18話 カラフルな夜
その日、ママはモエナの先生に電話しなかったわ。
モエナの言葉信じたのかどうかは分かんないけど。
パパさんは飲み会で遅くなるので、今日は四人で外食するって出かけて行っちゃった。
私とホーはいつものようにお留守番。
出かける前に、ご飯もらっておなかいっぱいだから良いけどね。
ねえねえ。
ホーがいつものようにソファに飛び乗った。
なによ。
私はその場を動かずにホーの方を見た。
パパさん言ってたやつ……ほら、よその犬が来るって話。
ホーは顎を突き出すようにしてソファの上で寝そべる。
忘れてたわ……。
そうだったわね。
明日だっけ……来るの……。
そうよ。
明日なのよね。
ホーは鼻を鳴らして、一番良いポジションを探してた。
もー本当にパパさんったら迷惑な事してくれちゃうんだから……。
モエナの話どころじゃないわよ。
オスかな、メスかな。
知らないわよ。
どっちにしてもあんまり仲良く出来そうにないわよね。
私はホーから視線を外し、顎をフローリングに付けた。
冷たくてちょっと気持ちいいの。
どうする。
カッコいいオスだったら……。
ホーは少しポジティブな思考をしてるみたいね。
興味ないわ。
パパさんが連れてくるんでしょ。
新しい女の犬とかだとさ、ややこしいじゃない。
私は自分でそう言いながら、その可能性もある事に気付く。
そうよ……。
普通、犬なんて預からないわよね……。
一体誰の犬なのかしら……。
ママはその辺考えたのかな。
もしも、もしもよ……パパさんの彼女の犬だったら、私たちはどうすればいいんだろう。
仲良くするの……。
うーん。それも複雑よね……。
もし、そうじゃなければ……仲良くしてもいいかな……。
どうせ少しの間だし。
ここのボスは私だしね。
ちょっとでも歯向かう様なら虐めてやるから。
あ、帰って来たみたい……。
ホーはそう言ってソファから飛び降りた。
ソファには乗っちゃ駄目ってママから言われてるしね。
すぐに車のライトが部屋の中に差し込んで、溝の蓋を踏む音がした。
私とホーは玄関に向かって走り、いつものように吠える。
ワカナが玄関のカギを開けてるみたい。
「ただいまー」
ってケンサクが我先に走りこんでくる。
私もホーも、何回かケンサクに足を踏まれた事があるのよね……。
痛いんだから……。
玄関で吠えながら待ってると、最後に車を運転してたママが入ってきてガキを閉める。
「さっさと、お風呂入りなさいよ」
ママは誰に言うでもなくそう言うと自分の部屋にバッグを投げ込むように放り込んだ。
「私、一番ね」
ってワカナが着替えを持って脱衣所に入ってドアを閉めた。
「えーお姉ちゃんずるい」
って言いながらモエナはダイニングの椅子に座った。
一番に入る気なんてないくせにね……。
私たちもそろそろお風呂入りたいわよね。
私がホーに言うと、
私はいいわ。
あんまり好きじゃないのよね。
そう言ってリビングへスタスタと歩いて行った。
そうだったわ。
ホーはお風呂嫌いなのよね。
モエナは冷蔵庫の引き出しを開けてアイスクリームを取り出してた。
あー。
アイスだ。
リビングに行ったはずのホーがすごい勢いでモエナの足元へやって来る。
馬鹿ね……。
アイスはくれないわよ。
私はホーの後ろで座ってその様子を見てた。
「何……欲しいの」
モエナはそう言うとアイスではなく、いつものクッキーを私とホーの前に置いた。
ほら、もらえた。
ホーは誇らしげにそのクッキーを咥えてリビングの定位置に歩いて行った。
あいつ、もしかすると頭いいのかな……。
私もクッキーを咥えて自分の定位置まで移動した。
「ねえ、ママ。ちょっとだけゲームしていい」
ケンサクは大声でそう言うとリビングのテレビをつける。
ママはまだいいとも悪いとも言ってないのに……。
最近ケンサクがやってるゲームの音、うるさいのよね……。
私、あんまり好きじゃないわ。
「お風呂入る前にやめなさいよ」
ママはそう言いながら自分の部屋から出てきて、冷蔵庫からお茶を出して飲んでた。
「はーい」
ケンサクはテレビから目を逸らさずに返事してた。
調子のいい子なんだから……。
まったく……。




