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2組に行って、黒板に文字を書く、そして1分たっても返事がなかったら3組に戻る。というルールを決めて、私は2組へ向かった。
白砂と私は校内の地図を書いて、見せあっているので学校の構造が同じことは分かりきっているが、2組に行って文字を書いても返事が帰ってくることはなかった。
2組の教室も3組とほぼ変わらないが机の並び方や太陽の影響からかの教室の明るさなどが違った。
1分経って、白砂からの返事が帰ってこないことを確認すると私は二組に書いた文字を消して3組に再び戻った。
3組の黒板には白砂であろう文字が空いているところにところせましと並んでいた。
「おーい、さくー? さく? さくさくぱんだって呼ぶぞー、おらー! さくさーん? 居ましたら返事くださーい! さくーさくさくーさくー」
一分の数えかたが白砂のほうが早かったようだ。暇をもて余している。
「掃除、しろよ」
「うわああああぁあああ、あ? 『あ』ってこの文字であってるか心配になってきた、まー、いいや」
「掃除、」
「そろそろ、黒板埋まってきたなー、消してみる?」
「掃除の一貫ならどうぞ」
「そうじの一貫じゃなくて、遊びとして消します」
それから数秒後、黒板の文字がなにもないところから粉となって消えていった。横にスライドすると文字が消えるおもちゃをなんとなく連想させた。
黒板にところせましと並んでいた文字が半分消えた頃に、文字が消えるのが止まり、かっかっと文字を書く音が響いた。
「見える?」
「うん」
「合言葉確認!」
「合言葉なんてありません」
「大正解!」
「この、文字は3組だけで見えるのかな」
「2組じゃ、見えなかったんだろ?」
「うん」
「こっちも見えなかった、たぶん」
「じゃあ見えないんじゃない」
「いや、2年生の教室とか4組とか1組とか行ってない」
「めんどくさい」
「そういわずに、4組は近いから行ってみようぜ」
「えー」
「さっきと同じルールな、じゃあ行くから。じゃあな」
それから少し待っても文字が足されることは無かったので私は
「掃除しろよ」
とだけ書き残して4組に向かった。
外を見ると少しだけ日が沈んできていて、烏が何羽か飛び交っている。珍しく、かーかーという寂しげな声は聞こえてこない。
3組の教室を出て4組の扉をあける。
4組の担任の先生は片付けが苦手であまり綺麗とは言えない、だからといって汚いともいえない、適度な汚れかたをさせる、ある意味プロ。
どうせ、見えないだろうと黒板を見ると、文字があった。その文字は夕陽に反射してよく見えないが近づいて文字を読み取る。
「朔のパンツは何色ですか??」
白砂の字でセクシュアルハラスメントまがいの質問が書いてあった。
「七色を混ぜた色です」
と書くと直ぐに返事が帰ってきた。
「お、やってみる価値はあったな。ところで七色を混ぜた色って何色?」
「バカだろ」
「それは言わないお約束!」
私は溜め息をついた。
きっと白砂は成績が悪くて学校で目立つために少しだけやんちゃをしているやつだろうな。と思った。
「(溜め息)」
「書かなくていいよ、それ」
「(嘯)」
「読めなさそうな漢字を書かないで!?」
「あー、何か落ち着かない」
「4組だからじゃない?」
「一理ある。3組に帰ろう」
私は、何か書かれようとしている文字ごと黒板消しで消して3組へ戻った。