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ようこそ、怪奇現象探偵事務所へ!  作者: 鵺這珊瑚
第二章 先輩、初仕事ですよ!
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第九話 霊媒師と白鷺の女帝

さあ、生徒会室だ、入るぞー。入るぞー。・・・・いや、駄目だ、無理だー!会長怖いー!

 しかも、何この木製ドアの重圧感! 小学校の職員室とは全然違う! ・・そりゃそうだよ! シチュエーションが違うもん! あっちは褒められるため、こっちは怒られるためだよ!


「で、なんで僕はここにいるのかな?」


ドアノブに手を掛けたり放したりしている私に優人先輩は聞いてくる。


「私を一人で女帝と戦わせるつもりですかー!?」


たじろぐ優人先輩。


「い、いや、そういうつもりじゃなくて・・。」


「そんなに生徒会室が嫌なんですか?」


私が言うと、優人先輩は黙り込んでしまった。よっぽど、嫌な思い出があったのか?

ま、とにかく会長には勢いで許してもらうしかないかな・・。


そのとき、ドアが音を立て開いた。


「いつまで話しているつもり? 早く入れ、会長がお待ちだ。」


副会長だった。眉間にしわを寄せ、眼鏡を指で直し、会長には時間が無い、等という独り言をぶつぶつ言っている。いかにも怒っています、という雰囲気だ。というか、もうオーラが出ている。この副会長の会長に対する忠誠心を馬鹿にしたら、絶対痛い目に遭うだろうな・・。


失礼します、と頭を下げ、私と先輩は部屋に入った。


とても広い、奥行きのある空間。この材質は、大理石だ。前に来た時に副会長が教えてくれた。その全てが、前に来た時と全く変わらず丁寧に手入れされていて、今にもピカピカと光り出しそう。天井には舞踏会の会場で使われていそうなとても大きいシャンデリアが吊るされていて、私を見下ろしている。


「まさか、二回もここにくるとは思わなかっただろう。」


全面ガラス張りの開放的な壁を背に座っていた会長が私に視線を向けて来る。表情はにこやか。


「で・・。その後ろにいるのは?」


後ろ・・? 一瞬霊かと思ったけど、違った。


「・・何隠れてるんですか、先輩。」


先輩は、まさにガクガクブルブルという表現が似合う震え方をしていた。


「や、や、やっぱ僕帰るよ・・。」


「ええー!?」


「あ。優人。」


会長に見つかり、優人先輩の震え方がさらに激しくなった。・・原因は会長?

と、いうか“優人”ってどういうこと? まさか、恋人関係!?


「まあ、座れ。」


会長専用の木目の綺麗な机の前に用意された、高級そうな白いソファを指さす会長。


「ありがとうございます。」


動かない優人先輩を引きずり、ソファに座った私は思わず声を上げた。すごい座り心地だ・・! 私はいままで何に座ってきたんだろう・・!


「さて、本題に入ろうか。」


のほほんとしていた私は会長の言葉に我に返った!


「はい、覚悟しております、D棟に近付いたのは私です、グラウンド百周でも反省文でもなんでもしますんで、どうかお許しください!」


口に出た言葉に驚く間もなく、会長は笑いだした。


「・・え?」


「いや、私はお前を処罰しようと呼んだわけじゃない。ただ、お前の作った妙なクラブの様子を聞こうと思ったんだ。」


「・・でも、会長、D棟に近付いた人は来いって・・。」


「だから、来い、と呼んだだけ。誰も、処罰するとは言っていない。」


ああー。確かに。


「で、誰か依頼者はいたのか?」


「それが・・、まだ一人も・・。」


「思った通りだな。まあ、得体の知れないクラブに、霊相談しに行くだなんて普通しないと思ってはいたが。」


会長は苦笑しているが、その目は優人先輩を捉えている。

あのー、かいちょー、優人先輩が悪いわけでは・・。


「えっと、優人先輩と会長の関係って・・。」


恐る恐る尋ねると、衝撃的な答えが返ってきた。


「従弟だ。」


・・・・なななな、なんだってー!?


「いとこ!?」


「そう。私の母の旧姓は“清田”だ。」


はあ、良かったー。・・・・良かった!? どういう意味だ、私!?

――それは置いておこう。今はそれを考えるより話を続けることの方が重要だ!


「と、いうことは会長も霊媒師だったり・・?」


ちょっと不自然だったかな・・?


「いや、霊媒師はやって無いが、私はかなりの霊媒体質でね。よく霊障にあったりするんだ。」


お、良かった。話が繋がった。

会長は、立てかけてあった竹刀を手に取った。


「この竹刀には、御札やら水晶のかけらやらがわんさか詰め込めてある。私がいつもこれを持ち歩いているのは、霊が近寄ってこないようにするためだ。」


会長は、竹刀を眺めている。へー、会長にそんな秘密が。


「お前も、私と同じような体質だと思うが。」


「いえいえ、私、霊体験なんて全く・・いや、一度だけですよ!?」


「これからだ。私も、中学校に入ってから霊が見えるようになってきたからな。」


そうなんだ。霊がいつも見える、ってどういう感じなのかな。


会長は竹刀をまた立てかけた。


「よし、さっき私はお前に処罰は与えない、と言ったが、撤回する。」


「ええっ!?」


「お前達のクラブに、ひと仕事してもらおう。血の階段、といえば分かるか?」


迷わず首を横に振る。


「B棟の南階段の事だ。最近、あそこで生徒が頻繁に転んでいる。ひどいので言えば、階段の一番上から転がって重傷を負い、ヘリを呼んだ生徒もいた。危なっかしくて仕方がない。だが、私たちには山のように仕事があってな。」


「三年生の修学旅行、二年生の宿泊学習、一年生の社会見学。これら全ての手配を俺達生徒会がしないといけないんだよ。全く、会計が楽だと思って入ったのにさ・・。」


首を傾げていた私に、会計の小柄な男子が教えてくれた。・・最後の独り言で会長に睨まれて、今はすくみあがってるけど。


「ま、そういうことだ。・・なんとかしてもらえないか?」


・・・・これって本当に仕事だよね? まさか、生徒会長から仕事を貰えるとは思わなかったよ・・! ・・ん? いや待て、待て。これ怪奇現象関係あるのかな?


「・・引き受けないのか?」


「い、いえ! やります!」


「それなら話は決まったな。頼むぞ。」


会長は優人先輩に厳しい眼光を浴びせながら言った。震えが収まって来ていた優人先輩はまた体を酷使することとなった。


――この二人の過去が知りたい・・。

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