第七話 大西家の朝
ピピピピピピピ、カチャ。
目覚まし時計を止め、目を擦り、ぐーっと伸びをする。
優人先輩が男の子の幽霊を追い出してから、寝不足に悩む事は無くなった。
クラブ用の教室は綺麗になったし、学校のデジタル掲示板に登録もした。これで、依頼者も出来るはず・・と、思った私は甘かった。一週間経っても、依頼者は現われなかった。彩乃曰く、オカルト部があるから需要無いんじゃない、とのこと。全く、皆は全然分かって無い。オカルト部にはいない、本当の霊能者がこっちにはいるっていうのに。
ピピピピピピピ
私は乱暴に手を振り下ろし、目覚まし時計を黙らせた。
*
「お母さんおはよー。」
「おはよう、里奈。もうご飯食べる?」
「うん。」
机には、もうすでに料理が並べられていた。どかっと椅子に座る。
「おはよう、里奈。」
「おはよう。あれ、お父さん、もう仕事行くの?」
すっかり仕事着のお父さんは、慌てて革のカバンに書類を詰めている。
「ああ、さっき電話があって、今から仕事場に行かないといけないんだ。」
「また新しい物件の話なの?」
お母さんが聞く。
「だいぶ先の話なんだけど、もうこの荒神市に住む事に決めているそうだ。それも、外国人。」
「外国の方? わざわざこんな、なんの特色も無いような所に来るなんて、何か事情があるのかしら。」
お父さんはカバンの口を閉めると家を飛び出して行った。
「ごちそうさま!」
みそ汁を飲み干し、洗面所に向かう。
鏡には、ぼさぼさの黒髪をした少女が映っている。特に、鏡の中に幽霊が見えそうな気配は無い。やっぱり私は霊感ゼロか・・。
髪を梳かすと、私は制服に着替え、家を出た。
そういえば、今日は生徒総会があったっけ?