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武装召喚師――黒き矛の異世界無双――(改題)  作者: 雷星
第三部 異世界無双

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エピローグ(二十三)

 第十使徒・七天守護マリク。

 リョハンの守護神であるマリク神も、聖皇使徒に選ばれている。

 聖魔大戦に至るまでの一連の戦いにおいて、彼が果たした役割というのは大きいのだから、当然といえば当然かもしれない。連合軍の主力の一翼を為した武装召喚師軍団を擁するリョハンを護り、維持し続けたことが最終的な勝利に繋がったと考えられている。

 大戦においても、彼の働きは素晴らしいとしかいいようのないものだったはずだ。

 ネア・ガンディアの数多の神々を引き受けられたのは、皇神ならざる彼だからこそだ。

 そんな彼は、戦後、やはりリョハンに戻った。

 空中都市を失ったリョハンのひとびとは“竜の庭”での生活を余儀なくされていたが、大戦の終結後、御山会議主導の元、リョフ山への帰還を果たしている。

 半壊したリョフ山には、もちろん、空中都は存在しない。が、戦後の復興事業の一環により、半壊したリョフ山の上に新たな空中都市リョハンを作り上げたのだ。かつての空中都市とは趣の異なるそれは、山全体を存分に利用した都市であり、住みやすい都市にして、護りやすい要塞としての側面を持つという。

 リョハンは、その後、いくつかの騒動を経て、平穏を取り戻している。

 その騒動のひとつにして最大の事件が、ファリアの戦女神返上であり、彼女がセツナの元へ行ってしまったことだ。

 それは、世界連盟に於けるリョハンの立場を危うくする可能性も高い大事件であり、リョハンのために人生を捧げてきたファリアらしくない行動と思えないこともない。しかし、イルス・ヴァレを悩まし続けてきたミエンディアとの戦いが終わり、やっとの想いでセツナを取り戻したというのに、戦女神で在り続けるという選択肢は彼女にはなかったのだ。

『余生くらい、我が儘でいいでしょ?』

 そういって、彼女がどこか儚く微笑んだ理由をセツナは理解している。

 だから、セツナは彼女の暴挙ともいえる行動について言及しなかったし、責めも咎めもしなかった。

 戦女神の孫娘として生まれ、武装召喚師の親を持ち、それらの継承者として育て上げられた彼女は、これまでの人生のすべてをリョハンのために費やしてきたといっても過言ではない。そして、それこそが自分のすべてだと信じていた。

 そんなファリアが、ようやく自分のために生きようとしているのだ。

 むしろ、彼女らしい――そう、セツナは想ったし、そんなファリアが愛おしかった。

 リョハンには悪いが、ファリアが選んだ道を優先するのは、彼女を愛し、彼女の幸せを願うセツナならば当然の結論だった。

 マリク神は、きっとファリア離脱後の事後処理を手伝いながら、神としての役割に奔走したことだろうし、その点に関してだけは可哀想だと想ったりもしたが。

 もっとも、リョハンには聖皇使徒であるルウファとエリナがいるのだ。

 ファリアの問題は、ふたりがリョハンについていることで回避されたはずだ。


 第十一使徒・銀嶺聖母ラングウィン=エルム・ドラース。

 第十二使徒・蒼白狂姫ラムレシア=ユーファ・ドラース。

 三界の竜王の一柱でありながら魔王に付き、世界の敵となった果てに聖皇獅徒の称号を剥奪されたラグナと入れ替わるようにして、残る二柱の竜王が聖皇獅徒に選ばれている。

 ラングウィンの聖魔大戦に於ける最大の功績は、“竜の庭”を連合軍の一時的な拠点とし、“竜の庭”の大軍勢を連合軍にもたらしたことといわれている。

 連合軍は、その名の通り、世界中の様々な国、勢力から戦力を募った寄り合い所帯だ。その中でももっとも割合が大きいのが、“竜の庭”に属する竜、皇魔、人間であることはいうまでもないだろう。

 特にラングウィンの眷属たる竜属は、連合軍に欠かせない戦力だったはずだ。

 ラングウィン及び“竜の庭”の協力がなければ、ミエンディアとの決戦にまで持ち込めなかった可能性は極めて高い。

 戦後、ラングウィンは、東ヴァシュタリア大陸全土に“竜の庭”の領土を広げ、その庇護下に大陸中のひとびと、皇魔を収めた。

 闘争を嫌い、静寂と平穏を望むラングウィンに統治された東ヴァシュタリア大陸は、まさに楽園そのもののようだといわれており、“竜の庭”への移住希望者が世界中に存在するという。

 もっとも、ラングウィンは、元々大陸に住んでいるものならばともかく、大陸外からの移住者を快く受け入れるつもりはないようだが。


 ラムレシアもまた、三界の竜王の一柱として聖魔大戦に参戦したのだが、彼女の場合はみずから戦場に赴き、多大な戦果を挙げたことが評価されたのだろう。

 眷属を引き連れてはいたが、その数は、ラングウィンの軍勢に比べれば少なかった。

 しかし、彼女自身が戦場に立ち、数多くの強敵と見え、打倒し、あるいは引きつけることで連合軍の勝利に貢献したのだ。

 そんなラムレシアだが、彼女自身としては聖皇使徒の称号に興味ひとつ持たなかったようであり、戦後は“竜の巣”に帰り、眷属共々引きこもりがちになった。

 というのも、彼女にとって第一にして唯一無二の親友といっても過言ではないファリアが、大敵たる魔王セツナの元へといってしまったからだ。

 それは、彼女にとってこの上なく衝撃的な事件だったようであり、人間不信に陥り、荒れに荒れたという噂がヴァーシュ島にまで届いたほどだった。

 そのことを想えば、ファリアたちの手により、セツナがイルス・ヴァレへの帰還を果たすまでの一年間は、ラムレシアにとって幸福な時間だったのかもしれない。なんの用事もないのにファリアの元を訪れては、他愛のない会話を交わしたり、くだらないやりとりをしていたらしい。

 彼女が荒れ狂うのも無理のない話であり、まさに人間不信に陥り、“竜の巣”に引きこもったという話もなんら不思議ではない。

 だが、そんな彼女も、いまは表舞台に姿を現すようになった。

 というのも、拗れに拗れていたファリアとの関係が修復したからだ。

 ラムレシアが“竜の巣”で暴れ狂っているという話を彼女の眷属から聞き知ったファリアが、たったひとりで彼女の元に赴き、時間をかけて話し合い、分かり合えたのだという。

 無論、ラムレシアが理解したのはファリアのことだけだ。

 認識改竄によって史上最悪の存在と成り果てたセツナのことを認めはしないし、許しもしないだろう。

 セツナは敵だが、だからといってファリアとの関係が崩れることはない、と、ラムレシアが認識を改めたからこそ、彼女は立ち直り、“竜の巣”も平穏を取り戻した。

 そのことでラムレシアの眷属は、ファリアには頭が上がらなくなった、という話だ。

 


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