非日常開始フラグが立ちました。
中学三年、ずっと公立校に通っていた俺は初めて受験生になった。
しかし、普段の成績が可もなく不可もない俺は、恐らく高校受験にそれほど熱を入れず、可もなく不可もない高校に進学するのだろう。
俺がそんな思いを抱きつつ通う最高学年の教室は、校舎の最上階である四階に位置している。
例に漏れず運動神経や体力まで凡人レベルの俺には、教室までの道のりが割とキツい。
そして、七十段近い階段で毎朝テンションを下げている俺は、水曜の一・二限目にある体育が憎くてしょうがない。
分かるだろうか?
中だるみと言われる水曜の朝っぱらから、むさいオッサン(体育教師)の号令の元、準備運動で校庭を三周させられる辛さ。
さっきも言ったが、俺の運動神経は良くもないが悪くもないし、体を動かすのは割と好きだ。だが、体育の授業は嫌いだ。
何故かと聞かれると困るが、とにかく嫌いなのだから仕方がない。
そんな訳で、俺は体育の授業でサッカーをしている今も、わざとボールが来ない位置を陣取り、それでも成績のためにやる気はありますよアピールをしている。
もう少しで試合終了といった所で、グラウンドに風が吹いた。
朝からの陰鬱とした気分を消し去るような、
気持ちの良い風だった。
その時、ふと見上げた空は薄い雲のかかった花曇りで。
あぁ、春だなあ……
と、授業のことを一瞬忘れ、ぼーっと空を見上げていた時だった。
『ピコーン♪ボール顔面直撃フラグが立ちました』
合成音声のような、老若男女のはっきりとしない声が聞こえたのは。
突然の出来事に驚いて固まった俺の耳に、次に届いたのはダチが俺を呼ぶ声。
ハッとして視点を空から声が聞こえた方へ移すと、俺の視界は白い物体で塞がれた。
「……え?」
呆けた声を出した直後、俺は何かの衝撃を顔面に受け倒れた。
グラグラと揺れる視界の端に白と黒のボールが映り、ぼんやりとした頭で思った。
ボール、顔面直撃……?
つまり俺が体育の授業中に余所見をしたからフラグが立ったのか。いや、ゲームじゃあるまいしフラグって。幻聴か?こんな幻聴が聞こえるようになるほどゲーマーじゃないぞ俺は。
ああ、世界が回って気持ち悪い。
『ピコーン♪非日常開始フラグが立ちました』
意識を失うその瞬間、俺はこの声を一生聞き続けるのだという予感がした……