第十一話 B棟階段調査 《弐》
「どこの階段が転ぶんですか、優人先輩。」
「分からない。玲奈、何も教えてくれなかったから。」
「れれれ、玲奈!?」
彩乃と被った。私と彩乃は昔から似た所が多い。
「うん、従弟だからね。・・怖いけど。」
やっぱり怖いんだ・・。
「とにかく、階段を上がってみないと。」
「・・彩乃先に行きなよ。」
「・・里奈が行ったら。」
「私は嫌。怪我したくないし、ヘリも呼ばれたくない。」
「私だって、最新の携帯買ったばっかりなのに。」
「携帯!? それ、規則違反じゃないの!?」
彩乃はニヤッと笑う。
「教室には監視カメラが無いでしょ。皆持ってきてるよ。」
「・・一年生って、凄いんだね・・。二年生には居ないのに・・。」
そのとき、上の階から誰かが降りてくる音。階段の踊り場に出てきたその人物を見て、私たちは大きなた
め息をついた。
「やぁ、やぁ、お久しぶり。」
「ほ、星先輩・・。」
嵐だ・・ゲリラ豪雨だ・・。
「話は聞いてるよ。女帝から直々に仕事を受けたんだってね。」
階段をゆっくりと降りてくる。
「でも、この階段はオカルト部が全部調べて・・!」
星が言い終わるか言い終わらないかの所で、星の足が上に大きく振り上げられたかと思うと、星はもう片方の足を滑らせ、豪快に階段を転がり落ちた。そしてそのまま動かなくなる。
「・・大丈夫ですかー。」
反応は無い。
「ほっとこうよ、里奈。」
・・何があった、彩乃。あんなに張り切って狙っていたのに。この彩乃でさえ呆れる、星の才能は認めるべきかもしれない。
「くぅ、油断した! この悪霊め! 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・」
繰り返し繰り返し何かを言いながら階段に向かって手を合わせる星。この人は・・不死身だ。
「・・この変人はほっておきましょう、清田先輩。さっきので、この階段の噂は実証されました。」
淡々と言う彩乃。やっぱり星は嫌だよね。
「あのぅ、星君。南無阿弥陀仏の意味って知ってる・・?」
「知らないが! 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・。」
「それ、天国に行けますようにって願ってるだけで、悪霊退治には何の効果も無いよ・・。」
星の声がピタッと止まった。
「あ、あは、あははははは! 知ってたに決まってるだろ! あれだ、あれ! 悪霊退治の前段階だ!」
「・・それも意味無いよ。」
星の頬を汗が伝う。
「・・・・くそぅ、覚えてやがれ、清田、大西~!」
何で私も!?
星は逃げるようにこの場から立ち去った。
「・・まるで漫画ね。」
彩乃が吐き捨てるように言う。
「・・それをいうなら小説。」
「うるさい、私は漫画しか読んだこと無いの。」