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皇太子の初恋 sideアレックス

『策略者は密かに笑う』と、『王子は策略者に泣く』の続編になります。

前作二作の閲覧数にビックリしつつ、感想に励まされ早めに完成させたかったのですが、遅くなってしまいすみませんでした。

この場を借りて、拙い文章を読んでいただきありがとうございました。まだ、忙しい日々が続きますが、年内中には完成させたいと思っていますので、どうぞお付き合いくださいませ。

欲しい、と思った。

それが、他国の王子の婚約者のだろうが知ったことではない。

手に入れたい。

日に日に乾いていく心に言い知れぬ不安を感じる。


留学終了まで残り二ヶ月となった頃、俺は従者のセドリックを連れて図書室にいた。

彼女、カトレア アルデリック侯爵令嬢は、いつもの礼儀正しい姿勢を崩すこともなく、じっと窓の外を見つめていた。

その先には、彼女の婚約者のエリオット王子とどこぞの男爵の愛人の娘というアリア嬢が仲睦まじげに寄り添っていた。

カトリア嬢の碧色の瞳から一筋の涙が伝う。

その姿が、美しいと思った。

俺が、初めて恋に落ちた瞬間だったのと思う。


それからも、彼女の姿を見かけることが増え、同時に彼女が欲しくなっていく。


「セディ、カトレア嬢を妃にしたい。」

俺がそう呟くとセドリックは、

「確かに、お妃教育もされている上、ご本人のお人柄も良い方ですが、王家や侯爵家が黙っていないのでは?」

呆れた口調だが俺の様子を窺っているようだ。

「あぁ、だから、王家や侯爵家になにも言わせないような手を打つ。たとえば、あの馬鹿からの婚約破棄とか、侯爵家との絶縁とか、な。」

そう言うと、セドリックは、苦笑いしながら小さく、えげつないな、と呟いていた。

聞こえてるぞ。


幸いなことに、カトレア嬢とは同じクラスであり、彼女に近づき仲良くなるのは容易だった。

彼女が傷つき弱っているところにつけこむようでいい気はしなかったが、残された時間を考えると背に腹は変えられない。


「エルフォード様、ごきげんよう。」

「やぁ、アルデリック侯爵令嬢。良かったらその荷物、持つよ。」

彼女は、良く生徒会の書類やクラスの提出物を運んだりと、人が嫌がることも進んでする人だ。だからこそ、近づきやすかったのもあるのだが。

マメに手伝ったり、声かけたりしていると、一月もする頃には、彼女とかなり親しく話す関係になっていた。


そんな頃だった。彼女がアリア嬢と会ったのを見たのは。

「アリア様、エリオット殿下はわたくしの婚約者です。婚約者のいる男性と必要以上に親しくされるのは不貞行為です。」

カトレア嬢は、静かな口調でアリア嬢に忠告する。

「アリアとエリオットの仲が良いから、焼きもちやいてそんなこと言うなんてあなた、品がないわね。だから、エリオットに嫌われるんでしょ。」

アリア嬢の常識や貞淑さを疑う発言に、カトレア嬢は呆れた様子で、小さく首を振る。

それを見て不機嫌なアリア嬢は、人がいるのを見ると、一瞬小さく口角を上げ、

「そんなことを言われるなんて、カトレア様は意地悪です。」

と、大声を上げ泣き出した。

静かに人気の無い場所へ移動したカトレア嬢を追いかけた。


「カトレア嬢、大丈夫か?」

「エルフォード様。見苦しい所を御見せしました。」

カトレア嬢は、今にも泣き出しそうな表情で俺を見ると頭を下げる。

「いや、貴女は見苦しくなんかない。むしろ、淑女として素晴らしいと思うよ。でも、もう頑張らなくていい。」

俺は、優しく彼女の頭を撫でる。

本当は抱きしめたかったのだが、彼女はきっと近づきすぎると逃げてしまう。

「ありがと、ございます。」

「ねぇ、カトレア嬢。貴女さえ良かったら俺の国に亡命しないか。俺は貴女と共に在りたいと願っているんだ。帝国なら、いや。俺や俺の両親なら貴女を守ることができる。」

「それは、どういう事なのですか。」

カトレア嬢は、俺の言葉に驚いたように見つめる。

彼女のまっすぐな視線はとても好ましい。


そして、しばらくは彼女を口説く日々が続き、同時にエリオット殿下の周辺にカトレア嬢とアリア嬢の噂を流す。

同時に、エリオット殿下の取り巻きの従兄弟の一人にセディが近づき、婚約を破棄するように誘導させた。

彼女の実家に関しては、彼女の侍女を使い侯爵に嘘の報告をさせ、縁を切るように持っていった。

これらは、カトレア嬢に知られないように密かに進めた。


そして、卒業式の当日、俺は記念パーティーに彼女を送り出すと、彼女の侍女に荷物を馬車に積み込ませる。

後は、待つだけだ。


結果、エリオット殿下は俺の思うように動いてくれ、カトレアを無事婚約破棄してくれた。

後は、傷ついた彼女を慰め、帝国へと連れ帰るだけだ。



読んでいただき、ありがとございます。


カトレア嬢の婚約破棄を補足する回になってしまいましたが、どうだったでしょうか?

こんな子でもお母さん(作者)には可愛い息子です。温かく見守って頂けたらと思っています。

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