第十話 B棟階段調査 《壱》
放課後、私と優人先輩はB棟階段を調べることにした。今回は、何故か彩乃もいる。
「ここがB棟階段かー。」
目の前の光景に感嘆の意を込めて言ってみる。
「確かに、血の階段だね。」
うん、血の階段だ。段の上に、一滴ずつ赤い物が点々と上って行っている。
「これ、実は血じゃなくてペンキなんだよ。昔、体育大会では看板とか横断幕を自分たちで作ってたんだって。そのペンキを運んでいるとき、慌ててた生徒がそれをこぼしたのに気付かず、そのまま放置された結果、こういうふうになってしまったらしいよ。今は全部コンピュータでやりますからそう言う事は無いけどね。」
さすが彩乃。
「それはどこからの情報?」
「校長先生。あの校長、ずっとここにいるからこの学校の事詳しいんだって。」
やっぱりすごい。あの校長と話す勇気、私には無いなー。
「あ、自己紹介が遅れてました! 私とした事が!」
彩乃はダダっと先輩に駆け寄った。
「私、大宮彩乃って言います!」
「あ、えっと、僕は清田優人。よ、よろしく、大宮さん。」
何をあたふたしてるの、先輩。
「はい、優人せんぱ・・」
「待ったー!」
私は彩乃を優人先輩から引き剥がす。
「優人先輩じゃなくて、清田先輩、でしょ。」
「え、でも里奈もそう言ってた・・。」
「駄目、彩乃は清田先輩って呼びなさい。」
「何で?」
「何でも。」
頬をぷぅと膨らませる彩乃。
「・・仕方ないなー。」
渋々、と言った様子で彩乃は承諾した。
よし、よし。・・・・おい! ちょっと待て、何故だ自分! 別に彩乃にそう呼ばせといてもいいじゃん! 別に、呼び名は自由だし、私が強制するような物じゃないぞ! それぐらい、別に――
「優人先輩!」
うっ、彩乃が優人先輩に、優人先輩と言っている所が浮かんできた・・先輩、とても楽しそう・・私は一人、それを眺める・・なんだか、胸がチクっとして痛い・・ん? 胸がチクっとして痛いって、なぜ?
「ひいっ!」
いきなり肩に誰かの手が触れた。
「どうしたの、大西さん。」
優人先輩・・!
「な、何でもありません! 早く調べましょ!」




