第6話 その者、世界で最後の戦い
狼人種の男アギーラは『その身を霧で隠せ』と教える。
それは例えの話で、敵に『自分が何をするか分からない』と思わせることが大切だというのだ。さらに、彼は理解しやすい例で説明してやろうと言いながら、次兄チェリウムに好きな女の子はいるのかと質問してきたのだ。
アギーラはニヤけながら、改めてチェリウムに視線を向ける。
「なぁ、『その身を霧で隠す』の意味を理解しやすいように、異性の話で説明してやろうっていうんだ。お前さんもそれなりのお年頃だし、好きな女の子のひとりやふたりはいるだろう?
恋愛の駆け引きでも、『その身を霧で隠す』のは役立つんだよ。
お前が女の子にモテたいなら、自分の全てをさらけ出さず、恋人を飽きさせないよう、常に隠れた部分があるように心がけておけ。女は謎めいた男に惹かれるからな。
そうすりゃ、チェリウムは女性にモテモテだ。いろいろと経験したオジサンの話に間違いはないぞ~ 」
チェリウムは十五歳の思春期で、異性への関心が高くなるお年頃だ。
恥ずかしくて顔が赤くなるが、アギーラのいう異性にモテる方法と聞けば関心を持ってしまう。
「それって本当の話ですか? じ、実は気になる娘がいるんですが、その女の子がどう思っているか分からなくって」
「おう、このオジサンに任せろって。さっきも教えたが、獲物を狩るには『対象を調べる』、『罠を仕かける』、『仕留める』の三つの段階をしっかり押さえておけ。
まず、『対象を調べる』ことが必要だが、手始めにその娘のことを俺に聞かせてみろや。そしたら、このオジサンがだな、女のハートを仕留める方法をだな…… 」
アギーラは前のめりになって、チェリウムに質問を始めた。
その娘は美人系なのかカワイイ系なのかどっちだ? ちなみに、お前の好みは巨乳派か貧乳派か、それともお尻に執着するタイプなのか?
アギーラは根掘り葉掘り問いかけるが、なぜかその姿は軽薄な雰囲気を漂わせていた。
チェリウムは恥ずかしながらも問われるままにペラペラと返答していた。
フェリウスが思うに、それって関係ないじゃん、ということまで次兄は白状させられている。ノリノリのアギーラは、これが大人のテクニックだといって数々の手練手管を披露し、その戦績を伝えると、チェリウムはアギーラを師匠と言いだす始末。
いつの間にか、日も傾き始めていた。
彼らはその日の仕かけ設置を終了して、森を抜けて帰路についたのだが、アギーラは下世話なおっさんモード全開のままだし、チェリウムは顔を真っ赤にしながらも異性の気を引くテクニックを聞き続けていた。
そんな大人のやり取りから疎外されたフェリウスは、つまらなさそうに歩く。
こうして、フェリウスの狩猟第一日目は終了するのだった。
オラム鳥狩りの二日目の早朝。
フェリウスと兄チェリウムは、前日と同じく都市の防壁門の前に立ち、その場で狩猟指導役のアギーラと合流した後に狩場の森へと向かった。
フェリウスは期待でワクワクな気分だ。
風が砂埃を舞い上げる未舗装の道で、彼は飛び跳ねながら問いかける。
「ねぇねぇ、アギーラのおじさん。きのう仕かけた罠に獲物は引っ掛かったかな。
きっと獲れていると思うんだ。おじさんも、そう思うでしょ? 」
「そうだな。運がよければ、もう獲物がいるかもな」
一方、チェリウムは冷静に、
「こら、フェリウス。期待するのはイイけど、はしゃぎすぎるなよ。森までの道中でも、注意は怠らないようにしろよな。でないと、怪我とかするからな」
浮かれるフェリウスを、アギーラは軽くいなし、兄のチェリウムは窘めた。
狩場の森に入ったフェリウスたちは、仕かけた罠を確認してまわった。
一か所目は昨日と同じままの状態で獲物はおらず、二か所目は仕かけが弾けて罠が機能しなくなっていた。
結局、獲物は罠にはかかっておらず、フェリウスは落胆して肩を落とすが、こんなものだろうと、冷静なチェリウムは弟を慰めてやった。
彼ら兄弟はアギーラの指示に従って弾けた仕かけを作り直す。前日と同様に、アギーラは最低限のアドバイスしかせず、兄弟たちが自主的に動くように誘導する。
その後、彼らは初日とは別の方面へ向かった。
たどり着いた場所は、森林と平原の狭間で、植生は背の低い木々が多くて、オラム鳥が好みそうな地形であった。その土地を中心に、獲物の縄張りを探すことにしたが、鳥の足跡を見つけたのは午後になってからだった。その足跡をたどって、鳥の休憩地を探しだして、罠を設置する。
狩猟二日目は、この作業で終わった。
オラム鳥狩りの三日目。
今日こそは獲物を獲るぞと意気込むフェリウス。お前が気合を入れても、獲物が仕かけに引っ掛かることは関係ないぞと、兄のチェリウムはツッコミをいれる。アギーラはそんなやり取りをする兄弟を引き連れて、狩場の森へと進んだ。
その日も彼らは森のなかの仕かけを確認してまわる。一か所目と二か所目の罠には成果はなかったが、三か所目でようやく仕かけに掛かった獲物を発見した。
フェリウスは小躍りして、
「やった! 獲れてる、とれてるよ」
チェリウムも嬉しそうに、
「お! あれはオレたちが仕かけた罠だ」
罠に掛かったオラム鳥は未だ生きていた。
それは青い尾羽が美しい雄で、縄の輪が絞まって足の自由を奪っていたが、鳥には傷ついた様子はない。
フェリウスが獲物に近づくと、オラム鳥は逃げようとして羽根をばたばたとさせるが、縄の長さ以上に移動することはできなかった。
アギーラがオラム鳥を指さして、
「では、コイツを絞めようか。オレがやり方を教えるから、お前らが絞めてみろ。
初めての経験で戸惑うと思うが、何ごとも経験だ」
「ハ、ハイ」
「えぇー」
フェリウスたちは少し慄いたが、結局はアギーラの指示に従う。
彼らは、鳥の足にかかった縄を外れないようにきつく縛り直して、ふたり掛りで暴れるオラム鳥の頭を下にするようにして木に吊るした。
これは上半身に血を集めるためなのだが、オラム鳥の腹のあたりが上下する様は苦しそうで、時おり羽根を広げて足をバタつかせる。そのままの状態で、三十分ほど待つ。
アギーラが次の指示を出した。
「いまから、コイツの首を切ってもらう。刃をあてる箇所はここの頸動脈の辺りだが、一気に切って鳥を楽に逝かせてやれ。手際良くやらないと、コイツを苦しめるだけだぞ。
チェリウム。お前がやれ。フェリウスは暴れる鳥を押さえつける役目だ」
「エッ、はい。分かりました」
「は、はい」
チェリウムはアギーラの台詞にビックリしてしまう。
自分が鳥を絞めるとは思ってもいなかったのだ。彼は少しためらった後、覚悟を決めてアギーラから小型のナイフを受け取る。それは年季が入っていて古いが、良く手入れされており、刃は鋭く無機質な光を放っていた。
チェリウムはゴクリと唾を飲み込みながら、獲物に近づく。
チェリウムは獲物の頚動脈あたりにナイフを当てる。
その途端、オラム鳥は身の危険を感じたのか急に暴れ出したので、フェリウスは両手で鳥の必死の動きを押さえつけようとする。チェリウムも片手で首を掴みながら、ナイフで切り付けた。だが、その刃の深さは浅くて絶命させてやれず、オラム鳥は大きく鳴きながら、全身で力いっぱい暴れた。
結局、チェリウムは何度も切りつけて、ようやく鳥を静かにさせた。
チェリウムはハアハアと肩で息をしていた。
その顔色は少し青ざめていて、手が小さく震えている。しばらくして、返り血のついた手足をボロ布でぬぐう。
フェリウスも無言のまま立っていた。
朝にみせていた無邪気にはしゃぐ様子はまったくない。彼は、首がなくなったオラム鳥に、視線を固定したままだった。
アギーラは無表情のまま言葉短く声をかける。
「よくやった」
アギーラは絶命したオラム鳥に手をあてた。
彼は、フェリウスたちにも獲物に手を添えるようにと指示した。兄弟がぎこちない動作で手をおくが、その肉体は未だ暖かい。
アギーラは厳かな口調で、
「汝の『世界で最後の戦い』は立派なものであった。我はその勇気に敬意を表す。
汝の魂、初源の海へと帰りて、安らかにあらんことを希う。
汝の血と肉、我の血となり肉となり、その在り様を変えてこの世界に留まらん。
汝、再び“生”を受けたるとき、その命に幸あらんことを」
アギーラは、フェリウスたちに同じ言葉を繰り返すように指示する。
彼ら兄弟は真剣な面持ちで、獲物に手をあてたまま祈りを口にした。
フェリウスたちはオラム鳥を木に吊るし、血抜きする。
鳥の体液が地面にポタリポタリと滴り落ちるが、その状態を三十分ほど維持する。次の行程では羽根をむしるのだが、本来の目的はお守りで使用する羽根を得ることだ。フェリウスたちは痛んでいない羽根を選び、持ち帰り用のきれいなものを幾本も抜き取って確保した。
その後、彼らが不要な羽根を全部むしると、獲物は肉の塊になり、それを用意していた網目の粗い袋に入れ込む。
実は、フェリウスらの動揺は意外なほど小さかった。
鳥を絞める行為は初めての経験であり狼狽もしたが、その後の作業をこなすうちに落ち着いてきた。なぜなら、彼らは普段から“死”に慣れていたからだ。
この時代の文化文明において“死”は身近に見聞きするものだ。
街なかの肉屋が店先で鳥を絞めたりするのは、ごく日常的な風景である。都市の外にでれば、牛や山羊などの大型動物を屠殺する作業を見ることができる。
人間の“死”とて、ありふれた光景でしかない。
住居する家で臨終を迎える者は多い。家族や近親者に看取られて逝く者は幸せなほうで、道ばたで野垂れ死も珍しくはない。人間が病院で死を迎えるのが一般的な現代社会ではないのだ。昭和時代までは家で死を迎えるのが普通であり、死と切り離された現代社会とは、事情がまったく違うのだ。
ましてや、フェリウスたちは司祭職を務める家の出身者だ。
彼らフェニキアクス家は貴族階級でありながら、神を祀り、祭事を執り行うことが多く、他方で死者を弔い亡者を慰めることもする。十歳のフェリウスとて葬送式に参加し、そのための儀式の舞をする機会も多かった。
何度も言うが、彼らにとって“死”は身近な現象である。
彼らが他者の命を奪ったことは初めての経験であったが、“死”を忌避する気持ちはない。“死”は誰にでも等しくやって来るものだと、彼らはごく自然に経験していたのだ。
彼らは獲物を捌いた後に、食事することにした。
結局、狩猟三日目の午前中いっぱいを獲物の処理に費やしてしまう。アギーラが兄弟たちにオラム鳥を捌く作業のほとんどをやらせたのだが、彼らにとって初めての作業であったので、時間がかかってしまったからだ。
フェリウスがフォカッチャを頬ばりながら、
「ねえ。アギーラのおじさん。あの時の祈りってどんな意味なの? 」
アギーラは水を飲みながら、
「あれは、オレの一族が昔から使っている祈りだ。獲物を狩ったら、必ずあの言葉をかけるようにしていてな。オレにとっちゃ当たり前のことなのだが、お前らには珍しかったかな」
「ううん。お祈りは毎日しているし珍しくはないよ。でも、『世界で最後の戦い』っていうのが気になって」
「あぁ。あれか。言い回しは大げさかもしれんが、少し考えりゃ納得できる言葉でもある。
生きるとは、戦いの連続だと、オレの一族では教えている。
難しい言葉で表現すれば、生存競争というヤツだな。生存競争に勝てば生き抜けるし、それに負ければ死んで、この世から消え去るワケだ。
このオラム鳥からすれば“死”は、『この世界で最後の戦い』であったということなのさ。生きるために、今までの毎日を戦い、そして今日、その戦いに負けてしまった。でもな、戦いの結果はどうであれ、コイツの戦い方は立派であった。最後の最後まで生きようと懸命に努力したからな。充分に尊敬に値する。
だから、オレはあのオラム鳥に敬意を示すんだよ」
「ふーん。そうか、敬意を示すんだね」
アギーラは干し肉を噛みながら、
「そうやって、敬意を示してまで得た獲物だ。俺たちは自分の命を繋ぐために、コイツの命を奪ってその肉を喰らうのだ。コイツの命を無駄にしては、このオラム鳥に申し訳が立たん。
お前らは、コイツの肉をきっちり喰らって、しっかり生きろ。コイツの羽根だって無駄にせず大切に使ってやれ」
フェリウスはうなずいて、
「そうだね。そうするよ」
アギーラはフェリウスら兄弟を見やりながら続けた。
「オレは、願わくば自分の『世界で最後の戦い』では敬意を示されて逝きたいと、思っている。生けとし生ける者すべてにその戦いで負けるときが訪れるし、例外はないんだよ。オレの身の回りでもそれは起きているが、できるかぎり敗者には敬意を示している。
自分がしてもらいたいことを相手にしているワケだな。まあ、こんな行為をしていても、オレのその戦いで敬意を示されるかは分からん。でもな、オレの気持ちがおさまるから、それで良いんだよ」
こうして、その日の狩猟は終わった。
オラム鳥狩りの四日目。
その日の午前中、フェリウスたちは二羽目の獲物が仕かけに掛かっていたのを見つけた。前日と同じように、オラム鳥を木から吊るして、絞めた後に、祈りをして、お守り用の羽根を回収した。
アギーラはフェリウスたちを前にして、
「これで、二羽のオラム鳥を狩ることができたな。確認だが、依頼された目標を達成したということで良いな? 」
フェリウスは嬉しそうに、
「達成したよ。きれいな羽根が取れたから、これでお守りを作れるよ。アギーラのおじちゃん。ありがとう」
チェリウムも笑いながら、
「はい。目的は達成しました。それに、肉も手に入れることができたので、ありがたいですね。本当にありがとうございます」
返事を聞いたアギーラは満足そうに、
「よし。今回の狩猟は完了だ。じゃあ、これから仕かけた罠を解除しにゆくぞ」
チェリウムはキョトンとして、
「え? もう終わらせるのですか? 今日は狩りの四日目です。約束では狩猟期間は五日間なので、もう一日ありますよ」
それでも、アギーラは狩猟の指導はこれで終わりだと告げた。
なにせ依頼目標を達成したのだからなと繰り返す。フェリウスたちは狩猟が終わることに不満をいうが、アギーラは取り合わない。
アギーラは言い聞かせるように、
「いや、今日でオラム鳥の狩りを終わらせる。これには、ちゃんとした理由がふたつもある。
ひとつ目の理由はな、生態のバランスに配慮する知恵だ。必要以上に狩りをしないのは、猟師のルールなんだよ」
アギーラは不満げなフェリウスたちに説明した。
この時期はオラム鳥の繁殖期で本当は狩りを控えるべきなのだと、彼は教える。繁殖期の鳥一羽の価値は、半年後の五羽のそれに相当するそうだ。なぜなら、今の時期に雌は卵を産み、番でヒナを育て、ヒナが成長してオラム鳥が増えるからだ。
猟師たちは獲物を生活の糧としており、鳥獣がいなくなっては困るから獲りすぎないように、狩猟期間や数を調節しているのだ。
「いいか、フェリウスとチェリウム。今回は貴族フェニキアクス家からの依頼ということで、オレから猟師連中には話をつけてある。まあ、獲物の数は二匹限定なんで黙認してもらった。
それにな、オラム鳥にかぎらず、狩猟には適した時期というものがある。この時期のコイツらは脂がのってなくて、味が落ちるんだ。美味い鳥肉を喰いたいなら、時期を改めて狩りに来ればよかろう」
フェリウスは頷いて、
「わかった。お肉、不味いんだ」
チェリウム同意するが、
「狩りを終わらせる理由のふたつ目とは何ですか? 」
アギーラはその質問に応えて、
「ふたつめの理由は、『世界と丁寧に接する』ためだ。これは、オレの一族に伝わる“教え”みたいなものでな、理解するにはチョイと面倒くさいので、そんなもんだと思ってくれや」
根が真面目なチェリウムは、
「そんな。面倒くさいで終わらせないでください。せっかくなので、教えてくださいよ」
アギーラは渋い顔をしながら、
「しかたねえな。一度きりだぞ。
いいか、オレの一族では子供には『世界と丁寧に接する』ようにと教えている。
その根本には、世界は人を映す鏡と同じだ、という考え方があるんだよ。別の表現でいえば、人間が世界とどう接するかで世界の振る舞いが変わる、とかだな。
で、ここで狩りの中止が、『世界と丁寧に接する』ことにつながるんだよ。
いいか、お前らの目的はオラム鳥の羽根を得ることだし、そのお守りを作るには、獲物二羽もあれば充分というか、過分にすぎるくらいだ。目的は達成しているのに、それ以上を求めるのは欲深いってモンだ。おまけに、今はコイツらの繁殖期で狩猟を避けるべき時期でもある。
オレの判断では、これ以上オラム鳥を獲ると、『世界と乱暴に接する』ことになる。だから、これで狩猟は中止するんだよ」
チェリウムは頷いて返答する。
「なるほど、分かりました。繁殖期のオラム鳥を獲るべきじゃないとの話は納得できます。それに私たちの目的は達成したのに、それ以上の狩りは過剰なものになるということですね」
「ああ。まあそう思ってくれて間違いはないな」
一方、フェリウスは話が理解できず質問する。
「ねぇ、『世界と丁寧に接する』って話は、悪いことしちゃダメで良いことをしろ、って事なの? 」
「いや、微妙に違うな。フェリウスのいう『悪いことはするな……』というのは社会的倫理の話で、それはそれで正しい。
でも、フェリウスがいう『悪いことをするな……』には因果応報の意味を含んでいて、その意味を込めて教える者は多い。
この因果応報的な意味の『良いことをすれば我が身に良いことが起き、悪いことをすれば我が身に悪いことが起きる』という内容なら、オレの答えは否だ。
『世界と丁寧に接する』は“森羅万象の法則”についての一族の教えであって、人間社会の決まりごととは全く別のものなんだよ」
フェリウスは首を左右にふりながら、
「えー。意味わかんない。それって、悪いことしても大丈夫だってことなの? 」
「それは違う。勘違いするな。善悪の倫理観は大切なことだし、社会生活を成り立たせるためのルールは守るべきだ。
オレが言っているのは、人間の社会規範と“森羅万象の法則”は違うと言っているだけだ」
「ぜんぜん、分かんないや。どうすれば、『世界と丁寧に接する』ことになるのか教えてよ」
「ふ~、この手の話はこうなるから面倒くさいんだよ。
まあ、オラム鳥狩りの中止は、指導役の俺の判断ということで、お前らは従ってくれや。
それと、『世界と丁寧に接する』について言えば、自分で探して答えを見つけてみろ。
人から教えてもらっては、本当の意味に気づかないからな。そもそも、オレの同族ではないから、一族の秘事は伝えられない。
ヒントだけは教えてやる。まあ、さっきオレが言った言葉のとおりだ。
『世界は人を映す鏡と同じ』なんだよ。そして、『人間が世界とどう接するかで、世界の振る舞いが変わる』っていうことなんだよ」
アギーラは強引に話を打ち切った。
フェリウスは彼の話を理解できなかったが、それ以上に会話を続けることはできなかった。そして、アギーラの宣言通りに、その後は森の中に分け入って仕かけた罠の解除をして回った。
こうして、フェリウスたちのオラム鳥狩りは終了した。