‥。
うはぁ~、終わった‥‥。「うわっ、8時!?」急いで帰らないと!自分の分作れなかったけど、どうせ似合わないって言われそうだし、裏方だけにしてもらって作るの止めちゃお。
体重は非公開、お菓子が大好きで自分でほぼ毎日作って食べている。勿論料理は大好き。栄養が体に行き渡ったおかげで、体型は俵型というか寸胴というか‥‥。身長が約150cm(四捨五入する)と小柄なせいで、まるで米俵のようだとあの3人は横で盛り上がっていたがな。
確かに3人とも顔小っちゃいし、胸大っきいし、腰細いし、手足が長い美人さんだもんね。月島花蓮さんと一高理沙さんは170cm位のモデル体型だし、亜久里鈴さんは160cm位で可愛い女の子代表みたいな感じ、‥‥何も言えねぇ。
「凄ぇ、超似合ってる!」
「マジ可愛い!」
「えー、ありがとー」
「本当だぁ、皆可愛いねぇ。作って良かったぁ」
「鈴ちゃんも凄く可愛いよ!」
「女子全員分作るの大変だったんじゃない?」
「3人で頑張ったからそれ程でもなかったわ」
あの~、4人‥‥、いや、1人なんですけど‥‥。
「うちのクラス、ぶっち切りで1位なんじゃね?」
「いける、いける。狙ってこうぜ!」
「写真貼って指名制にでもするか? せっかくのメイド喫茶だしさ!」
「いいなそれ!女子、写メ撮るから1人ずつポーズ取ってくれよ」
「おおっ!これヤバくね!?」
「おい、俺にもくれ!」
ワタシハミチバタノコメダワラデス。
「全員撮ったか?」
「何枚ある?1‥2‥‥15枚か。女子って15人?」
「クラスが35人だろ。男が19人だから16人いるはずだぜ」
「んー、‥‥あ、佐伯」
パチっ、と目が合ってしまった。
「い、衣装着てないし、撮らなくていいんじゃね?」
「た、確かに制服のままだしな」
「しゃ、写真貼るスペースも丁度15枚分しかないし、‥‥佐伯いいよな」
「‥‥うん」
いいえ、と言ってやりたい。俄然、米俵部門No.1を狙う気になってきた!服ないけど。
「ねえ、3人で撮ってもらってもいい?」
「あたしも欲しいー。後でアップしよー」
「こんな感じでいぃ?恥ずかしいよぅ」
どこのアイドルグループだ!レベルが高過ぎて同フレームは残酷過ぎる。
「そうだぁ、佐伯さん。一緒に撮ろうよぅ」
「衣装製作組でいいかもねー」
「あなた真ん中ね」
何ですとっ!?この中に突っ込んで行く猛者がいようとは‥‥私か。
「じゃあ撮るよー、ぷぷっ」
「お、俺も撮りたい、くくっ」
「これはヤバいだろ、ぐはっ」
フラッシュの嵐!うわぁ、とてもじゃないけど目を開けていられない。どんな顔になってるんだろう?まあ、脂肪で目なんかないようなものだけどね。
それにしても眩しいよコレ。目を閉じてても明るいもんね。そぉっと目を開ける、うん?何処ですかココ?3人は横にいるんだけど、目の前にいるのはまるで絵本に出てくる王女様のような金髪紫眼美女だった。
そして冒頭に戻る。
「女神様方、どうかアラミタをお救い下さい」