母親の独白
少し間が空いてしまいましたが、アレックス達が帝国へ帰る前に帝国に少し触れておこうかと、お母さんにお話ししていただきました。
それは、突然の報せでした。
寝耳に水とは、こう言うことを言うのでしょうね。
隣国へと留学中の長男が、数日で帰国の途につくという頃、密かに送ってきた手紙には、「生涯を共にしたい女性が出来たこと」「フローレン王国の王太子の婚約者であること」「生家の侯爵家を勘当させようとしていること」や、彼女の人となりが細かく綴られておりました。
私たち夫婦は皇帝、皇后の立場を優先させねばなりません。
国家間の火種にならぬように皇帝の名で、国王陛下に親書を出し、内々に王太子殿下の行いや、カトレアさんの亡命受け入れの打診をし、同時進行で、宰相で夫の従姉妹の嫁ぎ先でもあるチェリスト公爵の養女として預かる段取りをしました。
フローレン王国の国王からは、フローレン国内での後始末を請け負ってくださるとの返事を頂きましたし。宰相からは、快く引き受けてくださるとお返事をいただきました。
いくらガーディニア帝国が皇室の婚姻に関しておおらかでも、争いの火種は小さいにこしたことはありませんからね。
こうして迎えた皇太子の恋人は、皇后の私からみてもとても素敵なお嬢さんで、養家の両親からも可愛がられているせいで嫁に出すのを嫌がった宰相と宰相子息のせいで結婚が延びたのは、ここだけのお話ですわ。
今回は、ざまぁもなければ、主人公カップルの登場もなく短い文章になってしまいましたが、今までのお話の中では、伝えきれていなかった思いの捕捉という意味で、お母さんに登場していただきました。